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星が墜ちた夜から  作者: Guru
4章 悪循環
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第32話 “背後”

 このままではまずい……芽依が人質として強盗達に連れていかれてしまう。

 何をされるか分かったもんじゃない。

 ここはもう、命に替えてでも芽依を救い出さなければ。


 きっと勇次も同じことを考えていたのだと思う。

 とにかく気を付けなければならないのは、拳銃を持つ強盗のボスだ。

 心拍数は高まり、自分の胸の鼓動が聞こえるような気がした。


 タイミングを見計らい、決死の覚悟で飛び出そうとした──その時。



 ボスの後ろにいたガタイの大きな一般客の男性が、突如として動いた。

 その動きが目に入った俺と勇次は、思わず足を止める。


 すると、次の瞬間。男性はボスの背後から、拳銃を手にする右手に手刀をかました。

 不意をつかれたボスは、どうすることもできず拳銃を落としている。

 拳銃は床をすべり、こちらに運はあったのか、男性の足下付近で止まった。


「誰だ!? 余計な真似をしやがるのは!!」


 ボスは振り返り、上着の内ポケットからナイフを取り出す。

 さすがはリーダー格。用意周到だ。武器の仕込みを怠らない。


 怒り狂ったボスは、躊躇なく男性を切りつけにかかった。

 しかし、その男性は物怖じしない様子で、完璧に動きを見切り、ナイフをかわす。

 そして、ボスの伸びた右腕を掴み、そのまま一本背負いを決めたのだ。


 鈍い音と共にボスの全体重が床に乗り、振動がこちらにまで響き渡る。

 ボスはその衝撃により、今度は手にしたナイフを床に落とした。何が起きているのか、さっぱり事態を把握できていないことだろう。

 

 更に、男性はその後の動きも迅速で、床に落ちていた拳銃を握り、ボスに銃口を向けた。

 

 明らかに只者ではない……

 一体、この男性は何者なんだ!?

 恐らく銀行内の全員が、そう思ったところで、男性は声を張り上げながら身分を明かす。



「警察だ!! 銀行強盗の容疑にて、現行犯で逮捕する!!」


 驚いた俺は、自然と声を出してしまっていた。


「──警察!?」


 何でこんなところに都合よく警察が……


 その理由を明らかにしたいところだが、今はそれどころではない。

 男性は懐から警察手帳を取り出して開き、犯人に見せつけている。

 どうやらはったりでもなく、本当に警察官──刑事のようだ。


 刑事はひとまず芽依を救出させる。


「そこの女性。強盗犯から離れなさい」


「はい……」


 芽依に近づいていた2人の強盗は観念したのか、芽依に余計な手出しはしなかった。


 芽依がこちらへ近づいてくる。俺と勇次は芽依に駆け寄った。


「芽依!! 怪我はないか!?」


「……えぇ、大丈夫。私は無事よ」


 まさに一瞬の出来事とは、この事を言うのだろう。

 一般客の中に紛れていた刑事のおかげで、俺達は難を逃れ、3人の強盗犯は逮捕される形となった。




・・・



 このあと銀行はすぐに立ち入り禁止となり、数台のパトカーや、多くの警察関係者で溢れた。


 俺らは事情聴取のため、その場に残らされる。

 あまりに衝撃的な出来事すぎたのか、俺達の会話は弾まない。


 特に芽依が心配だ。恐怖のあまり、ショックを受けてなければいいのだが……


 俺らが無言で棒立ちしていると、先程の刑事がこちらへと近づいてきていた。


「君達、ちょっといいかな? 私の名前は“現田(げんだ)”。警部補をしている。詳しく話を聞かせてもらいたい。署まで来てくれ」


「はい……」


 無論断れる訳はなく、俺達は刑事の指示に従うしかなかった。

 俺は人生初の事情聴取を、警察署の中で受ける事となる。




・・・




 場所は警察署内にある、6畳ほどの狭い部屋で行われた。中にはテーブルと椅子だけが置かれており、部屋の中には2人の刑事がいる。

 

 俺達3人は別々に事情聴取が行われるわけだが、なぜか俺のところには、現田刑事が来ている。

 俺は緊張しっぱなしでソワソワしていると、心の準備もままならないうちに、事情聴取は始まりを告げていた。


「早速だが、始めさせてもらうよ。まずは、キミの名前と職業は?」


「俺──いや、私は知念 誠人と申します。大学生です」


「いつも通りの口調で大丈夫だ。そんなに緊張しなくてもいい」


「は、はい……」


 そう言われても無理だ……

 この現田という刑事……俺の対面に座っているが、とてつもない凄み(オーラ)がある。


 勇次と並んだ時に、勇次より背は高かったし、身長は180センチを優に越えているだろう。

 肌は黒く、坊主とまではいかないが、スポーツ刈りくらいの髪の短さ。

 恰幅のよかった強盗犯を、簡単に投げ飛ばすほどのガッチリ体型だ。

 刑事と知っていても尚、見た目だけでは怖いくらいまである。


 これでは事情聴取でなく、取り調べをされている気分だ。

 何でも自白してしまいそう……追い込まれる犯人の気持ちがよく分かる。



「キミはあの銀行で何をしていたんだ? どうやら友達2人を引き連れていたみたいだが」


「俺は保険のことを聞きに、銀行に。別支店ですが、元々あの銀行を利用していたんです」


「その用件を……わざわざ3人で?」


「はい。そうです」


 何だ……やはり疑われている気がする……

 確かあの人も、ずっと銀行内にいたんだ。

 俺達の動きも、全部把握しているのだろう。


 俺がびくびくしてるのが見て取れたのか、現田刑事は俺に優しい言葉を投げ掛ける。


「別にこれは取り調べではない。キミには拒否する権利もあるんだ。私としては事件について、知っていることを話してくれれば助かるのだが……それだけは覚えていてくれ」


 これが取り調べではないだと?

 嘘つけ! 俺達も共犯なんじゃないかと、疑っているんだろ!?

 どうしたらいいものか……これは面倒なことになったな。

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