第42話 “SOS”
気付けば日も落ち、辺りは暗くなり始めていた。
俺らは隣のベンチに移動し、犯人と被害者となる女性を待つ。
日時が分からないため、俺達はただひたすらに待つしか手段がなかった。
日曜日で人が多かったということもあってか、夜になっても公園には、それなりに人はまだ残っている。
「これだけ人がいたら、もし犯人が来ても犯行に及ぶことはないかもしれないわね」
「そうだな。俺達が見た夢は、公園には誰もいなかった。時間帯が違うのか……それとも別日か……」
事件が起こる日は、今日ではない別の日なのかもしれない。
ニュース等で、この公園で殺人が起きたことは報道されていないため、過去の出来事でないのだけは言い切れる。
「こうしてずっと待つしかないのも退屈だな」
「そうね。端から見たら、ベンチに居座り続ける私達が怪しい連中かも」
こんな思いは散々してきた。何度、白い目で見られたことか。
ある意味これはもう慣れっこだ。あまり喜ばしいことではないが……
『ずっと集中していても疲れが溜まるだけ』──そう芽依は考えていたのか、待ちぼうけの中で雑談を始めた。
「そう言えば誠人。あれからどう? “ゲンさん”を見たりしてない? もしかしたら特に誠人は、目を付けられてるかもよ?」
「.……ゲンさん?」
「あぁ、誠人は知らないんだった。“現田刑事”のことよ。勇次が勝手にアダ名を付けたの」
「ゲンさんって、現田さんのことか。確かに……お似合いな名前だな」
現田刑事に対して持っていたイメージは、まず見た目からして、いかにも昔ながらの人って感じだった。生真面目で、古風な人と言えばいいのかな?
別に最近の流行りに合わせるのが、正しいわけではないのだけど……なぜだか、勇次が付けた『ゲンさん』のアダ名はしっくりとくる。
「あまりにも誠人の事情聴取が長いもんだから、勇次とそんな下らない話ばかりしてたわ」
「あの時の勇次が……か。あんなに気落ちしてたのに、ふざける元気があったんだな」
「いえ……今考えると、わざと明るく振る舞ってたのかも。私がショックを受けているんじゃないかと、元気づけてるつもりだったのよ。人のこと構ってる余裕なんてなかったはずなのにね」
まさしく勇次がやりそうなことだ。
本当は一番自分がSOSを出さなきゃいけなかったのに……その状況でも他人の心配をしてたなんて。
でも、その危険信号に俺は気付いてあげられなかった。
そこで俺が声をかけてあげていれば、もしかしたら今頃勇次は……
どうも芽依といると、自然と勇次の話が出てきてしまう。
何だか急に寂しくなってきたな……完全に勇次ロスだ。
・・・
それから数時間がたった。
時間は夜の9時を越えている。未だに公園内に人がいなくなることない。
ここは人気の公園だ。中には夜から訪れる人達もいる。
「さすがに腹減ったな……コンビニで何か買ってこようか?」
「そうね……これだけ人もいたら、まだ平気でしょうし。悪いけど、何か買ってきてくれる?」
「あぁ、行ってくるよ」
俺はこの場を芽依に任せて、公園外のコンビニに行くことにした。
何かあったらすぐ戻れるように、片手にスマホは持ったままだ。いつでも電話を取れる準備をしている。
俺は公園の外に出て、反対側の道路に行くために横断歩道まで歩いた。
信号は赤だったため、俺は立ち止まる……が、ふとそこで俺は気付いたのだ。
自分のこの選択は、大失敗だったのではないかと。今更ながら後悔をし始めていた。
俺は紳士のつもりで、男の自分が買い出しに来たつもりだったのだが、事件現場となる場所に、芽依を残してきてしまっていることになる。これは間違いなく危険な行為だ。
それを知った俺は、信号が変わったと同時にダッシュでコンビニまで向かった。
「あれっ……?」
ノンストップでコンビニの前まで到達するも、何か違和感を覚え、俺は一旦スピードを緩める。
何だろう……何かは分からないけど、どこかが俺の見た夢と、このコンビニは違う気がする。
記憶を呼び覚まし、夢との比較をいざ、始めようした──その時。
俺の手にするスマホが突然、震え始めた。
「電話!?」
俺はすぐさまスマホの画面を見る。
その電話の主は──
「芽依からだ!!」
1人取り残された芽依だった。
まさか芽依に何かあったのか!?
俺は不安な気持ちで、即刻電話を取る。




