第60話 “協力者”
新たに仲間に加わった、ゲンさん。
刑事さんが力を貸してくれるとは、本当にありがたい。百人力だ。
「本来、警察の私が連絡先を一般の人に教えるわけにはいかないんだがな。君達は特別だ。教えておくから、何かあったらメッセージをくれ。電話だと中々出れないかもしれん」
まさか刑事さんと知り合いになるとは、想像もしてなかったな。
悪いことして、知り合いになったわけじゃないからいいけど……
「あと、私はもちろん君達を信じるが、署の人間は、こういった類いの話は信じないかもしれない……それを考えると、人員はあまり用意できないと思う。そこはあまり期待しないでいてくれ」
「そうですよね……もちろん私達もそれは分かっています。少しでも力を貸してもらえるだけで、ありがたいです!」
だよな……全員が俺達の悪夢の話を信じるわけがない。むしろ、ゲンさんみたいに話が通じる人の方が珍しいのかも。
「とりあえず、今日はこの辺で終わりにするか? まずは俺の悪夢の日の20日……この日に、東京遊園地に集合だ!」
勇次がそう締めたところで、この日は解散となった。
今日は18日。事故が起こるその時まで、しっかり心の準備をしておこう。
・・・
そして、20日の夜6時。
俺達は東京遊園地の中で待ち合わせをしていた。
しかし、待ち合わせ時間になっても、珍しく勇次がまだ来ていない。大抵は勇次が一番乗りのパターンが多いんだけどな。
先に着いていた俺と芽依は、おとなしく勇次を待つことにするが、その僅か数分後。こちらに向かって走ってくる勇次の姿が見えた。
「おーい! 誠人、芽依」
「──勇次。遅かったな」
急いで走ったせいか、勇次はかなり呼吸を乱している。
「はぁ……疲れた。すげぇな……“あれ”。舐めてかかってたけど、想像以上にやばかったぜ!」
「あれ……?」
何のことか分からなかった俺は、勇次に聞き返す。すると、勇次は空を見上げて、上を指差した。
「ジェットコースターだよ。あれ……めちゃくちゃ怖ぇな。すげぇ落下の角度だ!」
「勇次……おまえ、乗ったのかよ!!」
「あぁ、物は試しにと思ってよ。実際乗れば、何かの参考になるかもしれねぇし」
たいしたもんだよ……本当におまえは。
数時間後に、あのジェットコースターは脱線をして大事故を引き起こすかもしれないんだぞ!?
よくそれを知ってて乗れたもんだ……
「すごい度胸ね……それで、何か分かったの?」
芽依もとても驚いていた様子で、勇次の努力の成果を期待するが──
「あぁ、分かった。感想は『めちゃめちゃ怖かった』だ!」
「あぁ……そう」
乗るだけ無駄。何の成果も得られなかったようだ。
俺達がそんな会話を繰り広げていると、ゲンさんが1人の男性刑事さんを引き連れ、集合場所の噴水広場へとやって来ていた。
「待たせたね。3人とも」
「いえ、俺達も今来たところです。それで……この方は?」
「紹介するよ。私の一番信頼できる部下、“金子”だ」
ゲンさんに軽く肩を叩かれた金子という名の刑事さんは、俺らに向かって律儀に一礼した。
見たところ、金子さんの身長は高く、180センチはあると思われる。ほどよい筋肉に、メガネをかけており、年齢は……20代後半くらいかな?
一般客と紛れ込ませるためか、上はラフな半袖シャツ、下はジーンズと、パッと見は刑事とは到底思えない服装だ。
きっちりとしたスーツを着た、ゲンさんとは大違いである。
「初めまして。話には聞いてますよ。勇次君、芽依ちゃん。そして、お久しぶりですね……誠人君」
「──えっ?」
なんで俺だけ、お久しぶり?
金子さんの挨拶に疑問を持ったところで、俺はようやく思い出す。
「あーっ! あなたは事情聴取の時に、ゲンさんと一緒にいた刑事さん!」
そうだ。事情聴取の際に、俺の悪夢の話を鼻で笑って信じてくれなかった人……
でも、こうしてゲンさんとここに一緒にいるってことは、今は信じてくれているってことなのか……?
「ゲンさん……って? もしや……ぷっ」
超年下からの“ゲンさん”呼びに耐えられなかったのか、金子さんは吹き出していた。
「こらっ! 笑うんじゃない! 金子! いいんだ。ここではゲンさんで通ってる」
ゲンさんは一度咳払いをし、話を仕切り直す。
「君達に残念なお知らせがあるんだ……もう分かってるとは思うが、ここの園長と取り合ってみたものの、今日の遊園地の閉園を取りつけることはできなかった」
「ですよね……」
実は昨日、俺達はゲンさんに頼み込んで、本日の遊園地の開園を取り止めるよう、お願いしていたのだ。
しかし、その要請が昨日の今日とあってか、警察の力をもってしても不可能だったようだ。
こうして、今遊園地の中に大勢の人や……ましてや俺達がいること自体、それは失敗だったのだということが、すでに証明されている。
それでもゲンさんは、事故を阻止するために最善を尽くす。
「だが、まだ大丈夫だ。あのイベントは何としてでも止めてみせる。もしかしたら君達にも危険が及ぶかもしれないが……協力を頼む」
「もちろんです。そのために俺達も来たんですから」
「あぁ、よろしく頼むよ。では、我々は園長のもとへと行ってくる。それでは」
その言葉だけ残し、ゲンさんと金子さんは俺達の前から去っていった。
「さて、私達はどうしましょうかね」
「とりあえず俺達3人で、持ち場を確認しようか」
「そうだな。まだ9時まで時間はある。そうしようぜ」
俺達3人が揃ってこの現場に集まったのは、今日が初めてだ。
まずはタイムリミットの時間までに、俺達はできることをしよう。




