第38話 “言い訳”
残された俺と芽依は、2人で作戦会議を行った。
お互い寂しい気持ちもあったと思う。しかし、今はやることをやらなければならない。
何としてでも、気持ちを切り替えるしかなかった。
「よし、俺達だけでも事件を防げるように頑張っていこうか!」
「えぇ、そうね」
思い返してみれば、決まっていつも勇次が場を仕切り、率先して話を振っていた気がする。
ここは勇次に代わり、俺がやらないといけないな。
「それで、芽依が見たのは公園で間違いなかったんだよな? 俺の悪夢は公園の外から始まったんだけど」
「うん、私の近所の公園だったの。だから場所ははっきりと分かってる」
これは有力な情報だ。
正直、公園だけではヒントが少なく、絞り込むのはかなり難しいことだと思っていた。
「本当か!? それなら場所は問題なしじゃないか!」
「えぇ、場所はね……」
「ん? どういう意味?」
芽依は言葉を濁した。苦い表情で、その言葉の意味を告げる。
「あまりにも近所だったもので、これが悪夢と気付かなかったの……だから、つい時計を見ることをしなかった。そのせいで、時間や日にちが全く分からないのよ……誠人は、何か分かったりしないかな?」
最悪だ……
やはり、ずっと芽依や勇次に頼り続けたツケが、ここで来てしまった。
芽依が出来ない時こそ、カバーすべきはずだったのに……なんて俺は使えないんだ……
「それが……ごめん。俺も時間が分からなかったんだ……」
「そう……それは困ったわね……」
俺は言い訳とばかりに、左手にはめた時計を芽依に見せる。
「見てくれよ! これ! 買うには買ったんだ! でも、夢の時はなぜか着けてなかったんだよ!」
やはり俺の勘違いなんかではなく、俺は先日時計を購入していた。
夢の話ではなく、間違いなく現実の出来事だ。
買おう買おうとずっと思っていたが、実際に購入に至るまで、だいぶ時間を要してしまった。
引っ越し等で金欠となっており、時計を買うお金が無かったのだ。
これでもお洒落はそれなりにしたい大学生である。安っぽい時計もしたくない……
そんなジレンマから、中々踏ん切りが着かなかった。
それにしてもなぜ、悪夢の中で俺は時計をしていなかったのか?
せっかくこれが夢の出来事だと気付けたのにも関わらず、時計をしていないのでは意味がない。
俺は芽依に疑問を投げ掛けた。
「もしかして芽依は、寝るときも時計をしてるのか? じゃないと夢の中でも出てこないとか……」
「そんなわけないじゃない。寝るときは外すわよ。たぶんだけど、まだきっと買ったばかりで、時計を着けているイメージが誠人自身にないのよ。時間がたてば、夢でのイメージも変わるかもね」
「マジか……買っただけじゃだめってわけか……」
理由は何であれ、嘆いても仕方がない。
こんな時、悪夢の一番の先輩である勇次がいれば……
──おっと。これは今、一番の禁句だ。口に出せば、間違いなくお互いの士気が下がる。
芽依も同じことを思っているだろうが、絶対口には出さないはず。
勇次は俺らを悪夢の現場に辿り着かせないためか、今回の事件の話について一切情報を出さなかった。
きっと勇次だって、俺達と同じ夢を見ていたはずなのに……
けれども、それは俺達の身を守るためであって、決して嫌がらせのつもりではないことは、十分理解しているが……
ただでさえ俺達は3人の状態でも、亡くなった智の分の夢が欠落している。
それに加え、勇次まで抜けるとなると、悪夢を補完するのは、困難を極めることになりそうだ。
「とりあえず場所は分かってるわけだし、明日行ってみる? 今日がその日だったら、最悪だけど」
芽依の言う、その最悪な事態だけは避けたいところだが……こればかりは祈るしかないな。
明日は日曜日。大学もなく、好都合だ。
まずは一度下見に行くべきだろう。そうすれば、何か分かることがあるかもしれない。
「そうだな。明日、その事件が起きる公園を見に行こう」
不安は募るが、俺と芽依は明日、その公園に向かうこととなった。




