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星が墜ちた夜から  作者: Guru
4章 悪循環
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第31話 “歯車”

 犯人にもう1人仲間がいた!?

 よく考えてみれば、それは安易に想像できることだったのかもしれない。

 犯人からしたら、中にいる者を外に逃がしてはならない……出入り口に必ず1人は配置するであろうことを。


 しかも、後から現れた最後の1人は、本物の拳銃を持っている。


「よく“あれ”を偽物と見抜いたな。そう簡単にいくつも拳銃は用意できるものでもなくてね……とりあえず、そこの学生さん。俺の仲間を離してもらおうか」


 後から現れた恰幅のいい強盗犯は、明らかに勇次を見て言っていた。

 服装は2人の強盗犯と全く同じであったが、ドスの利いた声色で、この人物も男であろうことが想像できる。


 勇次はおとなしく言うことを聞き、寝技を解いた。

 そして、立ち上がって両手をあげる。


「よし、それでいい。俺達は別に命を奪うつもりはねぇ。金さえあればそれでいいんだ」


 完全に形勢逆転だ。

 しかし、これ以上無理はできない。

 先程まであれだけ強気だった勇次も、降参状態である。


「今のやり取りの間に、十分猶予はあったはずだ。金の準備はできているだろう?」


 恰幅のいい男は、数メートル先にいる受付女性に話しかけていた。

 すると、奥の方から銀行の責任者らしき男性スタッフが顔を出す。

 そのスタッフはゆっくりと手前まで歩み寄り、声を震わしながら要望に応じた。


「準備……できております」


「おい、おまえ。取りに行け」


「了解です」


 この男は3人の中でもリーダー格、ボスなのだろうか。

 芽依の近くにいた、背の高い男を顎で使っている。

 更に、恰幅のいい男に対して2人とも敬語で話しているため、犯人達の関係性が何となく透けて見える。


 背の高い男が、自分達が用意していたバッグを銀行員から受け取ろうとするも……

 強盗犯のボスは警戒したのか、背の高い男を呼び止める。


「いや、待て。何か仕掛けてあるかもしれねぇな。おまえは一旦下がれ」


「……はい。分かりました」


 見ていない裏で、銀行員達が何をしているのか分からない。

 ましてや、本当に本物の金が入ってるのかどうかすら怪しい。

 その確認のために、ボスは別の者に取りに行かせることを思い付いたようだ。


「そうだな……」


 きょろきょろと辺りを見渡し、ボスは1人の女性に白羽の矢をたてる。

 銃口を向けて、脅しながら指名した。


「おい、そこの女」


「わ、私ですか……?」


「そうだ。おまえ以外に誰がいる」


 たまたま背の高い男の近くにいたことが、災いしてしまったのかもしれない……

 指名された人物は──芽依だったのだ。


 芽依はそっと一歩前に出た。

 ボスは芽依に命令を下す。


「バッグの中を開けて、金を確認しろ。それに、中や外に何か怪しいものがないか探すんだ。発信器でも着いてるかもしれねぇ」


「……は、はい」


 芽依は重い足取りで銀行の責任者に近づき、バッグを受け取った。

 そこでまた、芽依に指令が入る。


「その場で空けろ。何も怪しいことがないと分かったら、こちらへよこせ。時間は……1分以内だ」


「……はい」


 芽依は言われるがままに、目を瞑りながらバッグを思いきって開けた。

 犯人に『何かある』と言われると、どこか警戒していた部分があったのだろう。しかし、開けたところで特に何も起きる気配はない。大至急、バッグの中を確認する。


 遠くからでも、芽依が冷や汗をかいているのが分かった。

 それでも芽依は、時間に追われ焦りつつも、しっかりと中身を確認しているように思える。 

 俺は芽依が余計な真似をしないかだけが心配だった。


 今は自分の命を最優先でいい……ここで変な正義感は要らないぞ……芽依……


 無念にも、俺と勇次は固唾を飲んで、ただ芽依を見守ることしかできない。

 


「──終わりました。特に何もおかしいものはありません。お金もしっかり入っています」


 芽依がバッグの中身を確認し終えた。

 実際のところは、1分は過ぎていた。恐らく、その時間が大事だったのではなく……それは『とにかく早くしろ』という、意味合いが込められていたのだと考えられる。


「そうか。よくやった。バッグをこちらへ持ってこい」


 ボスは芽依を労った。芽依はバッグを手にし、ボスの元へと一歩ずつ近づいていく。

 芽依がボスの目の前まで辿り着き、バッグを手渡そうとした──次の瞬間。

 ボスは思いもよらぬことを言い始めた。


「冷静な女だな。この状況下でも、取り乱すことなく淡々と仕事をこなす……こいつは使えそうだ」


「──えっ?」


「この女は人質として連れていく。おまえ達、この女を取り抑えろ」


「「はい、分かりました」」



 バカな……芽依が人質として拉致される!? なんだこの展開は……

 俺の悪夢にはもちろん、勇次と芽依の方にもこんな流れは全くなかったはずだ……


 もはや俺達の悪夢は、予知夢として何の意味も、もたらさなくなっている。

 一度狂った歯車は、取り返しのつかないところまで来てしまっていた。

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