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星が墜ちた夜から  作者: Guru
6章 麗しきピアニスト
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第51話 “努力”

「もちろんだよ! 芽依の努力が報われて欲しいし、協力するよ!」


「俺も……どうか協力させてください!!」


 不思議と俺と勇次の温度差はあったが、俺達は芽依のピアノ演奏を成功させるために、力を貸すことした。


「ありがとう。2人とも!」


 俺達は待合室を出て、ロビーのソファーへと移動する。 

 何だかいつもと同じ、作戦会議をしているようだ。


 問題が起こる場面は、昼頃の披露宴の余興。

 今は午前中のため、まだ数時間はあるが、まずは披露宴の前に教会で式が行われる。そこに参加しなければならない。

 それまでの時間は約10分だ。時間は少ないが、ひとまず作戦を立てよう。


「式まで10分か……時間がないな。芽依もこんなことなら、もっと早く言ってくれればよかったのに」


「それが私も昨夜この悪夢を見たのよ。昨日の今日の出来事だったし、どうすることもできなかった……」


 念のためではあるが、日にちと時間について、俺は芽依に尋ねた。


「一応だけど、その悪夢は今日で間違いないんだよな?」


「時計は着けてなかったから分からなかったけど……間違いないと思う。そもそも結婚式なんて他に入ってないし、ピアノ演奏する機会も、今日以外ないでしょうから」


 結婚式のマナーとして、時計は着けないのがルールである。

 時計を見ると、『時間を気にしている』と思われ、それが『早く終わらないかな』といった考えに繋がるらしい。

 最近はそこまでうるさくないみたいだけど、友人の結婚式が初めてとなる俺も、それなりには調べては来たつもりだ。

 

 まぁ何の理由であろうと、時計を着けながらピアノ演奏をするわけはないか。

 どうやっても、この状況下で時間を確かめることは難しかったみたいだ。


「そうか。なら日にちは合ってるとしても、正確な時間までは分からないんだな……」


「うん……ピアノ演奏中ってのは間違いないんだけど……」


 時間については悩ましい限りだが、勇次は別の観点での不安要素も割り出していた。


「それと停電をどう防ぐかだよな。電気はフロアごとか? 他の会場の電気は、さすがにどうすることもできないだろうし」


「だろうな。仮にカズの披露宴の会場だけでよかったとしても、俺達だけで電気のコントロールは難しくないかな?」


「それもそうか……とりあえず分電盤の位置でも調べとくか?」


 あまりにも勇次の大胆な発言に、芽依は釘を刺す。


「なるべく事を大きくさせるのはやめましょう。今日はめでたい席だし、騒ぎにしたくない。第一に考えなきゃいけないのは、翔子達のことよ。2人の結婚式を台無しにはできない」


 あくまで主役は、新郎新婦である。

 そこに俺達は花を添えるだけ。勘違いしてはならない。


「そうか、わりぃ。けど……そうなると、できることは限られてくるな……」


 勇次が反省したところで、スタッフの声がロビーに響き渡る。


「小暮家、田村家のご両家の皆様。まもなく式が始まります。参列希望の方は、お集まりください」


「小暮って……カズのことだ。えっ? もうか?」


 式まで10分あったといっても、俺達は移動時間のことをまるで考えていなかった。

 どうやらロビーからチャペルまでは少し距離があり、時間がかかるらしい。


 そういったわけで、俺達は具体的な案を何も出せないまま、時間を迎えることになってしまった。




・・・




 いざ、チャペルでの結婚式がスタートする。

 俺は人生初の洋装での結婚式だ。何をしたらいいのか分からず、正直戸惑う。


 まずは新郎であるカズが出てきた。

 顔が強張り、緊張しているのが分かる。

 けど、見た目はバッチリ決まってるな。カズは背が高くスラッとしているので、タキシードがよく似合う。かっこいいぞ。


──ここで、カズの話を少々。

 カズは中学時代、俺と同じテニス部だったから、どんな男かよく知っているが……はっきり言ってしまえば、彼は運動音痴だ。テニスも部員の中で一番下手だった。

 それでもカズはテニスを愛し、中学卒業後もテニス続けていった。


 数年後、大学生になった俺は、カズにテニスに誘われ、久しぶりに再会することになる。

 カズは高校卒業と共に就職しており、社会人のテニスチームに入っていた。俺はそのチームの集まりに誘われたわけだ。


 カズと一緒にテニスをやるのは中学以来で、今でも一応俺は、大学のサークルでテニスをやっている。

 だからあのカズに、テニスで負けるわけはないだろうと、余裕こいていた。


 しかし……カズはびっくりするくらいテニスが上達しており、俺は完全に打ち負かされてしまったのだ。

 信じられない……あの下手っぴだったカズが、こんなにうまくなっているなんて……


 俺がテニスサークルという名の飲み会サークルで遊んでる間に、コツコツとテニスを続けていたカズ。

 努力とは、本当に実るものなのだと、俺は改めて思い知った。

 きっとカズの嫁さんの翔子も……こんな直向(ひたむ)きに努力をする彼の姿勢に惚れたのだろう。


 ちょうど、その翔子の話をしていると……

 新婦である翔子が、お父さんと一緒にゆっくりと歩いて来ていた。


 人前で見せる、初めてのドレス姿。それは目を奪われるくらい綺麗だった。正直、カズが羨ましく仕方がない。


 翔子が俺の真横を通った時。

 隣から「俺も結婚してー」と、小さな声が聞こえた気がしたけど……

 聞かなかったフリをしておこう。

 なぜなら、俺も同じことを思ってしまっていたからだ。

 それくらい──“結婚っていいな”と、感じたんだよな。

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