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2020年、すべてが終わり、希望を失ったわたしのピリオド。

作者: まつり

 わたしは2020年にすべてを失った。


 すべてが遮断され、閉じ、淀み、コップ一杯に張り詰めた水は、

たやすく溢れて、正解からわたしを下ろすに十分なショックを与えた。


 それまで積み上げてきた信頼も、実績も、何もかも。


 すべてを失って最後に残ったのは学歴だった。

なんの役にも立たない、あれほど焦がれた学歴しかない。


 人が孤独の底に落ちたとき、本当に人を救ってくれるのは、誰かとのつながりだ。


 それは決して多くなくていい。

希薄で想像力の欠けた縁なら切ってしまって構わない。


 数の論理が働くのはあくまで物質的な豊かさであり、

万人の心に備わっている目には見えない精神的豊かさには、

また別の論理が働くのだから。


 わたしに本当に必要だったのは、たった一人の理解者だった。


 けれども誰かに依存できなかったからこそ、

閉め切ったカーテンの内側で、真っ暗闇の奈落において、


 ただひたすらに後悔が少しでも薄れるよう自慰行為を通じて

痛みを快楽という根源的な渦潮に希釈するほかなかった。


 これはほとんどの場合、精神科の先生も自分を育てた親も

友達も恋人も教えてはくれないことだ。


 ゆえに孤独という痛みを抱えて、なんとかいまだに生き長らえているのだと思う。


 そう、わたしは思いたい。


 わたしがわたしという自我を誰かに譲り渡してしまえば、

きっともう、わたしという意識は消えてなくなってしまうのだろうから。


 そしてわたしは、男であったわたしの自我を切り捨てることで、

殊に創作という誰にも侵せない内面世界においては、

限定的に、女という自意識を確立させることに成功した。


 同時に。


 かつて誰かを『すき』になれた頃の感情は、とうの昔に消え去り、

どこか五感では感知しえない幻想上の海砂にすっぽり埋もれてしまった。

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