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【一章完】契約は絶対です! ~トレーダーは譲らない~ 世界が崩壊したので物資を集めて契約チートスキルで商人プレイします!  作者: 3104


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三すくみ

「ここを見つけたのは俺達が先だ!」

「順番なんて関係ない! 邪魔をするなら、痛い目を見るぜ!」


 ふたつの集団が、雑居ビルの前で揉めている。

 お互いが武器を抜いて、一触即発の状態だ。



 その間に、商人は割って入っていく。

 表情を変えず、双方に声をかける。


「まあ、待て。争ってケガでもしたらつまらないぞ」

「そうよ! 武器を収めて!」


 少女は剣の柄に手を掛けてはいるが、抜いてはいない。


「なんだお前らは!」

「どっから現れやがった!」


「俺は商人だ。この場所での探索が平等になるように取り計らおう。そのあと不要な品物があれば、俺が買い取らせてもらう」


 最初にこの場所を見つけたというグループは二人組だ。

 二組目は三人組だ。


 どちらも、殺しあってまでこの場所を探索したいとは考えていない。

 無傷で相手側を倒すことは難しい。


 ましてや、三組目……商人たちが現れた。

 先に動くのは不利となる。


 争っていた二組が、それぞれの仲間と目配せをする。

 どちらともなく、武器を収める。


「……都合のいいことを言っているが、平等だと?」

「たしかに……争ってもしかたがない」


 武器を収めた両者だが、まだ緊張を解いてはいない。

 すぐに抜けるように武器に手をかけたままだ。


 商人は表情を変えずに言う。


「さて、提案だ。共同での探索というのはどうだ? 我々三組が、共同で探索する。そのあと、それぞれの戦利品を三等分する」


 先に到着したという二人組の代表者が言う。


「三組……!?」


 あとから来たという三人組の代表者が言う。


「お前らも割って入るつもりか!? ふざけてんのか?」


 商人はビルを指し示しながら言う。


「このビルは()()()。物資は持ちきれないほど手に入るだろう。一組で持ち出せる分量には限界がある」


 新しいビル。手つかずの建物だ。


 この世界にモンスターが現れるようになった変革のとき、世界は分断されてしまった。

 ダンジョンが現れ、モンスターがあふれ出るようになった。


 そして、現実世界の一部はどこかに消えてしまった。

 一説にはダンジョンに飲まれたとか、別の世界へ転移したと言われている。


 そして、消えてしまった世界の一部がこの世界に()()()()()ことがある。

 荒らされていない建物。未探索の建物としてだ。

 そして中には、モンスターやお宝が存在しているのだ。


 貴重な物資を手に入れる可能性は充分にある。

 そして、危険も。


「持ち出せる量か……たしかにそうだが……」

「何度かに分けて探索すりゃいいんだ! 俺達は三人だ! 頭数は俺達が多い! それだけ多く持ち出せる!」


 二人組は、考えた様子を見せる。

 三人組は、不満げだ。


 商人は構わずに続ける。


「中には危険もあるだろう。二人と三人、そして俺達で七人だ。危険も分散される。それだけ利益も増えると考えられるだろう?」


「たしかに、そうだ……」

「いや、俺達は三人で充分だ。気心の知れない連中と手なんか組めるか! 勝手にやらせてもらう! 邪魔をするなら容赦しねえ!」


 三人組のひとりが、建物へと目線を走らせる。

 今にも交渉を無視して動き出しそうだ。


「そうか。ならば条件を変えよう。お互いを邪魔しない。攻撃しない。それぞれが好きに戦利品を持ち帰る。それを盗まない。合意するか?」

「邪魔しないだと? いいだろう! 俺達の邪魔もしないならな! そうすりゃ、俺達が一番かせぎが多くなるからな!」


「そっちの二人組も、同意するか?」

「……ああ。どちらの邪魔もしない」


 商人は頷く。


「では、契約は成立した。我々三組はこのビルの探索について、お互いの邪魔をせず、攻撃せず、盗まない」


「はっ! 契約ね。好きにすればいいさ。俺たちは先に行かせてもらうぜ!」

「あっ!? ちょっと待ちなさいよ! ズルいわよ!」


 少女が引き止めようとするが、三人組は我先にと雑居ビルの入り口をくぐっていく。

 少女はとっさに追いかけようとする。

 商人は少女に言う。


「好きにさせておけ。ビルは広い。それに、こちらはまだ話の途中だ」


 早く踏み込めば、それだけ戦闘の可能性が高くなる。

 貴重な品を短時間で選別することは難しい。


 少女は不思議そうな顔をする。

 三組での共同探索の交渉はもう決裂したはずだ。


「え? 話の途中? 邪魔をしない契約を結べたからいいんじゃないの? 早くしないといいもの持ってかれちゃうわよ!」

「もう一組との交渉が途中だ」


 商人は目先の利益を求めていない。

 それよりも、価値のある交渉が残っているのだ。


 商人は残った二人組に目線を戻した。

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