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グローリー・リーグ -宇宙サッカー奮闘記-  作者: 山中カエル
序章 宇宙人襲来
7/109

07 対決! 宇宙人! 決着!

 「はい! 起爆すべき爆弾は……クレートですね?」


 俺の答えを聞いた監督は真剣な顔付きでこう返す。

 「理由を教えてもらおうかのう」


 「俺は最初、起爆すべき爆弾はブラドだと思ってました。

 彼が動けば将人やクレートを筆頭に動く人間が増え勝てると思ったからです。

 しかし、そうなるとブラドを動かさなければならない。俺の頭ではブラドを動かす方法はわからなかった。

 そして気づいたんです、ブラドではなくブラドを動かせる人間こそが起爆すべき爆弾なのだと」


 俺の話を真剣な顔つきで聞く監督。その顔は何かを試しているかのように見えた。

 俺は続ける。


 「俺は今までのブラドの行動を思い返しました。

 彼の行動で気になったのはネイトをずっと評価していたこと。

 ネイトが普段の試合でどれほど優秀なのか詳しくは把握できていませんが、少なくとも今回の試合では正直役に立っていない。

 それなのに彼にネイトを貶す様子は見られなかった。

 それに、ハーフタイムの彼の『合わせてもいいと思えるプレーができるなら合わせてやってもいい』という発言。

 この事から彼は他者を認めることを重要視していて、ネイトの例から一度認めた者は尊重することが推測できます。

 そして何故ネイトが認められたのか。ネイトはパスはかなり上手いがそれ以外はそこそこという印象で、総合力で見ればアメリカ代表にもネイト以上の選手はいると思います。

 しかし、1人で突っ込むプレーを得意とするブラドのことです、自分に対して完璧なパスを与えてくれるネイトを認めるのは自然な流れだと思います」


 未来が疑問に思っていたブラドが何故ネイト以外の選手と協力しないのかということ。その答え。


 「既に認められてるネイトが万全ならブラドを動かすのも簡単でしたが、残念ながらネイトは宇宙人に対する恐怖で満足に動けない。

 よって、起爆すべき爆弾に求められるのはブラドの満足のいくパスを出して彼に認められること。

 しかしもう後半です。この試合では大半の選手はパスをしているはずなのにブラドは誰も認めていない。

 このままではブラドを動かすのは不可能になってしまいます。そして俺は監督が最初に声をかけた前半15分を思い返しました。そしてそこで、クレートを見つけました。

 クレートは開始直後こそボールを求めて動いていましたが、ブラドやレオの自分勝手なプレー、戦意喪失したネイトなどを見てやる気が薄れていき、ついには試合を放棄し立ち止まりました。これが前半15分、監督が俺に話しかける少し前の出来事です。

 そしてクレートの得意とするプレーはパス。

 つまり、クレートという爆弾を起爆することで、その余波でブラド、更にそこから将人たちが動き、チームがまとまり勝てる。

 こういうことですよね?」


 俺の話を聞き終えた監督は笑って答える。

 「……正解じゃ、ならもう準備はできていると思っていいんじゃな?」


 「はい! もちろんです!

 ですが、先に1つ質問をさせてください。

 監督は試合が始まる前からこの事がわかっていたんですよね?

 監督は何者ですか……?」


 「ほっほ、それは今は関係の無いことじゃろう」


 「……確かにそうですね。では、勝ちに行ってきます……!」


 ***


 クレートが驚いた顔をして俺を見る。俺は迷わずこう言う。


 「クレート! 今お前にできる最高に難しいパスを見せてくれ! 俺はお前のプレーが見たい! お前の力が必要だ!」


 俺の言葉を聞いたクレートは少し笑って答える。

 「生意気なやつだ、よく見ておけ……!」


 そう言ってクレートは力強くボールを蹴った。

 放たれたボールはコート外へ向かっていて、一見ミスキックのようにも見えた。しかし、ボールは綺麗なカーブを描き、吸い込まれるようにブラドの方へ向かう。

 だが、ブラドには複数のマークが付いていてボールを止めようと立ち塞がる。

 相手の脚にボールがぶつかりかけた瞬間、ボールがブレて浮き、脚の上をすり抜ける。


 そしてボールはブラドに届く。


 「うぉっ! まじか!?

 へっ、ナイスパス……っ!」


 ボールを受け取ったブラドはそのまま2人のディフェンスを抜き去りシュートを決めた。


 後半26分、ついに2-3。


 点を決め終えたブラドはパスをしたクレート、そして指示をした俺の元に近づいてきて、豪快に笑いながらこう言った


 「ガハハ! 素晴らしいパスだったなクレート! それに龍也、こんなやつを見つけ出すとはやるじゃねえか! 俺様からボールを奪った時はどうしてやろうかと思ったが、仕方ねえ! 許してやる!」


 どうされてたのか想像して少し怖くなったが、何はともあれ成功だ。

 勝利まであと2点、最後まで全力で戦おう……!


 ***


 後半も残り20分を切った。

 相手チームのキックオフでスタート。


 前線が上手く機能し始めたことにより守備陣も動きやすくなる。相手の攻撃をザシャとアランの連携で止めると、ボールはヒル、そしてブラドへと繋がり、そのままクレートと3人でボールを回して相手を翻弄する。

 クレートのパスは本当に上手い。俺やブラドが望む場所に狂いなく完璧なタイミングでボールを届ける。

 ブラドのドリブルは確かに力任せなものだ。しかし、その力の活かし方が本当に上手い。自分の体格を最大限活かしている。

 最後のディフェンスを抜き、今度は俺がシュート。追加点を奪う。


 これで3-3。


 今の良い流れのまま最後の1点を狙いにいったがそう上手くはいかない。先程までの有利な状況から一転、こちらが窮地に立たされてしまう。


 ベンチからだと気づきにくかったが、フィールドに入ると明らかに感じることがある。それは、相手チームが時間が経つごとにどんどん強くなっているということだ。まるで俺たちの行動を学習しているかのように。

 加えて、相手の動きに疲れが見えない。まだ開始5分であるかのような俊敏な動きだ。対してこちらは、途中出場の俺はともかく他のみんなは体力の限界を迎えている。


 このままだと負ける。

 そう悟ってしまった。

 負けたくない。だがあと1点が遠い。


 「みんな! 諦めるなぁー!!!」

 藁にもすがる思いで俺は叫ぶ。

 この鼓舞で仲間を奮い立たせられると信じて……。


 すると、俺の思いに応えてくれたのか、仲間の動きが明らかに良くなる。これにより押され気味だった状況から立ち直り、相手チームと一進一退の攻防を繰り広げられるようになった。仲間たちの勝ちたいという熱い気持ちが伝わってくるみたいだ。この仲間たちと勝ちたい。俺は心の底からそう思った。


 ***


 実力が拮抗している両チーム。勝利への1点を追い求める後半43分、最後のチャンスだと俺はボールを持って前に出る。


 クレートとブラドとの協力プレーは強い。しかし、相手に読まれるようになってきたし、何より2人とも出会って数時間の関係だ。完璧な連携とは言い難い。


 だが、このチームには何年も前から共に戦ってきた仲間がいる。


 相手に囲まれた。もう前に進むことはできない。俺はその仲間を信じ、決死の覚悟でノンルックバックパスを放つ。


 周りを見る余裕なんてなかった。ただ、あいつならこのタイミングでそこにいるはず。


 「龍也! 受け取ったぜ……!」


 そう! 俺の昔からの仲間でありライバルの藤森将人なら!


 俺からのパスを受け取りドリブルで突き進む将人。

 相手のディフェンスは俺にかかりきりだったせいで将人を止めることができない。


 そのまま将人がシュートを放つ。

 シュートは見事、キーパーの逆をついてゴールを揺らす。


『ピッピッピーーーーーーーーーーー』


 その瞬間、試合終了のホイッスルが鳴り響く。


 試合結果は4-3。

 俺たちは宇宙人に勝利したのだ……!


 ***


 しかし、当時の俺たちは気づいていなかった。

 この試合が序章でしかなかったことに。

 そして、その裏に潜む真の戦いに。

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