紫「小さな百鬼夜行さんの様子は」
「あら萃香、いい天気ね。博麗神社の屋根の上で日向ぼっこかしら?」
「おぉう、ゆかりぃ~?だよなぁ~?ヒック」
「月見酒ならぬ日見酒ってところね。鬼としてはある意味正しい行いなのかもしれないわね」
「そうだぞ~。酔ってないと力も出ないし頭も冴えない。つまりそれは酔ってるってことなんだ」
「……?まあ貴方は飲んでないほうが不気味だから。いいのよ」
「んで~?なんだ~?呑みの誘いかぁ?」
「いえ、違うわ。宴会を開くのはやぶさかではないけれど……」
「はは~ん。鬼に嘘をつくのは禁忌だぞ~?」
「私は嘘はつかないわ」
「真実を告げないことは嘘と同義、と鬼としては思うけど?」
「嘘以外は嘘ではない、って隙間妖怪は考えてるわね」
「くっくっく。平行線だな」
「だいたい予想はついてるさ」
「何の話かしら?」
「大結界の様子でも見に来たんだろ。ご苦労なことだ」
「正解なんだけど。貴方に当てられると変な感じね。もしかしてシラフ?」
「違うって。言ったろ?酔ってたほうが冴えるってさぁ。じゃあちょっと問題でも起きてるんじゃないの?」
「どうしてそう思うの?」
「だっていつもの狐じゃないじゃん」
「私だって外の空気を吸いたいときだってあるわよ。霊夢の様子だって気になるし」
「お?案外そっちが本題だったりしてな。わははは~」
「まったく飲兵衛は……」
「貴方から見て今この幻想郷をどう思うかしら?」
「良く言えば平和、悪く言うなら暇、だね」
「あら、お気に召していただけてないようね」
「仕方のないことでもあるけどね。なんたって鬼だからねえ。下手に動くことさえままならんよ」
「生きる畏怖の対象の宿命ね」
「ソレは紫もだろうよ」
「酷いわ、こんな乙女に……」
「アンタも酔ってんのか?」
「宴会と幻想入りしてくる新入りを品定めするのが楽しみだよ」
「いい趣味じゃない」
「最近は無理に萃めなくても、勝手に人数が揃うんだ。実に嬉しいね」
「博麗神社には妖怪が集まる謎の特異点でもあるのかしら?」
「誰がどう考えても、十中八九、それは霊夢だろうさ」
「あんなにツンケンしてるのに、みんなあの子にどこか惹かれちゃうのよね~!」
「否定はできないけど……」
「冷たくされるのがいいのかしらね?」
「みながみな、アンタみたいな趣向の持ち主だと思うなよ……」
「霊夢の様子を見に来たのは事実だけれども、萃香の様子も確認したくてね」
「異変の危険因子扱いはやめてくれ。わたしゃもう起こすつもりはないからさ」
「ならいいわ。大妖怪が不満を持ってないかかる~く見て回ろうかと思っているのよ」
「賢者ってのも大変なんだな。式神じゃダメなのかい?」
「直接不満を聞いたり要望を聞くのが面白いんじゃない」
「じゃ、私からの要望は~、う~ん。もっと刺激がほしいってのはどう?」
「鬼が満足できるほどの刺激ねぇ……なにか催し物でもしようかしらね」
「ああ、頼むよ。腕相撲大会なんてどうだい?」
「とっても萃香らしいわ」
「楽しくおしゃべりしすぎて体から酒が抜けちまったよ」
「抜けるのも早いのね」
「対等に話せるやつもあんまりいなくてね。その辺の妖精の方が物怖じしないさ」
「随分と小さなお友達ね。同類と思われてたりして。牛乳がいるかしら?」
「ほう?今すぐ腕相撲大会の予選を始めるかい?」
「あらもうこんな時間!では、またいずれ」
「……ゴクゴク」
完