表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ・九章完結】鏡花の桜 〜花の詩〜  作者: 京崎 真琴
第五章~黒百合~
168/324

動き出すもの

 夕暮れ時、二人の男が茶屋にいた。

 二人は、茶屋の主人が店の奥に行ったのを確認すると、静かに口を開いた。


「橘様、死んだってな」

 額に傷がある男が前を向いたまま言った。

「言っとくけど、俺はちゃんと逃げろって言ったからな。余計なことまでして……自業自得だ」

 傷のある男は呆れたようにため息をついた。


「本当にね……。まったく余計なことをしてくれたよ」

 もうひとりの男は軽く笑うと、もうすっかり冷めている茶を手にとった。


「どうするんだ、これから……。あいつ本気で殺しに来るぞ。そうなったら困るから、監視だけつけて放っておいたのに……」

 傷のある男は額の古傷を掻いた。


「そうだね……。それに、よりによって咲耶太夫も巻き込んでくれたし、これはかなりマズいよね……。いろいろと動いてほしくない人たちが動き出しちゃうよ……」

 もうひとりの男は冷めたお茶に口をつける。


「町奉行に豪商に切れ者の楼主、それからもっと厄介なところまで……。想像するだけでゾッとする」

 傷のある男は吐き捨てるように言った。


「まぁ、しばらくは大人しくするのがいいだろうね……」

「それしかないだろうな」

 傷のある男はため息をついた。

「あ、そうだ。弥吉はどうする? まぁ、最初からバレてたみたいだけど」


 もうひとりの男は薄く笑う。

「バレたとしても、あいつならそばに置くだろうって計算して送り込んだんだろう? あれぐらいの年の子で、しかも自分と同じような境遇に見えたら、放っておけないって簡単に想像できるからね」


「まぁな。でも、弥吉の方が(ほだ)されるのは計算外といえば計算外だ」

「そう? 俺は想像の範囲内だけど」

 もうひとりの男はクスッと笑う。

「おまえは相変わらず鼻につくな」

 傷のある男は眉をひそめる。

「まぁまぁ、そう言わず仲良くやろうよ」

 もうひとりの男は傷のある男の方を向くと、にっこりと微笑んだ。


 傷のある男は腕組みをすると、長く息を吐いた。

「まぁ、何はともあれ、弥吉に関しては今後の動きしだいだな」

「そうだね」


 傷のある男はゆっくりと立ち上がると、暗くなり始めている空を見た。

「あ~あ、いずれにしろ面倒くさいことになりそうだな……」

「そうだね……」


 傷のある男はしばらく無言で立っていたが、少しすると片手を上げて茶屋を後にした。


「吉原のお姫様か……。これ以上面倒くさいことは遠慮したいね」

 ひとり残された男は、そう呟くと静かに冷めたお茶を飲みほした。

~黒百合~ 花言葉『呪い』『恋』


ここまでで五章は完結となります!

読んでいただき、誠にありがとうございます!!(T ^ T)

六章がまたすぐに始まりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ