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星が墜ちた夜から  作者: Guru
5章 正義のヒーロー
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第39話 “デート”

 翌日の日曜日。午後15時頃。


 芽依から指定された公園に、俺は1人で来ていた。

 この公園は、どうやら芽依の住む家の近くにあるらしい。

 即ち、ここは神奈川県。俺の住む埼玉県からはまぁまぁ遠い距離である。


 何やら芽依は用事があるようで、夕方頃からなら合流できるとのこと。それまで俺は1人で現場を確認するつもりだ。


 一部分しか見ていない夢の段階では分からなかったが、この公園、実は有名な公園だった。

 近隣に住む人達なら、誰もが知ってるであろうレベルだ。


 桜が咲く春には、花見客で溢れかえる。

 今は時期を過ぎたが、それでも今日は日曜の昼間ということもあってか、多くの人で賑わっていた。

 家族連れや、カップルが公園内をのんびりと楽しんでいる。

 こんなところで1人ぼっちで歩く俺は、完全に浮いていることだろう。


 失敗した……芽依が来てからにすればよかった。めちゃくちゃ恥ずかしいな、これ!


 俺は景色も何も楽しむことなく、公園内を突き抜ける。

 元々楽しむ目的ではないが、せっかく来たんだ。それくらいはいいはずだ。

 しかし、俺の心にそんな余裕がなかった。ひたすらに目的の場所を探す。



「あった! あのベンチだ」


 10分近く歩き回った頃、ようやく俺は事件の起きる公園のベンチを見つけた。

 ベンチは公園の隅の方にあり、カタカナの“コ”の形を描くように3つ並んでいる。

 ベンチの隣には街灯が立っているが、場所自体が隅っこのため、夜になって灯りが点こうとも、そこまで明るくはなさそうだ。


 一度ベンチを確認したいところだが、まだこの時間帯では人が多い。ベンチには数人の人が座っていた。


 実際あの事件が起きるのが、何時間後かは分からないけれど「そこのベンチで殺人事件が起きる」……と伝えたら、今座ってる人はどんな気持ちになるだろうか……

 

 分かってる。そんなことは、口が裂けても言えない。冗談だ。


 とりあえず俺は、自分が夢で見た公園の外を確認することにした。

 ここから数メートル先に、夢の中でも使用した公園の出入口がある。



「芽依が言ってた話の通りだな。現場はここで間違いなそうだ」


 俺が公園の出口から外を眺めると、そこから見える景色は、悪夢で見たものと全く同じものだった。

 目の前の車道を越えた奥の所には、喫茶店、コンビニが並んでいる。


 それにしても、あのベンチの少し先は、こうして人通りがありそうな、それなりの道にあたるわけだ。

 犯人はよくこの場所で犯行に及んだものである。

 考えてみれば、刺された女性の悲鳴も聞こえてこなかった。

 顔見知りの犯行か? その辺は、芽依に聞けば詳しく分かるかもしれない。


「さて、後はどうするかな」


 早く来たはいいものの、俺は完全に時間を持て余していた。芽依が来るのに、あと何時間かある。

 朝昼兼用でご飯を食べていたので、俺は少しお腹が空いていた。


 とりあえず適当にご飯でも食べて、芽依を待つことにするか。




・・・




──夕方17時過ぎ。

 俺は芽依と公園にて合流した。

 何だか縁起が悪い気もするが、あの例のベンチの前で待ち合わせだ。


「お待たせ! 誠人」


「あぁ、だいぶ待ったよ。まぁ俺が勝手に早く来てただけなんだけど」


 まだ夕方でそれなりに人は公園内にはいたが、ちょうどあのベンチは空いている。俺達はベンチに腰をかけた。


「はい、誠人の分。コーヒー飲めたっけ?」


 気が利く芽依は、両手に一つずつ、計2つのアイスコーヒーのカップを手にしている。

 最近気候も徐々に暖かくなり、少し蒸し暑いくらいだった。

 ちょうど喉も乾いてたことだし、助かるところだ。


「サンキュー。ブラックじゃなきゃ飲めるよ」


 俺は芽依からコーヒーを受け取った。


「そう、ならよかった。たっぷり入れといたからさ」


 公園のベンチに座る、男女の大学生。

 きっと端から見たら、デート中のカップルにでも見えてることだろう。

 もちろん俺達はそんな関係ではないが……


 そう考えたら突然、俺は緊張してきてしまっていた。

 いつもは隣にだいたい勇次がいるし、中々芽依と2人きりになることはない。

 でも、これからはこういう状況が増えるかもしれないわけだ。


 余計なことは考えるな……

 慣れろ……俺。緊張するな俺。


 考えれば考えるほど、俺は焦り、余計に喉が乾いていた。

 芽依に貰ったアイスコーヒーを、しきりに飲む。

 俺はどこを見てるわけでもなく、下を向いていると、芽依が俺の顔を覗き込むようにして、こちらを見てきた。


「おいしい? 誠人。私があげたコーヒー」


「あぁ、おいしいけど……」


「そう。誠人のにはたっぷり入れてあげたからね……“睡眠薬”を」


 思わず俺は飲んでいたコーヒーを吹き出した。


「──睡眠薬だって!?」


 驚く俺をよそに、芽依は薄手のジャケットのポケットから取り出したメモ帳に何かを書き込んでいる。


「疑うことは無し……と。そうよ。睡眠薬よ。驚いた?」


「驚いたって……何てものを入れてるんだよ!!」


 俺は地面に何度も唾を吐いた。

 今更吐き出そうとしたところで遅いのだろうけど、無意識のうちにやっていた。


 しかし、この俺の行為もすべて“無意味”のことだったようだ。

 芽依は俺に真相を明かす。


「違うわよ……今じゃなくて、入れてたのは“犯人”よ。きっとこのコーヒーカップの中に睡眠薬を入れて、女性を眠らせたんだわ」


 俺は店の柄の入ったコーヒーカップを持ち上げ、透明部分の辺りから中身を確認した。


「びっくりした……今の話じゃなく、犯人の手口の話なわけね。本当に薬が入ってるのかと……」


「なわけないでしょ。犯人になりきって、試してみたの。誠人、これはのんびりデートなんかじゃないからね。もう始まってるのよ。私達と悪夢の戦いは!!」

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