表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

1杯の走馬灯

作者: ひがし
掲載日:2025/09/01

さらさらと結晶の粒がカップに落ちていく。

さながら、紅茶に砂糖を注ぐようであり。

さながら、砂時計が時を重ねるようでもあった。


老人はこれが何かを理解していた。




この記憶は、かの母に抱きあげられたところから始まる。

汗ばむ胸に力の抜けた腕。

ミルクの香りがした。


粒が落ちる。幼少期。

妹ができた。

手繋ぎ、世界の歩み方を教えてあげた。

妹に妹もできた。


少年期。

先生に指示され、隣の席の男の子の似顔絵を描いた。

子供とも大人とも取れぬ彼の相貌から目が離せなかった。


青年期。

慣れない部屋。

下腹部から伝わる鋭い痛み。

目の前には最愛の人がいた。


成年期。

アクセサリーが2つ増えた。

1つは常に身に飾ることとした。

いつまでもこの重みを感じていたいと思った。


壮年期。

出産から1年後。

初めて聞く音を聞いた。

小さな足から発せられたものだった。


中年期。

子が一人の客人を連れてきた。

彼らの指にはお揃いの装飾品があった。

幸福を願った。


老年期。

白い天井。

隣には彼がいた。

最後の記憶は彼の手の感触だった。




老人はカップに手を伸ばし、そして、それをこくりと飲み干した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ