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星が墜ちた夜から  作者: Guru
4章 悪循環
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第33話 “決断”

 すべてに疑惑の目を向けられている気がして、次第に俺の口数は少なくなっていく。


 それに気付いた現田刑事は、わだかまりを消そうと、まず自分のことから話を始めてくれた。


「まぁ……あれだよな。信用できないよな? 私のことも」


「──えっ?」


「刑事の私が、なぜあの場にいたのか……そこに疑問を感じているだろう? お互いの信頼関係が築けなければ、話してくれるわけないよな」


 そうか……もしかしたら俺は、そこにずっと引っ掛かっていたのかもしれない。

 もちろん共犯と疑われるのは困った話だったが、それよりもこちらの方が気になっていたんだ。


 俺らを疑いつつ、自分だってその場にいたじゃないか。それだって十分おかしな話だ。

 更に、俺達が危険な目にさらされても、一向に助けてくれる気配はなかった。

 これでは刑事さんの方こそ、怪しいことだらけだ。


 現田刑事が先に心を開いてくれたおかげもあってか、俺は正直に自分の心情を告げることができた。


「実を言うと、まさにそこに疑問を感じていました。それともう一点。刑事さんなら何ですぐに助けてくれなかったのか──とも思っています」


「なるほど……おっしゃる通りだ」


 現田刑事は、やれやれと言った様子で、右手で頬を掻いた後、あの場にいた理由を長々と説明する。


「私がなぜあそこにいたのかというと、あの銀行から、以前から怪しい人物が銀行内をうろついていると言う相談を受けていてな。それで私は──」



 刑事さんのしばらく続いた、長い話をまとめると……

 どうやらあの犯人グループは、銀行強盗をするための視察として、何度も銀行を訪れていたそうだ。

 防犯カメラを何回も確認したり、銀行の見えない奥の方を仕切りに気にしたりといった具合に。


 そして、ちょうど今日が、銀行から相談を受けた警察が見に来ていた、その日だったらしい。

 中でも仕事熱心な現田刑事は、1人居残り、作業をしていた。

 ようやく一段落し、警察署に戻ろうとしたまさかのタイミングで……あの犯人達が銀行内に突入したというわけだ。


 内心、現田刑事も俺らのように予知夢を見ているのではないかとも考えたが……

 複数の強盗犯に対し、刑事は現田さん1人のみだった。仮に事前に犯行を知っていたのだとしたら、明らかに手薄すぎる。


 やはり、あのきっかけとなった“流れ星”は、俺達4人の大切な思い出。

 部外者が俺達の夢に介入することはないのだろう。現田刑事があの場に居合わせのは、単なる偶然だったみたいだ。


 それを思うと、あの犯人達は相当運が悪いというか、何というか……

 神様は、しっかりと見ているってことなのか?


 日頃の行いが命運を分けたとばかりに、俺達の方は反対に、運がよかったということになる。

 現田刑事がいなかったら、芽依は人質として誘拐されていたかもしれないんだ……

 もうすべてが奇跡としか言いようがない。



「刑事さんがあの時、現場にいた理由は分かりました。とてつもなく凄いタイミングだったみたいですけど……でも、それならどうして早く助けてくれなかったんですか? それまでに俺らは随分と危険な目に遭った……」


「それは君達が勝手な動きをしてくれたからだろう?」


「えっ? 俺達のせい?」


「ある意味な。まず何よりも守らなければならないものは、人の命だ。優先するのは銀行のお金ではない。ましてや、今の警察の力をもってすれば、銀行強盗が逃げ切れることなんて、まず不可能だからな。逃走後に捕まえればいい」


 やっば……そう考えると、俺達めちゃくちゃなことしてたわけか……


「だが、キミのお友達の行動には驚いたよ。突然1人堂々と銀行のど真ん中を歩き出したのだから。呼び止めて見たけど、聞く耳を持たなかった」


「あっ……もしかして、あの時に声をかけたのって……」


「それは私だよ。なぜだか彼は自信に満ちていた。先に起こることを予測してるかのようにな……私は呆気にとられてしまっていた……ここは反省点だ」


 そりゃそうだ。こっちは予知夢として見てるんだから。

 勇次が1人飛び出した、あの時。後ろの客の中から声が聞こえていた。


『危ないぞ! キミ! それ以上近づくな!!』


──あれは現田刑事の声だったんだな。

 

 現田刑事は、勇次のあの謎の度胸と奇妙な出来事に目を向ける。


「彼にどんな根拠があったのかは分からないが、驚いたことに、本当に犯人が持っていた拳銃は偽物だった。あれほど遠くの距離からでは、刑事の私にすら判別はつかなかった。何者なんだ君達は……」


 やはり、そういう話になってくるか……

 まずいと思った俺は、話を誤魔化した。


「それで、そこまでじっとしていたのに、今度はどうして突然、犯人逮捕の行動に出たのです?」


「それは犯人が人質をとろうとしたからだ。今度は人命が絡んでくる。見過ごすわけにはいかない……どうだい? これで諸々理解はしてくれたかな?」


 色々と偶然は重なったが……

 確かにすべての辻褄は合う……俺は頷くしかなかった。


「──はい……理解できました」


「君達の勇気には感謝しているんだ。いくつも危険な行動を取っていたが、結果として犯人をその場で捕まえることができた。だが、私は未だに納得ができていない点がある。話は戻るが……なぜ、彼は犯人の持つ拳銃が偽物だと分かった?」


「それを……俺に聞くのですか? 彼……勇次に直接聞けばいいのでは?」


「彼のあの度胸……並々ならぬものを感じた。鋼の意思があるに違いない。しかし、それは時として危険なものと成り得る……だから、あえてここにキミを呼んだ。冷静に物事を判断できていそうなキミを」


 要するに、勇次はサイコパスってか!?

 勇次に聞いたところで、まともな答えは返ってきそうにないと……

 まぁ確かにあの行動じゃ、そう思われても仕方がないか。

 

 それにしても、この現田という刑事。

 随分と内情を話してくれるんだな。腹を割って話してくれているというか……

 決して脅しにかけて、聞き出そうなんてことはしない。

 常にこちら側に立って考えて、ものを言ってくれる……もしかしたら、この人なら……



『絶対に話すもんか』と、最初はそう決めていたのに…… 

 俺には勇次と違って、鋼の意思は持ち合わせていなかったのか、あの“悪夢”の話について話すことにした。俺は──決断を下す。 

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