表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星が墜ちた夜から  作者: Guru
5章 正義のヒーロー
45/76

第44話 “幕開け”

 俺は駆け足で芽依の元へと戻り、日にちが判明したことを伝える。


「芽依! 分かったぞ! あの悪夢の日は今日じゃなくて明日だ!」


「本当に!? 何か思い出したの?」


「あぁ、コンビニの広告が夢とは違ってたんだ。そのおかげで、日にちが分かったんだよ!」


「やるじゃない。誠人! じゃあ……誠人はもう帰っても大丈夫そうね」


「えっ? その言い方だと、もしかして芽依はまだ残るのか?」


「えぇ。万が一記憶違いの恐れもあるし……それに誠人はそろそろ電車、やばいでしょ?」


 そうなんだよな……芽依の言った通り、神奈川から埼玉に帰るには、そろそろ終電の時間が近くなってきている。

 その理由もあり、この場を離れるリスクを冒してまで、コンビニまで見に行っていたのもあった。


 それにしても芽依は用心深く、まだここに居残るみたいだ。

 すでに長時間が経過していたため、疲労はかなり溜まっていることだろう。俺は芽依の体調が心配だった。


「無理するのはやめよう。芽依。明日に備えようよ」


「でも……」


「そうしたい意味も気持ちも分かるけど、本当に明日だったならば、今日だけでかなりの体力を使うことになる。明日にすべてを賭けるべきだ!」


「う~ん……」


「それに今日が日曜だからか、人が中々減る気配がないだろ? そこも考慮すると、明日の可能性が高い」


「……そうね、分かったわ」


 やっとの思いで俺は芽依を説得させる。

 確かに100パーセントの確率とは言えないが、それなりの根拠もある。

 今日はしっかり休んで、明日に全力を尽くした方がきっといい。


「何だか本当に帰るんだか心配だな。嘘ついて残ったりしないよな?」


 一応返事はしていたが、根性ある芽依のことだ。

 とりあえず今だけは口で合わせて、帰ったフリをするなんてことも考えられる。


「大丈夫、そんなことしないわよ! ちゃんと帰るから! なんなら私の家まで来て、帰るとこ見届ける?」


「そうだな……そうした方がいいかもしれないな。危険だし! 家まで送るよ!」


「──えっ!? 本当に来るの!? 冗談のつもりだったんだけど……」


「冗談かよ……」


 だから……その普通の声のトーンでの、分かりにくい冗談はやめてくれ!


 俺が心の中で、そう嘆いていると、芽依は1人勝手に深読みまで始めていた。

 俺からしたら、親切のつもりだったのに……


「もしかして誠人……うちに押し掛けて、上がり込もうとしたんじゃないでしょうね!」


「いやいや! そっちから先に、そう話を振ったんだろ!」


「はて? そうだったかしら?」


「とぼけるなよ! ったく……ちゃんとまっすぐ家に帰れよな!」


「……怒った? ごめんごめん! 私のこと心配してくれたんでしょ? ありがとう。近所だから本当に大丈夫。誠人こそ遠いんだし、帰り気を付けてね!」


 この変わり身……芽依のニヤついた顔から察するに、全部わざとだな。こりゃ。

 なんだか手玉に取られてる気がする……

 

 以前、芽依のことをパーフェクトヒューマンと紹介した記憶があるが……

 これは撤回しておこう。稀に意地悪気質になるところがある。


 まぁ……そんなとこも、嫌いではないけど。



 そうこうしている間に、終電の時間は近づいており、俺達はこの場で解散となった。


 本番は明日だ。しっかりと明日に向けて、今は心と体を休めよう。




・・・




──翌日の夜9時過ぎ。同公園にて。

 この日は昨日よりも、より一層暖かく、むしろ暑いくらいの陽気だった。


 俺と芽依は再び公園内で合流する。

 まだ少し疲れは残るが、一度帰って寝れた分、マシだったと考えるべきだろう。

 あのまま残り続けたら、それこそ体力を消費し続けていたはずだ。


 昨日の反省を活かして、俺達は集合を遅めにしていた。 

 俺の悪夢により日にちまでは分かっても、時間は未だに分からないわけだが、この公園はとても人気で、中々人がいなくならない。

 ましてや今日は気候も良いため尚更で、犯行は遅い時間と予測ができる。



「よかった。まだ事件は起きてないみたいね。ベンチも特に変わった様子ないし」


「おいおい、俺の夢に俺の推測。信じてなかったのかよ?」


「ちょっとね。賭けに成功したわね、私達」


「あぁ、でもこっからだ。集中しなきゃいけないのは」


 俺達は“コ”の形に並んだベンチの、()線の部分に座った。

 事件が起きる場所は、“コ”の()の横線に当たるベンチである。

 あえてそのベンチを空けておくことで、犯人をそこに誘導させる作戦だ。


 記憶違いを想定しなければならない俺達は、待つ間に何度もシミュレートした。

 数多くの作戦パターンを用意している間に、時間は刻々と過ぎていく。


 そして……意外にも“ヤツ”はすぐに姿を現した。


 まだそこまで夜も深くない、午後11時過ぎ。

 平日の月曜とあってか、公園内は閑散としており、人は俺達以外誰もいなかった。

 

 芽依の情報だと、先に女性だけが座り、後から男性が遅れてやってくるとのことだったが……

 早くも記憶違いは生まれ、雲行き怪しいスタートとなる。


 20代後半くらいと思われる男女が、2人一緒(・・)になって、ゆっくりとこちらへ歩いてきたのだ。

 男はこの暑い日とは思えないくらいに厚着で、頭には帽子を被っている。背中には大きなリュックが見えた。


 来た……“ヤツ”だ。

 俺達の2人きりの戦いが、とうとう幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ