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星が墜ちた夜から  作者: Guru
7章 4つの点
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第62話 “尊敬”

 俺達はフリーフォールが倒れる位置と予測される、連絡通路の上にいた。

 この連絡通路の長さは、約15メートルほどだ。


 フリーフォールの支柱の長さは最大80メートルだが、何も支柱の“全部”が倒壊するわけではない。

 ジェットコースターが激突したのは、支柱の半分より下の部分。

 即ち、そこから上の柱が折損(せっそん)したことになるわけだ。

 だとすると、倒れた支柱の長さは約50メートルくらいだと考えられる。


 また、フリーフォールの位置から、この連絡通路までは距離があるため、それらすべてを踏まえると、隣接する“東京球場”の外周へとギリギリ到達するかどうかの、瀬戸際の長さくらいだ。


 俺は今一度、東京球場を眺めた。

 東京球場はドーム球場のため、外からでは中の様子は見えてこない。


「今は試合中か? 外に人はあまりいないみたいだけど……」


 球場内で試合が行われているのかは定かではないが、今の時間帯、この辺りにそこまで人は多くない。

 お土産売り場をうろつく野球ファンと思われる人達、遊園地から帰る人達、それらがぽつぽつといる程度だ。


「支柱が倒れる詳しい場所は分からないけど……この連絡通路は、可能ならイベント中は警察に封鎖させてもらいましょうか」


「だな! とにかくこの付近には人は来させないようにするのが一番安全だ」


 勇次が言うように、もちろん人を近づかせないようにするのがベストで間違いないが……

 そもそもの話として、この連絡通路……


 橋としての、“強度”は大丈夫なのだろうか? 


 ふと、俺はそこに疑問を抱く。


「それにしても、あの巨大な鉄の塊が倒れ、連絡通路に落ちたとして……この橋自体が、崩れ落ちたりしないもんなのかな?」


「そうね……でも、よくよく悪夢を思い返してみても、支柱への激突音や、人の悲鳴は聞こえていたけども……瓦礫が崩れ去るような音は聞こえてこなかった気がするわ」


「そうか……これだけ長い橋が崩れるものなら、必ずその音は耳に入るはず……」


 正直、あの“悪夢の音”を思い返したくはないが……確かに芽依の言う通り、橋が崩れたような音を聞いた覚えがない。


 となると、柱が倒れるのは、連絡通路の上ではないのか……?

  

「じゃあよ、倒れたのは外の一般道の方か? こっちの道路の封鎖はどうする?」


 勇次は連絡通路の下にある、車道を指差していた。


「ゲンさんは、あまり警察の人数は用意できないって言ってたよな? できることなら、その道も止めてもらいたいけど……」


「難しいかも分からないけど、頼むだけ頼んでみましょうか」


 ここまで来ると、もはや俺達でどうにか出来るレベルの話ではない。

 あとは警察にお願いし、なんとかしてもらうしかないだろう。



・・・



「これで一通り見終えたな」


 俺は腕時計で時間を確認した。すでに時刻は7時半を過ぎている。


「そろそろ戻るか。警察に話をしなければならないしな。配置のことを、しっかり伝えたい」


 ゲンさんに今までのことを伝えるために、俺達は遊園地へと戻った。



・・・



 遊園地に戻ると、ジェットコースター乗り場の近くにいた、ゲンさんと金子さんの姿を発見する。


「あ、いた。ゲンさ──」


 早速俺達は声をかけようとするが、どうやらゲンさんは誰かと揉めているように思える。


「ん? なんだ? 揉め事か?」


「近づいて会話を聞いてみましょうか」


 俺達は2人を呼ぶのを一旦止め、こっそりと近づいていき、その揉め事の内容を聞いてみることにした。



「……ですから、今日のイベントは中止してくださいと言っているのです」


「それは昨日、私の方からも言ったじゃないか! 中止にはしないと!」


 ゲンさんと話しているのは、小太りの中年男性だ。

 その男性は園内スタッフの格好をしている。

 偉い人なのだろうか? やけに上から目線というか……かなりの怒鳴り口調だ。


「これは警察だろうと関係ない! ちゃんとした理由を説明したまえ! 話はそれからだ!」


「理由は……言えません」


「ほら見ろ!! それじゃ納得ができるわけないだろうが!!」


 ヒートアップする男性。ゲンさんは男性をなだめる。


「あまり興奮せずに……落ち着いてください。それに、ここでする話ではないはず。場所を変えましょう」


「分かった。いいだろう。付いてきたまえ」


 そう言って、男性とゲンさんは関係者入り口の中へと入り、消えていった。


 金子さんは1人、その場に取り残される。



「金子さん!」


「──あぁ、君達……メッセージは見たよ。下見をしてたんだろう? どうかな? きっちりできたかい?」


「あぁ、もちろんだぜ。それより、金子さん。さっきの太った人って……」


 勇次は先程の男性が気になって仕方なかったのだろう。しかし、俺達には先にやらなければならないことがある。

 芽依は勇次を抑え、用件を伝えた。


「ちょっと待って、勇次。優先順位を考えましょう。私達には、お願いしなきゃいけないことがあるはず」


「そっか……準備に時間がかかるもんな」


「そうよ。金子さん、私達──」



 俺達は金子さんに、警察の方に配置してもらいたい場所、閉鎖をお願いしたい場所を伝えた。


 こんな素人のお願いだと言うのに……

 金子さんはゲンさん同様、俺達を信頼してくれているのか、すべてを受け入れてくれた。



「──分かった。早速手配するよ」


 そう言って、金子さんは携帯を手に取り、指示を出す。

 金子さんも、それなりに立場のある人間なのだろうか?


 とにかく俺達は金子さんに感謝をし、礼を言った。


「ありがとうございます。俺達を信じてくれて」


「礼はいらないよ。それと正直に言うと、僕が信じているのは君達ではなく、現田警部補さ。警部補がそう言うならば、僕はその指示に従うまで。それ以外の選択肢はない」


 よほど金子さんはゲンさんのことを信用……いや、“尊敬”しているのかもしれないな。


「なんでも構いません。ありがとうございます!」


 礼はいらないと言われても、体が自然と反応し、俺達3人は揃って頭を下げた。


「だからやめてくれって……頭をあげてくれよ。僕達だって事故を防ぎたいのは、一緒の思いだからね」


 そう言われても……俺達の悪夢の話を信じてもらえるだけでもありがたいことなんだ。それだけで感謝してしまう。



 一通り話を終えたところで、俺達は気になっていた先程の男性に話題を移した。


「ところで金子さん、さっきゲンさんが話していた男性……あの人って……」


「あぁ、あの人はこの遊園地の園長の“大原”さんだ。昨日から遊園地を閉園するようお願いしているのだけど……中々言うことを聞いてくれなくて」


「警察のお願いでも、受け入れてもらえないものなんですね」


「理由が……理由だからね。それこそ、何者かからの脅迫文だったり、犯行予告でもあれば、すぐに話は付くんだけど……」


「なるほど……」


 勇次はとても納得した様子だった。

 嫌な予感をした芽依が、釘をさす。


「余計な真似しようとしてるんじゃないでしょうね? 勇次!」


「ば、ばか言え! な、何もするわけねぇだろ……」


 えらい焦り具合だな……こりゃ、犯人にでもなりきって、脅迫でもするつもりだったな?


 まぁ、確かに金子さんの言う通りだ。

 理由は『学生達の悪夢、予知夢です』……なんて言えるわけがない。

 園長の立場からしたら、今日はこの夏の一大イベントの初日。書き入れ時を無駄になんてできないはず。


 さぁて……どうする。

 俺達は万が一に備え、行動するだけだが……

 一番はゲンさんが園長を説得さえできれば、簡単に話は付くんだ。

 頼むぜ! ゲンさん!!

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