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星が墜ちた夜から  作者: Guru
8章 友達
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第72話 “胸騒ぎ”

 ジェットコースターの4つの機体は、3つに別れて落下する。

 1つは勇次の活躍によって、怪我人を出さずに済んだ。


 残りの2つは、警察の指示をスタッフが忠実に守ったことにより、フリーフォールの真下、メリーゴーランドの上……

 

 そこには共に誰も人の姿はなく、死傷者は未だ0。

 


 園長大原は、施設の4階の園長室から、この地獄絵図を見ていた。


「何がどうなっている……ジェットコースターがフリーフォールに激突……そして今度は……フリーフォールが倒れる……?」


 フリーフォールの倒壊と同時に、大原の膝が崩れ落ちる。

 あれほど現田が注意を促していたのに……大原は何ひとつ信じず、独断でジェットコースターを走らせた。


 後悔したところでもう遅い……命運は──誠人達に託されたのだ。




・・・




──フリーフォール衝突の(・・・)約2分前。

 連絡通路の先にいた俺とゲンさんは、ようやくジェットコースターが走行していることに気が付いた。


「おい!! ゲンさん!! あれ!!」


「なぜだ……ジェットコースターが走っている……」


 何の前触れもなく流れ始めた音楽に、イベント開始と錯覚した周りにいた客達は、カラーコーンを乗り越え、連絡通路へと入り込もうとしている。

 現田は拡声器を使って、興奮状態の客を静めさせた。


『下がってください! 禁止エリアへと入ってはなりません! これ以上、中には入らないでください!!』


 しかし、集団心理とは恐ろしいもので、1人が無視して中に入ると……“ならば自分も”といったように、連鎖していく。


「ゲンさん……だめだ!! 人の波が止まらない!!」


 もう何を言っても聞きやしないとゲンさんは判断したのか、ここで力の行使に出る。

 懐に忍ばせていた“拳銃”を手に取り、地面へ向けて発砲したのだ。


「来るなと言ってるんだ!! 下がれ!! この先は危険が待っている……これ以上、先には行くんじゃなーーい!!」

  

 ゲンさんの怒号と共に、破裂音が闇夜に響き渡る。

 その衝撃音は、騒然とした場を一瞬にして吹き飛ばし、静寂へと変えた。

 

 まさか……“この音”を、人生で二度も聞くことになるとは思わなかったな……


 今のでパニックとなり、余計騒ぎになるかとも考えられたが……意外にも客はおとなしく、俺の耳に聞こえるのは、雨の降りしきる音のみだった。

 そして、次第に冷静さを取り戻した客達は、ゲンさんから離れるように、ゆっくりと後退していく。

 

「──よかった……ありがとう。分かってくれて」


 人は本当に驚いたことが起こると、騒ぐどころか、案外黙ってしまうものなのかもしれない。

 だけど……この後には、更なる衝撃が待っている。

 そっちの方は……みんなが冷静でいることは、恐らく無理だろうな。


 

 俺は振り返って、空を見上げた。

 雨に多少視界は遮られようとも、光るジェットコースター、その一点をただ見つめる。


 あと何秒後だろうか……

 ジェットコースターが支柱に激突するのは……


 俺はそっと目を閉じ、高なる緊張を抑えるために、一度呼吸を整えた。


 いくら悪夢で見ているとは言え、ここが100パーセント安全という保証はない。


 とにかくこれ以上先に人を進ませなければ、例え支柱が倒れても、物理的にこの距離まで届くことはないわけなのだが……


 何だろう……この胸騒ぎは。

 なぜだろうか……このまま簡単に終わる気がしないのは……



「み、見ろ! あれ!!」


 誰かが背後で叫んだ。

 目を開けなくとも、俺には今の光景が手に取るように分かっている。

 悪夢とは見る角度が違っていたとしても、はっきりと分かる。この先に起こる、成れの果てが……


 シュミレートは今日に至るまで、何度も何度もしている。

 俺は頭の中で、その先を順番にイメージしていった。

 ジェットコースターがフリーフォールに激突し、目の前で支柱が倒れ、群衆から一斉に悲鳴があがり…………


「もしかして……」



──しかし、俺はここで一旦思考を停止させ、目を開いた。


 なぜなら……この胸騒ぎの正体を、たった今、見抜いた気がしたからだ。


「だからか……だから俺は……」


 数日前、この事件の悪夢を見てから俺は、毎日のように同じ悪夢を見ていた。

 勇次や芽依は一度しか見ておらず、なぜだかその現象は、俺だけに起きている……


 その理由が分かった気がしたんだ。

 どうして俺だけが、同じ悪夢を繰り返して見ていたのかを……


 理由は決して、勇次が言っていた──“夢の濃さ”なんかではない。

 それとはまた、別のワケがある。





「そうか……俺は……今日、ここで死ぬんだ」

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