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剣の墓標  作者: えっちぴーMAX
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隊の徽章

 グレイウルフの討伐から徐々にルカナンの街ではプラナタリア隊の知名度が上がって来ており、ライバルのジャックもゴブリン討伐やファルコン討伐などでその名声を高めていた。

「隊の徽章"きしょう”?」

「俺たちの他、武官の隊はそれぞれカッコイイ徽章を持っているだろ?」

エドとジャックは夕食後の暇な時間はよく錬成館の食堂で話をしていた。今日はジャックから重要な話があると聞かされていたエドは、緊張した面持ちで姿勢を正していたが、ジャックの話題が深刻な内容ではないと判断すると安心して椅子の背もたれに体を預けた。

「実はレイさんには既に許可を取っているんだ。後は何をモチーフにするかだな。」

「そう言う、ジャックは何にするか決めているの?」

「ああ、俺はファルコンにする。」

「どうしてさ?」

「最初に討伐したのがファルコンだからさ。」

「いや、ちょっと待って、確かゴブリンじゃなかったの?」

「それは些細な問題さ、気にするな! ゴブリンはノーカンということで、よろしく!」

「なあ、そんなに最初の討伐にこだわらなくてもいいじゃんか。」

「じゃあエドはどうするんだ?」

「それは…。」


 ジャックと徽章の話をして数日後、錬成館の食堂にはプラナタリア隊が集まって朝のミーティングを行っていた。

「今日はプラナタリア隊の徽章を皆に配ります。」

「おおっ、うちの隊もやっと徽章が配られるようになったのか。」

ロドは感慨深く頷くと、ハーブティーをずずずと啜った。

「ロドさん、徽章ってそんなに重要なんですか?」

ロレンスが食べかけのパンを手でちぎりながら聞いた。

「おうさ、徽章があるってことはやっと正式な隊って認められたってことだろう。」

「そうさ、これも皆の活躍のお陰だよ。」

一人ずつ、徽章を手渡す。はじめに渡したエッジがすぐに意匠に気付いた。

「これって、グレイウルフだよね?」

「そうさ、グレイウルフをモチーフにしたんだよ。」

「理由は?」

「もちろん、我が隊の最初に討伐したモンスターだからさ」

徽章を誇らしげに自慢するエドを見ながら、皆目を丸くするのであった。


クレイスト騎士爵家、邸宅にて

「久しぶりだなジャック、エド。」

「ご無沙汰しております。ダン様。」

「順調にモンスターを討伐してくれているみたいだな。町民からの感謝の声が耳に入っているよ。」

「恐れ入ります。ダン様におかれましては、徽章を認めていただき、ありがとうございます。」

「うむ、今後も街のために励んでもらいたい。さて、今日の本題だが、皆のお陰で街は無事収穫を迎えており、収穫祭の準備も進めているところだ。しかしな、収穫後を狙ってキャラバンを襲う盗賊の被害が毎年数件発生していてな、今年もまあ、間違いなく被害が予想されるのだが、町民からは新設されたロッククロス、プラナタリア隊が盗賊の被害を抑えてくれると期待している。つまり、そなたらには警らの強化を命じたい。」

「はっ、承知しました。」

「かと言っても、収穫祭前ということでどの隊も忙しい。新たに人員を増員することもできぬ。まあ、聞き取りや警らの時間を増やして貰いたい。そなたらに求めるのは、盗賊の討伐ではなく被害の抑止である。あまり気負うなよ。」


 収穫期はとにかく忙しい、約半年の間、種まきを終えた後、収穫までほったらかしにされた大麦畑は周囲に山も森も少ないクレイスト地方において、大麦によって隠れることができ、さらに野ネズミや蛙等の小動物が繫殖する良好な餌場にもなっており、モンスターにとっては好条件の住処となる。収穫中に遭遇したモンスターに襲われる農夫は後を絶たない。

 ゴブリンやビックスネーク、ワイルドボア等、毎日数件の討伐を行っており、プラナタリア隊の稼働率はブラック企業並であった。


 秋から冬に移ろう季節、気温はさらに下回り、夜には炭を燃やして暖をとる回数も増えてきた。この澄んだ大気の下、たまに見える遠くのウルリカ山脈には薄っすらと雪が積もっていた。雲が高いそんな空に狼煙"のろし"が昇っていく。一つ、二つ、三つ、これは今日も大盛況だな。エドは達観した目で澄んだ空を眺めていた。

「隊長、何頬けているんですか!」

「いや、別にそんなんじゃ…。」

「しっかりしてくださいよ。見てください、狼煙3本ですよ、隊を二つに分けますか?」

「あー、ロド任せるわ。」

「了解しました。エッジ、リック先行するぞ。」

ロドは馬の手綱を引くと両足で馬の腹を叩き、速度を増して走っていく。

乾燥した街道の道は砂埃が舞っていた。

最近、やけに頼もしくなった副長"ロド"の背中を見ながら、エドも気合いを入れ直すのであった。

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