表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星が墜ちた夜から  作者: Guru
7章 4つの点
68/76

第67話 “リーダー”

 智が残したと思われる、謎のメッセージ。

 これが俺らに向けたものかどうかは、実際のところは分からない。


 芽依から再び写真を手にした俺は、ボーッとその写真を眺めていた。

 すると、おばさんの口から、まさかの言葉が飛び出す。


「ねぇ、せっかくだし、その写真、持ってってあげてくれる?」


「──えっ!? 数少ない遺品なんですよね? だったら保管してた方が……」

 

 俺は慌てて拒否した。

 こんな大切なもの……簡単に受け取るわけにもいかない。


 しかし、おばさんは智の仏壇の方を見ながら、静かな口調で言う。


「ううん。いいの。小さい頃の写真なら、他にもたくさんあるから」


「いや……でも……」


 再度俺は断りをいれるが、どうしてもおばさんは俺達に写真を渡したいのか、一向に退く気配がない。


「ちょうどこの写真に写るみんなが来てくれたんだもの! ねっ? だからいいでしょ? 形見として持っててあげて! これは私からのお願いよ!」


 何だかお願いとまで言われると……さすがに俺も断ることはできないな。完全に根気負けだ。


「……はい、分かりました。それならありがたく、受け取っておきます」


 

 こうして、俺達は智の形見も貰い、智の実家を後にした。




・・・




──山梨県から帰宅中の車内にて。

 運転中の勇次は、助手席に座る俺に話しかけた。


「元気そうでよかったな、おばさん」


「あぁ、あれから1年以上たってるしな……元気で何よりだよ」


「俺達も来てよかった。何だか智からパワーを貰った気分だぜ!」


 勇次のテンションは、いつに増してあがっている。

 俺も勇次と同じ気持ちだ。久しぶりに智に会えてよかった。来て正解だったな。


 それと……パワーを貰ったと言えば、この写真だけども……

 どうしようか。1枚しかない。誰が持っておくべきだろうか?


「なぁ、この写真……誰が持っとく?」


 その問いかけに対し、芽依は後部座席から返答した。


「それは誠人でしょ。誠人がおばさんから貰ったわけだし」


「いや、俺がたまたま受け取っただけで、それは関係ないだろ? 勇次はどう思う?」


「俺も誠人が適任だと思う」


「どうして!?」


「ここは……この中の“リーダー”が持っとくべきだと思うんだ。智は俺らの中で、リーダー的な存在だった。そいつを受け継ぐためにもよ」


 そういう理由か。けど、その勇次の理論から行けば、全くもって俺ではだめだ。

 いつも俺はみんなの足を引っ張ってばかり……それこそ勇次が適任だろう。


「なら、勇次だろ? いつも勇次が率先して、話を仕切ってくれる」


「それか……それはな……」


 ちょうど車の信号待ちだったためか、勇次はここで一旦顔を伏せた。


「──少しでも智の代わりをやろうと……無理してただけだ。智がいないんだから、このメンバーで集まったら俺がしっかりしないと……ってな」


 俺は今更ながら気付かされる。

 元々勇次は俺達を振り回すくらい、自分の話をしたがりのやつだったけど……


 言われてみれば、話をまとめたり仕切ったりするのは、得意な方ではなかった。

 大学生になって、勇次も大人となり変わったのだと思っていたけど……


 決してそういうわけじゃなかったんだな。

 勇次は無理して、兄貴分を演じてただけだったんだ。


「だから、誠人。リーダーはおまえだ。おまえはいつも冷静な立ち位置で物事を見ることができてる。それに俺は一度は辞めた身だしよ……そんな中途半端な俺に、リーダーは務まらねぇ」


「まだ言ってんのかよ、その話……」


 そう話してる間に、信号が青へと変わる。 今は運転に集中してもらうよう、勇次の心情を探ることはやめておくが……

 意外にもあの出来事のことを、勇次は未だに後悔しているようだ。


 冷静さで言えば、芽依のがしっかりしてる気がするけど……

 勇次からしたら、女の芽依よりは、男の俺にやってもらいたいのだろう。


「分かったよ……俺がリーダーかは知らないけど、とりあえず写真は俺が持っとく」


 写真は俺が持つことにするけども、本当にリーダーの件だけは保留だ。勘弁して欲しい。

 俺は写真を綺麗に半分に折って、智同様、財布の中へとしまった。



「で、リーダー。昨日の夜も、あの悪夢を見たのか?」


「だからリーダーじゃないって! けど……まさにそうなんだ。昨日も同じ悪夢を見た」


 実は、あれから続けて毎日、俺は遊園地の悪夢を見ている。

 何度も嫌な気分を味わったが……その分だけ、成果も得られていた。

 勇次が見ていた悪夢の記憶とのズレに、新たに気付いたのだ。


「忘れないうちに言っとくけど、勇次がいるはずのコーヒーカップ前のトイレ。元々はあそこにコースターは落ちるって、話だったよな?」


「あぁ、そのはずだが……なんだ? 違うのか?」


「ちょっとな。実際に落ちるのは、トイレの上じゃなくて、トイレの左横の道端部分だ」


「マジか!! やっぱ何度か悪夢を見たことは役に立ってるみたいだな」


「まぁな。だからと言って、結局勇次のやることは変わらない。トイレを封鎖して、近くに人を近寄らせないようにしてくれ」


「分かった。人が寄って来ないよう、しっかり見張っとく」


「それと、コースターは落下した際に衝撃でバラバラに砕ける。破片が刺さらないよう、十分注意して欲しい」


「あぁ、なるべく身を低くして、体を守るようにしなきゃだな。これは他の刑事さん達にも伝えといた方がいい。それで……肝心の支柱の倒れる位置はどうだった?」


「いや……それは残念ながら、分からずじまいだ……」


 そう……何度悪夢を見ようとも……

 支柱の倒れる位置は見えては来ない。

 どう足掻いても距離が遠いため、時間が足りず、悪夢はいつも途中で終わってしまうのだ。


「なぁ、芽依。短い悪夢の時間の中で、どうすれば支柱のとこまで見れるかな?」


 なぜか話にずっと入ってこなかった、後部座席の芽依の方に俺は目をやる。

 すると、芽依はいつかの時のようにメモ帳を取り出し、何かを書き込んでいた。


 考え事をしてたのか……だから俺達の会話に参加してこなかったんだな。


 芽依は自分の顔を見られてることも気付かずに、適当に俺の質問に回答する。


「何度も同じやり方してるからだめなんじゃない? 無理なら諦めて、別の方法を取るべきよ」


 適当な返しに関わらず、意外と的は得ているな……


「ふ~ん……別の方法ね……」


 俺が渋々納得したところで、芽依は突如として大声をあげる。


「──そうか!! そういうことなのね!! 分かったわ!!」


 突然の芽依の大声に、俺は耳を塞いだ。


「うわっ!! びっくりするな!!」


「そうだぞ、芽依!! 危うく事故るとこだ!!」


「ごめん、つい……でも、私、分かったのよ!」


 意味深な発言をする芽依。

 さっきから芽依は、メモ帳に何かをずっと書き込んでいた。

 よほどの大発見でもあったのか?


「分かったって……何が?」


 芽依は真剣な眼差しで、勇次に指示を送る。


「それを今すぐ説明したいから、勇次。一旦路肩に車を停めて!」


「あぁ……いいけど、何だよ急に……」


 真に迫る芽依の表情に、勇次は言われた通り車を停車した。

 そして、芽依は興奮冷めやらぬまま、俺達に説明を始める。


「いい、2人とも。これから私が話すこと…….よく聞いててよね!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ