第43話 “収穫”
コンビニの入り口前で突っ立っていた俺に、芽依からの着信が鳴る。
嫌な予感しかしない……俺は即刻電話を取った。
「芽依か!? どうした!?」
「……そうよ。私よ。私の携帯から掛けてるんだから、私に決まってるでしょ」
「──ん?」
「あのさぁ、私最近ダイエット中でして……ご飯そんなにいらないから、パスタサラダとかにしてくれない?」
なんだ……電話かけてきたのは飯の話かよ!!
第一、そんな話で電話かけてくるなよな!! こっちがどれだけ不安に思ったことか……
俺は電話越しで芽依を怒鳴りつけた。
「何かあったら連絡しろって言ったろ? めちゃくちゃ焦ったじゃないか!!」
「何ムキになってるのよ。こうして用があったから連絡したんだけど。ちょっとは落ち着いてよ、誠人」
「うっ……」
確かにこれも用事っちゃ用事か。俺が神経質になり過ぎていただけ……
何はともあれ、芽依が無事でよかった。
もしかしたら犯人がこのコンビニを利用するかもしれないし、先程の違和感の原因も探りたかったところだが……
今の俺にそんな余裕はない。急いで買い物を済ませ、全速力で芽依の元へと戻る。
「はぁ……はぁ……買ってきました」
「ありがとう。別にゆっくりでいいのに」
「いや……よくよく考えたら心配でさ」
「大丈夫よ。まだ公園には人がいるし」
だいぶ減ってはきたが、それでもまだ公園内に人はいる。単なる俺の気にしすぎだったのかもしれない。
けれど、一度不安になってしまったら、気が気でなかったんだよな……
・・・
──それから1時間が経過し、10時を過ぎた。
徐々に人だかりは消えていくも、完全にいなくなってはいない。まだ人の話し声などは聞こえるレベルだ。
さすがに俺らにも、疲れが見え始めていた。
正確な時間までもか、それが今日かすら分からないのだから。
これが何日も続くのかと思うと、正直きつすぎる。そう考えた俺は、一種の賭けに出ることにした。
「芽依、ごめん。ちょっと気になることがあるから、一旦この場を離れるぞ」
「あら……さっきはあんなに心配してたのに、今度は自分から行っちゃうんだ?」
「いつまでもこの状態を続けたら辛いだろ? そのためだ」
「うん、分かってる。ほんの冗談よ」
分かりにくい冗談なことだ。そんな真顔で言われたら、判別もつかないぞ。
だが、芽依がまだそんな冗談を言える余裕があることに俺は驚いていた。
本当にタフで、根性ある女性だと改めて痛感する。
「もうよっぽどなことじゃない限り、電話はしないでくれよ?」
念を押すように、芽依にしつこく言った。
またさっきみたいに、たいした用ではない連絡でもされたら、たまったもんじゃない。
「分かってるわよ。また誠人に怒鳴られたくないもの」
「あぁ、俺も怒鳴りたくない。頼むよ」
俺はこの1時間の間、コンビニを見た時に覚えた違和感について、ずっと考えていた。
しかし、いくら考えたところで、答えは出てきやしない。
やはりこの目でよく確かめなければ、何も生まれてくるわけがなかったのだ。
俺は先程と同じ手法で、スマホを片手に握りしめたまま、コンビニへと近づく。今、犯人が来ないことだけを願いながら。
再びコンビニが見える位置まで辿り着くと、やはり先程と同様の違和感を覚える。
「さっきと同じだ。何だろうな……やっぱり変だ。どこかが違う気がする……」
俺は目を瞑り、今一度記憶を呼び醒ます。
悪夢の再現を、頭の中で行っていった。
まず右の公園を見た俺は、次に左を見たはずだ。
見えたのは喫茶店……そして、コンビニ……
俺はコンビニに重点を置く。
確か、最初にコンビニ名を見た気がするな。
そのコンビニは、よく見かける大手チェーン店だった。
そして、その下には広告……広告!?
何かを察した俺は、ここで目を見開いた。
違和感の原因を突き止められる気がしたのだ。
俺が注目したのは、コンビニの窓の外に張られていた“広告”である。
俺は現実世界の、目の前にあるコンビニの広告を再度見直した。
「──そうか!! 分かったぞ!!」
そこで俺はようやく、その違和感の原因を見つけ出す。
張られた実際の広告には、こう書かれていた。
『ご当地フェア開催まで──あと1日』と。
その広告はとても控えめで、小さく作られていた。
きっとまだフェアは予告の段階のため、客に勘違いされないためなのだろう。
“あと1日”の“1”の部分は、カウントダウンできるように、簡単に剥がせそうな作りになっている。
この“広告”が夢と現実では異なっていたんだ。
俺が見た悪夢でのコンビニの外側は、でかでかとご当地メニューを使用した商品の広告が張ってあった。
なぜなら──
このフェアはすでに開催されていたからだ。
そして、肝心なところはそれだけではない。
その広告を強調するように、別の赤の張り紙がその上に堂々とくっついており、そこにはこう書かれていたのを覚えている。
『本日より開催』──と。
今、俺が見ている広告は
『ご当地フェア開催まで──あと1日』
即ち、事件が起こる日にちは──明日の夜だ!!
これだけ広告のサイズが違うんだ。決して見間違いなんかじゃない。
「よし、やっと詳細が掴めたぞ。早速、芽依に報告しなきゃな」
今まで何ひとつ見つからなかった手掛り。
ようやく光が見え始めた気がする。俺は大きな収穫を得た。




