第一話 「全てはあの日から…」
この世界はどうなっているのか?
俺はそんなことばかり考えていた
普通の奴らが考えないようなことばかりずっと思ってきた
嫌、ちがう そうでないと
他の奴らが考えないようなことでも考えていないと自分が自分で無くなるような気がした
でも今思えばそれはそれで良かったのかもしれない
他人と馴れ合う事なんて必要がない
馴れ合いなんて、気持ちが悪い
そんなのする必要が在るのだろうか
どうせ世界は「自分」と「それ以外」に分かれているだけなのだから
そう思っていたんだ
いや違うそう思っておいたんだ
じゃないと何かが変わってしまう気がしたから・・・・・・・・・・
一応紹介しておこう。俺の名前は、日比谷要。今は屋上に居る。
何処にでもいる普通の高校生だ。まぁ、普通でもないけどな。
俺には見える。普通と違うのはあれが見えることだけだ。(妖っていうのか?)
小さいころから、見えていた。
だけど、幼いころはうっすらとしか見えていなかったし、向こう側も透けて見えていた。
つまり、ほっとんど、見えないような感じだ。でも最近では、輪郭もはっきりとし正直、
見ていると気持ちが悪くなって来る。
ちなみにあれは俺に何の危害も与えないし、他の奴らにも害がないように見える。
というか、他の奴らには見えていならしいし、いるとも思ってないんだろう。
だから放って置いたんだ。
あんなやつらと触れ合いたくもないからな。
なのにあの日は違った。あの日は、とても美しい満月の夜だった。
あれはいきなり、俺を襲ってきたんだ。
あの日のことは鮮明に覚えている。いや、覚えているは適切ではないな。忘れられないんだ。
あの日のことは・・・・・
俺の家には変なしきたり?みたいな物が伝わっている。
「15日の満月の日には、外に出るな。」
とそれだけで、まだ言葉が続いているらしいが俺が聞いたのはこれだけだ。
なんでも、長男だけなんだと。でも、実を言うと俺は長男じゃねぇからな。何の意味があるんだか?
と、その時は馬鹿にしていた。それが何を示すのかそのころは知らなかったんだ。知っていたとしても、
もっと重要な意味が隠されていることを知らなかったんだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
な・何なんだこいつらはいつもは何もしないくせになんで今日に限って・・・・・・今日?
今日は何の日だ?満月だ!途端にあのしきたりを教えてくれた、伯父の声が蘇った。
「15日の満月の日には、外に出るな。」
あのしきたりはこれを防ぐためのものだったのか?というか、何だこれ!
なんで俺は襲われてんだよっ!!あいつらは、俺を殺す気なのか。
漆黒色の姿は、暗闇と混じっているが満月のおかげでよく見える。
目が付いていて、ギョロリとこちらを見ている。腕の部分?を鎌のようなものに変化させ、
俺に襲い来る。取り敢えず俺は走った、後ろなんかみてる暇なんかないくらいに。ふざけるなっ。
こんなところで死んでたまるか!!でも、どうすれば?!
どさっっっっ!!!
ん?なんだ今の音は。
裏から聞こえた音に、不意に足が止まり振り返る。
「大丈夫?ここは私に任せて!何にもできないならすぐに家に帰ることね。
あなたを死なせるわけには・・・いかないっ!!」
は?誰だこいつ。どう考えても怪しい奴にしか・・・ドン!!!銃声???!!!彼女の手の中には、
拳銃があった。(拳銃についてよく知らないから、どういうものか分からなかったが)月光に妖しく光る
彼女の拳銃。二丁の拳銃を、軽々と扱い攻撃していく。
やべえ、あの日を思い出させる。ここはこいつの言うとうりにするしかねぇのかよ!!!
何処にも寄らず(寄っている暇なんてなかったが)、俺は全力で家へ帰った。
「はぁはぁはぁ・・・。」
拳銃・・・・ドクン!!!あの日のことが思い出される。あの日?あの日とはいつのことだ?
何だ、これは頭痛がする。いや、頭痛よりも酷い、頭が割れそうだ。子供・・・・??が泣いている?
何処か遠くの方で泣き声が聞こえる。はぁはぁ、何なんだこ・・ぁ・・れは俺はこんなの知らない。
じゃぁ、この流れ込んでくる映像は何なんだ?はぁはぁ、俺はこれを知っているのか。い・・・
や・・・・だ・・・。知りたくない。・・・思い出したくない!!
今日の出来事とは一切忘れるんだ、
思い出さないためにも・・・・・・ぜっ・・・たい・・・・に。
ドサッ!!!
その後、玄関で倒れ俺は深い眠りについた。(らしい。俺もどうなったんだかわからん)
起きたのは次の日の昼近くだった。
俺に何が起こったのか分からない。だからあいつがどうなったかは知らない。
あの日以来俺は満月の日は出歩かなくなった。
まぁこんな御伽噺みたいなの誰も信じる奴はいなかったけどな。
お前もどうせ信じないだろ?
そんなとき、裏から声がした。
「あなたでしょう?あれが見える神に魅入られている存在って。」
「誰だよ、お前。俺に何の用だ。」
話しかけてきたのは黒く腰まではないがそこそこ長い髪で顔立ちが良い。
耳の辺りの髪をサラリと梳く。
一言で言うなら綺麗な子だ。俺の知り合いにこんなやつがいたか?
いや、いない。俺に女の知り合いは親戚しかいない。というか、考えることはそっちじゃねぇ。
こいつはなにを言っているんだ?神に魅入られている存在?何のことだ。
「あなたの言いたいことは解っているわ。初めまして。いやあなたに此れは失礼ね。
久しぶりね。日比谷要さん。彼方は神に魅入られている人間と見捨てられている人間が存在する。
そのことについてどう思う?」
こいつ何いきなり訳解んねぇ話をしてんだ?神なんているわけね・・・・ぇ・・・・・
「あなたはこの世界がどうなっているのか知りたいんでしょう?」
何でそのことを誰にも話してないはず。
「何で知ってるかなんていってみれば解るわ。」
トン。額を微かにそいつの指が触れた。
その瞬間眩いばかりの光が俺を包み込み次に目を開けた時には
漆黒の闇の中にいた。そして其処に居たのは・・・・
「まぁ、久しぶりの来客者だわ。あなたは何をしに来たのかしら?」
これも髪が長く綺麗な人だ。背は小学校低学年ぐらいだが口調が年上を思わせる感じだ。
闇の中に居るのになんで分かるって?空に、満月が浮かんでいるからだ。
先ほどの屋上までとはいかないが暗闇にしては、明るい。少女が口を開く。
「あぁ、あなたは選ばれた人間なのね。どうして此処に来たの?」
その時、少女の顔がとても近づいた。俺は驚きのあまり唾を飲んだ。
「ど・どうしてといわれても何も変な女が此処に連れてきたんだ。」
「変な女?失礼しちゃう。私にはちゃんとした名前があるわ。槙本紗希よ。覚えはない?」
裏からの声、それは、屋上で話しかけてきた女と同じ声だった。その声に振り返る。
「え・・・榎・・・本沙希?」
彼女の存在を確認した後、もう一度も前を向く。先ほどと違い、少し遠ざかっている。
「さて、もう一回聞くわ。何をしに来たの。」
「だ・だからさっき」
いつから持っていたかは知らないが、少女の手の中にナイフが握られていた。
顔を目掛けて投げてきた、ナイフを必死の思いでよける。
ドスッ!!
「そんな返答はいらない。普通の人はここへ入れない!!たとえ彼女の力を借りたとしても、
此処に入れるのはこの場所ここに用が有るものだけよ。」
ナイフが頬をかすめ裏に刺さった。つうっと頬から一筋の血が流れた。裏に壁なんてあったか?
こ・・殺される。此処にいたら殺される。恐怖で、足がすくみ上手く立てない。
身体全体がガチガチと震える。
「で、何なの?」
少女の手にまたナイフが握られる。
「あなたが知りたいことは何?」
榎本沙希が言った。そのことで、違和感を覚えた。なんで、ナイフが刺さるんだ?
後ろに、「榎本沙希」がいたはずだ。俺の後ろに壁はなかった。
じゃぁ、なんでこのナイフは刺さってんだ?
ナイフがある方を横目で確認する。するといきなり、ナイフが落ちた。
カラン!!!
重力に従い、ナイフが下に落ちる。
「は?どうなってんだ!!」
「別にどうもなってないわよ。この空間は彼女のものだから、どんなことでも彼女の思い道理よ?」
「は?」
「何処に壁を作ろうが、ナイフも簡単に実現できる。そういう世界なの。」
少女の方を見る。すると、手の中から一瞬にしてナイフが消えた。
「ね?」
「そんな奴に説明する必要はないわ。」
再び、俺の近くに寄ってきて座っている俺の顔の上に手をかざす。
「あなた、失っている記憶があるみたいね。」
パチン。少女が指を鳴らした。
「思い出させてあげるわ。」
ズキン!!!あの日と同じ頭痛だ。どこかで声がする・・・・・・・・・。
遠い昔に忘れたはずの記憶が・・・・・
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
パタッ。
ここはどこだっけ?そうか、今日は家族がなくなった日だっけ??
家族がなくなった?い・・・なくなった日?何なんだ?この記憶は・・・・。
俺は思い出したくないのに・・・・
何を?俺が持っているこの記憶は何だ?一面が赤色だ。天井までもが・・・・・・・幼いころ・・・・
何かがあった気がする・・・・とても大切な記憶・・・・・・何かが心から無くなっている・・・・・
大切な何かが・・・・・・・・・
「まだ、思い出さないの???」
榎本沙希という女の声で目が覚める。腰に手を当て、はぁと溜息をつかれる。俺が溜息をつきたい。
そこはもう一人の少女の姿はなく元の屋上だった。
「俺は今までなにを?」
頭が痛い。あの夜と同じだ。吐き気がする。何か大切なことを思い出しかけたような気がする。
でも、その考えもすぐに彼女の声でかき消される。
「あぁ、あなたに思い出してもらうのが一番手っ取り早いのに・・・」
ハァ。彼女が深いもう一度ため息をつく。
「思い出すって何のことだよ?」
まだ、頭が痛い。思い出す?俺に忘れている記憶はない。
断言できる・・・・・はずなのに・・・・・・。
なにか、心に引っかかるものがある。なぜか、記憶が人為的に造られたような気がする。
今日は色々なことがあった。だからかもしれないこんな気がするのは・・・・・・・・。
もう、俺は人に関わらないと決めたんだ。あの時に・・・・・・・・・・・。
あの時に?
いつだよ、あの時って。無理・・・・・・だ・・・・・・。これ以上は・・・・・・。
考えれば、考えるほど頭痛がひどくなるような気がする。
「まぁ、いいわ。あなたはいつか思い出す。自分の存在理由。そして・・・・・・・・」
「は?」
訳が分からない。
「俺、帰る。」
「あっ、まだ大丈夫よね。」
彼女のそう言った。
「まだ、満月まで時間があるわ。それまでにはきっと思い出す、いいえ思い出さなくてはならなくなる。
思い出すわ、絶対に。どっちにしろどう転んでもあなたは××と戦うことになる。
それが早いか遅いかということだけよ。きっとね。だったら、早く終わらせたくならない?」
ほんとに訳が分からない。頭ががんがんする。彼女の言っていることが半分も理解ができない。
「神に魅入られているか見放されているかそんなものは関係がない。神はすべての人間に平等だわ そう人間にはね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺はその言葉を聞きふらつきながら家に帰ろうとしたが、ある違和感を覚えた。空が青い。
そのことは普通なのだがそこまでではないがあの暗い空間にいたのは結構長い時間だった気がする。
日が落ちるとはいかなくても学校が終わるくらいはかかっていたと思う。だが、太陽は真上にあり、
あの空間に行く前と同じように屋上ではたくさんの人が騒いでいる。いまは、何時なんだ?
そんな素朴な疑問が頭に浮かんだ。行く前とほとんど変わっていな景色。ここは何処なのだ。
俺がいた世界なのか?俺が・・・・もと・・いた世界なのか?
なんなんだ今日はあの暗闇では殺されそうになるし、帰ってきた世界は時間が変わっていない。
本当になんなのか。
「わかったかしら?この世界が何なのか。あなたは世界のために戦ってもらうわ。」
は?こいつは何を言っているんだ?世界の為に?
「すみません、ご遠慮さしてもらいます。」
「なんでよ。あなたしか救えないのよ?第1の鍵、日比谷要 さん?」
「そういう第1の鍵とか訳分かんないのしんねぇし、夢の戯言は夢を見てからいいな。」
そうだ。こいつに付き合う理由さえない。俺は腰を上げ、教室に帰ろうとした。
「待ってよ。あなたがいないと始まらないのよ。」
彼女に腕を掴まれ、進むことを拒まれる。
「別に始まんなくても良いし。興味ねぇよそんなもん。世界が終わるんなら終われ!」
掴んでくる腕を振り払い、そう言い捨ててから、教室への道を急いだ。
「あなたがいないと始まらないわ。このゲームは。もう、メンバーは揃っているのに。」
クスリと笑う。彼女の裏に数人の影。
俺はまだ知らない。俺の身の周りに起こっていることを・・・。