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星が墜ちた夜から  作者: Guru
1章 悪夢の始まり
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第8話 “再会”

 週末。今日は小学校の同級生である、勇次と芽依に会う、その日の夜だ。

 どうやら勇次の話によると、芽依はノリノリだったらしい。


 勇次とは小学校を卒業してからも仲良く、頻繁に遊んでいたが、芽依は中学になってからは、めっきり会わなくなった。

 みんな同じ中学に通い、よく学校内で顔を合わせていたのだけど……


 やはりそこは思春期特有のそれだ。

 女の子と遊ぶのが小っ恥ずかしくなる。むしろ、よく小学校の頃は平気で一緒になって遊んでいたものだ。


 中学を卒業後、それから芽依と再会したのは、間がだいぶ空いて、去年のことだった。

 ある出来事をきっかけに、会うことになったわけだが……


 正直、見違えるように芽依が綺麗になっていたことに驚いた。


 中学生より後の芽依を俺は知らない……

 もう大人の女性だ。綺麗になったと思うのも、それもそのはずだろう。


 いや、これはお世辞でも贔屓目でもない。

 そこら辺の女子に比べても、きっと芽依は美人だ。


 綺麗な人とお酒が飲める……

 

 ナイス勇次。よくぞ芽依を誘ってくれた。

 初めは悩みを聞いてもらうには、女性の存在は邪魔だとすら思えていたが、撤回しよう。俺が間違っていた。




・・・




 埼玉の地元近くにある居酒屋に待ち合わせ。約束の時間の5分前。


 俺がその店の中に入ると、すでに勇次は席に座っており、勝手に1人で1杯やっていた。


「おう! こっちだ。誠人。遅かったな!」


「遅いって……まだ5分前なんですけど……」



 “武藤 勇次” 20歳


 千葉に住む、明るい性格の大学生。

 身長は俺より少し高い、170センチ後半だ。

 茶髪に短髪で、イケメンとは言い難いが、風貌は爽やかではある。


 趣味はジムに行くこと。プロテインを飲むこと。即ち、筋トレだ。

 だからと言って、そこまでマッチョではない。


 勇次の性格的に俺には分かっている。

 趣味は筋トレと言いつつ、絶対さぼっていることを。じゃなきゃおかしい。そう言い切れる。



「まぁまぁ、こっちに座れよ」


 まるで自分の部屋のように、勇次は俺を席に案内した。


「ビールでいいよな?」


「あぁ、ビールで」


「すいませーん。おねぇさん、ビール1つで」


 注文まで取ってくれて、こう見えてマメなやつだ。


「で、悩みって何よ」


「ちょっと……酒が入ってからじゃないと話づらいかな……」


「またかよ。もったいぶるな。逆にハードル上がるぜ?」


 勇次が顔をしかめたところで、早速頼んだビールが届く。


「まっ、それは後で聞くとして、芽依が来る前に先に飲んじまうか!」


 すでにおまえひとりで始めてただろ……


 そう心の中で俺は思ったが、空気を読んで黙った。

 ビールと共に、その言葉は飲むことにしよう。



「しかしよ……芽依がいない内に言っとくけどよ……あれだな」


 勇次は少し照れ臭そうにし、俺から目を反らしながら言った。


「去年久しぶりに芽依に会ったけど、すげぇ綺麗だったよな!」


 どうやら勇次も同じ感想を持ち合わせていたらしい。


「あぁ……実は俺も思ってた」


「だろ? 彼氏とかいんのかな……」


「さぁ……聞けたら今日聞いてみれば?」


「そうだな。チャンスがあったらな」


 何やら勇次は芽依を狙っているようだ。


 もしかして……そのために芽依を呼んだんじゃないだろうな?

 俺の悩みの話をダシに使われた? 考えすぎか。

 でも、1つはっきりしたこともある。


 この発言からして、勇次にも彼女はいない。


 なぜかは分からないが、俺は見えないテーブルの下で、こっそりガッツポーズを取った。



 ちょうど芽依の話をしていると……

 噂をすれば影。


 遅れて芽依が俺達の前に現れる。



「何々? 私の話で盛り上がってるの?」


「芽依! いやいや、何でもないよ」


 俺はピタリと勇次との話を終えて、席を立った。

 芽依をソファーに座らせ、俺は反対側に周り、勇次の隣に座る。


「芽依は何飲むんだ? ビールか?」


 上ずった声で勇次は尋ねた。

 突然の芽依の出現に、動揺を隠せていない様子だ。


「う~ん……1杯目はビールでいいかな!」


 懐かしい面子が揃った。もはやプチ同窓会である。

 こうして、悩み相談ならぬ、単なる飲み会がスタートした。

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