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1,心の叫び

この小説は、作者の実験により、情況描写を『少しぼかして描いています』 読んだ文字を、『想像しながら』、お読みになられますとお楽しみ頂けます。  例、目の前に高いビルがある←これが次の様になります。→このビル、頂上付近を見ようと思ったら首が少し痛くなるな。    

 「怖い」

「このままじゃ、いけないのは自分が一番分かっている。だけど、怖いんだよ」

「どうやったら、抜け出せるんだ? やっぱり、病院しかないのか?」 

 一年中、部屋に篭りぱっなしの生活はもう嫌だ。あれから二年…… 人と接するのが本当にダメになった。

 貯金がある頃はまだ良かった。飯は出前で、普通のリズムがある生活をしてたし、何より、症状はここまで酷く無かったハズだ。

 それが今では、親に迷惑をかけっぱなしの、親不孝者になっちまった。

 友達は少なくなり…… いや! 今はいないと思ったほうが良いかもな。電話をかければ確認出来るが、今の俺には、そんな勇気はないし。

 身内は、母さんを除いて『働け』の一点張り。

 向こうの言い分は確かに正しいよ。そんな事は、言われなくても自分が一番理解している。だけど、外に出るのが怖い人間にそんな事が出来る訳ないだろ。

 俺が何か言えば、「お前が育て方を間違ったんだ!」とか「お前が甘やかすから悪い!」って、母さんが責められる。

 違うんだよ、親父。母さんは何も悪くない。むしろ、凄く頑張ってくれてるんだよ。

 表には出さないけど、母さんには感謝してる。

 いつかは、楽にさせてやりたいって、本当に思う。

 だけど、俺…… どうしたら良いんだ?

 んっ? 誰かが上がってくる。この時間なら母さんか?

「健? 起きてるの? 入るわよ?」

 やっぱり母さんか。

「おはよう母さん」

「おはよう。健? 今日は何時から起きてるの?」

 今日の母さんは、少し疲れてるのかな? いつもの小奇麗なエプロン姿をしてるけど、化粧では隠し切れてない疲れが見える。

「今日は四時に起きたよ」

「四時? またずいぶんと早起きね? 何かあったの?」

「何もないよ。生活のリズムがぐちゃぐちゃなだけ」

「リズムだけはしっかりとしないとダメよ?」

「分かってる。心配してくれてありがとう。これから、親父を起こすの?」

「そうよ。ねえ、話があるから、お父さんが仕事に行った後、下に下りてきてくれる?」

 話? とうとう母さんも、俺に我慢しきれなくなったか? どうする?

「怯えなくても大丈夫よ? お母さんはいつでもあなたの味方だからね」

 また母さんに気を遣わせてしまった。ゴメンよ。

「分かった。父さんが行って、少ししたら下りる」

「ありがとう。健? あなた、ご飯はちゃんと食べたの?」

「母さん達が寝てる間にバナナを一本」

「それじゃあ、お腹空いてるでしょ?」

 母さん。

「大丈夫だよ」

「お父さんが行った後、何か作ってあげるわ。じゃあ、後でね」

 ロクでもない自分が、嫌になる。

「いつもありがとな。母さん」

 やっぱり、病院に行くべきなのかな。だけど…… 薬付けや、人間失格のレッテルを貼られそうなイメージがあるから、凄く怖い。

 冷静に考えれば、今のこの状態も十分に怖いんだけどな。

 それでも、先生に直接言われるよりかは、安心するというかなんと言うか。そんな事を考えているから『ダメ人間』呼ばわりされるのかな。

『他の皆』も、俺と似た様な事を考えてたりするのかな。

 んっ?下が騒がしくなってきたな。親父の奴、起きたか?

「何か言ってるな」

「なあ、健…… 奴、どうし…… る?」

 聞き取りずらいな。やっぱり、ドアを少し空けに行こう」

「今日も元気にしてましたよ」

「……あのバカ、若いのにぐうたらしやがって!」

「あの子も苦しんでいるんですよ」

「苦しいとかじゃなく、男なら、働くのが当たり前だろうに」

「誰だって休む期間くらい……」

 親父の奴、朝っぱらからいつもの台詞か…… 聞かなくても分かるからもういいや。

 俺が会社をやめてから、親父の奴、ずっと同じ事を言っていたな。

「お前も男だろ? 男なら働くのが当たり前だ! 周りを見てみろ!」

 じゃあ女なら良いのか? って考えてみたが、根本的に話が違う。親父の奴、何の為に働いてるんだろ? 家族の為? じゃあ、もし、家族がいなければ? 自分のため?

 働くって、一日の大半の時間を使う物なのに、嫌な仕事が一生続く訳がない。

 勿論、生きていくのにお金は必要だ。それは分かっている。だけど、生きていく為に仕事でストレスを抱えて、体を壊した俺は考えてしまう。

 毎日、安い給料で長時間の激務をこなし、上司や客と言った、周りとの人間関係で胃が痛くなり、それが悪化して一日中吐き気と闘う日々。

 俺はここでギブアップしたけど、この生活が続いたら、胃ガンとかになるんだろうか?

 働くって、このストレスと一生闘い続ける事なのか? だとしたら皆凄いな。

 今の俺には、とてもじゃないが無理だ。

 この二年間、働く意味をずっと探してきたけど、未だに答えは見つからない。

 分かっているのは、漠然とした答えである、『働かないと生きていけない』って事だけだ。

 それだけ分かっていれば十分なのか? 親父や周りに『働く意味』を聞いても、いつも同じ答えが返ってくるだけ。

 生きていく為に必要なのは仕事。そこからくる、ストレスに耐えられない人間は、やはり、ダメ人間なのか?

 勉強や、仕事が出来ないって言われるのはまだ良いが、人格を否定されるのはつらい。しかも、ほとんどが、上から目線で言ってくる。

 自分の精神が不安定な時には、言って来る奴に対して、『こいつ、単に優越感に浸りたいだけ?』と、思う時もあった。振り返れば酷い話だ。元々は、自分の事を心配して言ってくれてるのにな。

 今の俺は、他人からみたらどう見えるんだろう? 甘ちゃん? それともおかしい奴? 考えれば考えるほど気が滅入ってくる。今日はもうやめよ。 

 そう言えば、下が静かになったな。親父の奴、出かけたんだろうか?

「確認してみるか」

 深夜ならともかく、昼間は部屋から出るのが嫌になる。酷いときは、このドアノブを触るのも、ためらうくらいに。

「静かだな。降りてみよう」

 階段を降りるのも緊張する時がたまにある。トイレに行くのも憂鬱になるから困ったもんだ。

 玄関は…… 誰もいない。やはり仕事に行ったみたいだな。リビングに行こう…… 

 この扉の前には母さんしかいないはず、大丈夫だ。

「母さん?」

 心配するだけ無駄だったな。

「あら? 降りてきたの? 思ってたより早いわね。ゴメンね。ご飯、まだ作ってないのよ」

「ご飯は気にしないで。それよりも……」

「やっぱり、聞こえてた? お父さん、言い出したら止まらない人だから。ゴメンね」

 そんな顔をしながら言わないでくれよ。見てるこっちが辛くなる。ありがとう。母さん。

「母さんが気にすることじゃないから大丈夫。悪いね」

「良いのよ。あの人は、心の痛みに鈍感な人だから」

 鈍感か。親父の言う事は正論に違いないが、母さんの言う事も一理あるな。

「今からご飯作るから、少し待ってなさい」

「いや、良いよ。それより、母さんの話って何かな?」

 正直、少し怖いな。一体何の話だろ?

「健? あなた、最後に外出したのはいつ?」

「いつだったか…… 覚えてないよ」

 嘘をついてごめん。

「良かったら、お母さんと外に行かない?」

 えっ!今、何て言った?

「大丈夫。あなたが拒んでいる病院には行かないわ。ただ、ほんの少しの間、散歩するだけよ」

「俺が……母さんと?」

「そう。ずっと家にいても体に悪いし、どう?」

「いや、俺は良いよ。夜ならまだしも、日中は出たくない」

「夜なら大丈夫なの?」

 しまった! どうする?

「多分…… 大丈夫…… かな?」

「分かった。それじゃあ、今日の夜に出かけましょう」

 今日の母さんは変だ! 何かあったのか?

「母さん? 一体、何を考えてるの?」

「社会復帰するにしても、外に出れないとダメでしょ? それなら、先ずは外に出ることから始めないとね」

 なるほど。母さんのアイデアか。だけど……

「怖がらなくても大丈夫よ。あなたは以前、毎日外に出てたんだから」

 いつも思うけど、母さんは、俺の考えてる事がなんで分かるんだ? 俺ってそんなに単純なのか? 「そうねー。今日は近くの公園に行きましょ。公園ならあなたも大丈夫でしょ?」

「分かった。親父にはなんて言うの?」

「あの人にあなたを任せてたら、どうなるのか分からないからね、お母さんから言っておくわ」

「OK。なんとか頑張ってみるよ」

「余り深く考えちゃダメよ? 公園というより、トイレに行く感覚でいなさい」

 トイレか。中々、難しい問題だ。一度戻ってゆっくりと考えよう。

「分かった。なら、それまでは部屋にいるよ。じゃあ、後で」

「後でご飯を持っていくから、ちゃんと食べるのよー?」

 やたらと自分の足音がうるさく聞こえる。しかも、心臓の音まで聞こえるのは何でだ。落ち着かない、早く部屋に…… 見えてきた。

 アレ? ドアを開けたら風が少し吹いてきた。おかしいな。窓は勿論、カーテンまで閉めてあるのに。まあいい。ようやく自分のスペースに帰ってこれた。 先ずは落ち着こう。 

「どうする? 難題だ」

 最後に外に出てから、一年以上経つな。 外がどうなっているかも分からないし。俺に分かるのは、世間のニュース位だ。近所の事なんかまるで分からない。やっぱり、やめるか? だけど、行かなかったら何も変わらないよな?

「たった少しで良いんだ、勇気を出せ。前に出来ていたって、母さんも言ってたろ?」

 この一歩が、中々踏み出せない。踏み出したら何かが変わる気がしてるのに…… 

 なんでこうなっちまったんだ。我ながら泣けてくる。情けない。

「……アレ?なんで俺、泣いてんだ?」

 おかしい。どんどん出てくる。止まらない。マズイ…… ベッドへ行かなきゃ……

 こんな姿…… 誰にも見せたくない。


  

実験段階なので、少し分かりにくいところがあるかも知れません。 各話の続きは、最新話の投稿から、一週間~二週間ペースでUPしていく予定です。(作者の都合上、遅れる事もあるかもしれませんがその時はお許しください) 誤字脱字、ご意見、ご感想等がありましたら、よろしくお願いします。


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