Staytion
いつから此処に居るか分からない。
ただ、もうずっと長い間此処に立っている気がする。
約束の時間は既に過ぎている。あの人は一度も約束を破った事はない。きっと此処にくるまでに何かあったのだろう。
カーンカーン!!
鐘の音がなり次の電車がやってくる。子連れの母親や学生たちスーツ姿の男、次から次へと降りてくる。
「ウグッヒグッ!ママーー!!えーーん!!」
すぐ隣で小さな男の子が泣いている。慰めてあげようと近づくと母親らしき女が近づいてきて何処かへ連れて行った。あの人はまだ来ない。
あの時の約束を思い出す。
「漸く行けるわね」
「あぁ、これで何時迄も一緒だ」
電車が近づいてくる
「フフッあの電車かしら、あら?震えてるわよ?」
「…………」
「それに顔も真っ青、大丈夫?」
「…………なぁ、やっぱり辞めないか?」
「あなたが一緒に行こうって約束したんでしょう?」
「私を慰み者にしただけなの?そんな訳ないわよね、私は貴方を愛していたのに!!」
「ヒィッ!?落ち着いてくれ、その、あの時は混乱してたんだ!それに、ほら、なぁ、分かるだろう」
「今更何をいってるの!もう来たわよ!ほら、行かないと」
「うわぁーーー!!」
強い衝撃を感じた、目を開くと私は向かい側の線路にいた。あの人は凄い勢いで駅から去っていった。私は必死で追いかけたが線路を越えることは出来なかった。
だけど、此処で待っていれば、もう直ぐ来るだろう。あんなにも愛し合っていたのだから。
向かい側を、見るとスーツの男が立っていた。暗い顔で線路を見ている。
きっと、あの人だ!わたしはギュッと手を握って此方の駅に引き込もうとする。
「ヒイッ!!うわっ、うわぁぁああ!!!」
あの人は私が手を取るとすごい剣幕で走り出して駅から去っていった。きっと、あの人じゃあ無かったのだ。わたしは再び此処であの人を待つ。
一緒に逝くために。
Staytionその場所では百十数年前に一人の女性が自殺した。その後、自殺者は一人もいない。ただ、そこで自殺しようとすると恐ろしい女に手を引かれ恐怖のあまり逃げ出したという噂話が絶える事は無い。
曰くその場所には何かが留まっている。永遠と目的のものがやって来るまで。