表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星が墜ちた夜から  作者: Guru
7章 4つの点
62/76

第61話 “下見”

 俺達3人は時間があるうちに、遊園地内の下見を始めた。

 今日は祭日で、学生の夏休み初日とあってか、人もそれなりに多く賑わっている。


「すでにけっこう人がいるな……」


「イベントの時間になったら、もっと人は増えるかもしれないわね」


 まず俺達は芽依が悪夢の時にいた、ジェットコースター乗り場へと移動した。



・・・



「あそこよ。私が夢で見た位置は。あの階段の1階部分にいたの」


 芽依が指差すところには、ジェットコースターの順番待ちしている人達の姿がある。

 やはり遊園地の人気アトラクションなのか、多くの人が列をなして並んでいた。

 ジェットコースターの搭乗部分は、4階に当たる場所。

 その4階から一番下の1階まで、ぎっしり人の列は続いている。


「こんなに並ぶのか。俺がさっき乗った時は、そこまで人はいなかった。ラッキーだったな」


 そうか……勇次は集合前にこのジェットコースターに乗ってたんだっけ。

 あまりそれも意味のない行動だったみたいだけど。


「私の悪夢……なんでここに並んでたんだろ……」


 芽依は自らの悪夢に、疑問を感じているようだ。

 俺達が共有して見る悪夢は、皆別々の視点から見ている。

 それを考えると、そのいる場所には、何かしらの理由があるはずなのだ。


「あれじゃねぇか? すべての起点は、このジェットコースターから始まる。つまり、ジェットコースターさえ止めれれば、事件は起きない」


「そうね……私がジェットコースターの発車を、何としても防げ……ってメッセージなのかしら」


 まさに勇次と芽依の言う通り、すべての原因はジェットコースターにある。

 こいつを食い止めさえすれば、事故そのものを防ぐことができる。

 

 だが、念には念をだ。万が一に備え、激突時のことも考えなればならない。

 俺達は次の場所へと移動した。



・・・



「ここだ……俺がいたのは」


 次は俺がいたと思われる、メリーゴーランドの付近。

 メリーゴーランドには、多くの小さな子供達が楽しそうに乗っている。


「なんだか想像するだけでも怖いな……あのメリーゴーランドの上に、分裂したコースターが落ちるだなんて……」


 夢の中でのスタート時は、明かりも点かず、メリーゴーランドは真っ暗だった。

 しかし、これは曖昧な記憶の部分で、それでもメリーゴーランドには人が乗っていた気がするのだけど……

 もしかして、あのイルミネーションイベントの最中も、アトラクションに乗ることが可能なのか……?


 疑問に感じた俺は、改めて2人に尋ねてみた。


「なぁ、確かメリーゴーランドには人が乗っていた気がするんだけど……ジェットコースターからも悲鳴は聞こえたし……2人の悪夢はどうだったかな?」


「あぁ、そのことなら……」


 芽依はカバンから、パンフレットを取り出す。

 それは俺が一昨日用意したものではなく、芽依が現地で直接調達したものだ。


「ここに小さい文字で書いてあるわ。『もしイベント中に乗り物に乗ることができれば、この夏いいことがあるかも?』……ってね」


「なるほど。付加価値をつけようって訳か。それなら運試しとばかりに、こぞってみんな並ぶだろうな」


 これで、アトラクションに人が乗っていたことは間違いないと証明され、その理由も分かった。

 

 仮にジェットコースターの衝突が起きたら……俺はこのメリーゴーランドの人達を避難させる役割があるのか?


 ならば、俺はこの位置にいるべきだ。

 俺の持ち場はここに決めよう。



・・・



 再び移動した俺達は、勇次がいたと思われるコーヒーカップ付近に辿り着く。


「俺はこの辺りにいたんだけど……そうだ、あそこだ。コースターのひとつが落下したのは」


 勇次が指差したのは、その近くにあったトイレだった。

 俺の悪夢では、唯一コースターの落ちる位置が確認できなかった箇所である。


「俺の夢では見えなかったんだけど……トイレの上に落ちたのか?」


「あぁ、中に人がいたのかまでは分からないが……落ちたのは間違いねぇ。イベントの時間になる前に、警察の人達に封鎖をお願いしようか」


 アトラクションと違って、トイレなら封鎖することも容易いはずだ。

 立ち入り禁止にしとけば、誰も中には入らないと思われるが……一応悪夢通りに、勇次はこの場に着いてもらうとしよう。



・・・



 次に、コースターの最後の1つが落ちたと思われる、フリーフォールの場合へと移動した。

 このフリーフォールの支柱に、最高速度に達したジェットコースターが激突し、折損(せっそん)する。


 支柱は円錐状の形をしており、正確な横幅や長さまでは分からないが、1つの乗り場に最大8人が乗れる作りになっている。

 どうしても機械の作り的にも、その横にスペースはできてしまうため、全部の横幅は大人10人分くらいといったところか。

 

 その幅の乗り物が、80メートルも続いているわけだ。それが倒れ、下敷きになったと考えると……犠牲者の数は計り知れない。


 フリーフォールの下にも、警察の人を配置してもらうように、ゲンさんにお願いしよう。

 俺らの夢では、そこには誰もいなかった。ここは警察の力を借りるべきだ。



・・・



 そして、俺達は階段を昇って2階へと行き、遊園地の外へと移動を始めた。

 この施設は、入場券なしでも色々移動することができる。

 隣接する、野球場からのお客にも気軽に足を運んでもらう魂胆だろう。


 俺達は大きな連絡通路を渡る。

 下には車道が見え、何台もの車が走っている。また、道路の脇には歩行者も見えた。


 ここか……フリーフォールの支柱が倒れると予測される場所は……


 この位置は、誰も夢では見ることができなかった。

 恐らく、この位置から悪夢を見ていたのが、俺達のもう1人の仲間──(さとし)だ。


 正直、ここが一番俺達の知りたい場所。

 肝心の場所だって言うのに……


 なぁ、智……一体どこに倒れるんだ? 支柱は……

 なぁ、頼むよ。教えてくれよ……智…… 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ