リグル「みすちー、もう屋台は開いてる?」
「こんばんは、みすち~……もうやっているかな?」
「あらリグル、いらっしゃい!提灯の明かりが付いているときは開いている合図って言ったじゃない」
「そうだったっけ……?まあいいや!とりあえずヤツメウナギちょうだい!」
「は~い、すぐ用意するね」
「おまちどおさま~。いつものお酒も用意したわよ」
「ありがとうみすちー。……こくっ……こくっ……かぁ~……」
「あれれ、少し荒れてるんじゃないの?いつもはそんな飲み方しないじゃない」
「そうなんだよ~。聞いてくれるかい?私の愚痴」
「ええ、もちろん!」
「永遠の課題というか、抱えている問題というか……あ、大根ひとつ」
「うんうん。まいど~」
「単刀直入にいうけど、私が何の妖怪かずーーっと誤解されてるのよ!!!」
「あぁ~~、そのおはなしね」
「何度もホタルの妖怪だって言ってるし、何度もアレの妖怪じゃないって否定しているのに!!!」
「そうねぇ~」
「どう思うみすちー……」
「おしり光らせたらみんなすぐに認知してくれると思うわよ。ホタルの妖怪だって」
「……………………」
「毎回言っている気がするけど」
「……それだけはイヤなの」
「まあそうよねぇ。恥や外聞すべてを捨ててるのと同じだしね」
「みんなはなんで誤解するんだ……」
「うーんとねぇ……リグルの特徴はその頭にある触覚とおしゃれな黒マントなわけじゃない?」
「そうだね。マントの裏地が赤色なのがポイントだよ!」
「もちろん、ホタルの特徴である触覚と甲虫の外羽と合致しているよね」
「そうだよね、そうだよね?!」
「問題はここからなんだけど」
「問……題……?」
「まずは、だいたいの昆虫が触覚と羽を持っているっていう点だよね」
「むむむ……それはたしかに」
「結局あとはホタルの一番大きい特徴がないってことなんじゃない?」
「えーん」
「でもほら、長年の布教の甲斐もあってリグルのことをホタルって知っている人もだいぶ増えたと思うよ」
「そうかな……?」
「うん!ほら、ちくわのオマケだよ~!」
「もぐ……あるがとうみすちー」
「どんな種類の蟲も操っているからってのもあるかもしれないよ」
「そうなのかなぁ。たしかに色んな子と一緒にいるけど」
「無関係の虫事件の濡れ衣を着せられたこともあったよね」
「あったあった。害虫と見たらすぐ私を疑うんだから」
「それだけ蟲を操る能力は一目置かれているのかも」
「えへへ、そうなのかな~」
「なに、愚痴はもういいの?」
「話したらスッキリしたよ。気分もいいし、追加でなにか頼んじゃおうかな~」
「はいはい、なんでも頼んでくださいまし」
「酒のおかわりとがんもとスジ!!」
「毎度あり~!」
完