屑の価値
「あっ商人だ! おーい! みんな! 商人が来たぞ!」
薄汚いボロ屋の集まる一角。
汚れた服を着た子供たちが集まってくる。
「物資を買い取りに来た。集まったか?」
「へへっ! ちゃんと集めたよ。ほら!」
リーダーの少年が指し示す先には空き缶や金属の欠片などが山と積まれている。
それを見た少女は怪訝そうな表情を浮かべる。
「物資って……ゴミじゃないの?」
「ゴミじゃないぞ! ちゃんと言われたものを集めたんだ! 木でも鉄でもなんでもいいって!」
少年は少女を非難するように口をとがらせる。
商人は屑鉄と廃材の山を確認する。
「ああ、これでいい。いつもの額で買い取る。この量だと、魔石で四十だ」
「えっ!? この鉄屑が……四十!?」
「えへへっ! 毎度! それでパン四つ買うよ!」
「ああ。これがパンだ」
子供は商人の差し出したパンを掴むと、仲間の子供たちに分け与える。
「ありがと! じゃあなー! 商人の兄ちゃん!」
「ああ、また来るから物資を集めておけ」
「うん! まかせといて!」
少年たちはパンを食べながら笑いあう。
「やったー! パンだー!」
「頑張って集めてよかったねー!」
「そうだな! またがんばろうぜ!!」
その場を後にしてしばらくのちに少女が口を開く。
「あの子供たちは……孤児?」
「そうだ。親はいない。こんな世界だからな。自分で食い扶持を稼ぐしかない」
「あんなゴミ買い取って……慈善事業のつもりなの?」
少女は少し厳しい目つきで言う。
商人は表情を変えない。
「いや? 鉄も木も資源だ。使い道はある」
「ふうん? これも公平な取引ってワケ?」
「そうだ。彼らは取引相手だ」
少女も孤児だ。親はもういない。
一人で生きていくことの難しさは知っている。
憐れみをかけられるくやしさも知っている。
「対等なのね」
「そうだ。取引の基本だ」
商人は相手を選ばない。
大人でも子供でも。男でも女でも関係はない。
地位も身分も、所持金の大小も関係ない。
ただ平等に取引をする。
商人にとっては、当たり前のことだった。