パンの仕入れ
「これが依頼の小麦粉だ」
「ああ、今回もたくさんありがとうね」
適正価格で小麦粉と魔石が交換される。
「パンはできているか? いつもの値段で買い取ろう」
「できてるよ。まいどあり!」
大量に焼きあがっているパンを受け取る。
商人は収納にしまいこむ。
「そっちの子は?」
「こいつは俺の護衛だ。しばらく俺について回ることになる」
「よろしくね、おばちゃん!」
「おねえさん、だよ! 口の利き方を知らないね。はあ、そうかい。アンタが人とねえ。もっと一人を好むのかと思っていたよ」
「気まぐれだ」
「ま、そういうことにしておくよ。じゃあまたね」
パン屋を後にする。
荒廃した世界でも、ほそぼそと営業を続ける店はある。
堂々と表通りで店を構えているとは限らないが。
「商品はさっきのおばさんから仕入れているのね」
「ああ」
「ずいぶん支払額が安いんじゃないの? パンは魔石十個が適正じゃなかった?」
少女がとがめるような顔で商人に指を突き付ける。
商人は表情を変えずに答える。
「適正価格だ。仕入れと売値は違うと言ったろう。俺は安く小麦粉を提供する。彼女はパンを安く提供する。つり合いは取れている」
「ふうん。公平なのね」
「ああ、そうだ」
パンも、原料も、魔石も価値は絶対ではない。
時と場所によって違う。
商人はそれを適正価格で売るだけだ。
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