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星が墜ちた夜から  作者: Guru
3章 知念青年の些細な事件簿
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第24話 “救世主”

 俺は勇次にバイトのシフトを聞いた。

 芽依と行ける日にちを合わせ、翌週の火曜の夜に店へ行くことになった。もちろん勇次には内緒で。


 俺には芽依達と違って、まだ悪夢の日にちを割り出すことはできない。

 とりあえず様子見だ。視察とでも言うべきか。




・・・




──火曜の夜。

 勇次のバイト先、居酒屋『はっちゃん』にて。


 外で待ち合わせしていた俺と芽依は合流し、一緒に店内へと入った。


「いらっしゃいませー! お客様、何名様でしょうか?」


 元気のいい声で、店員さんが俺達を出迎える。ここは運良く、勇次とは別の細身の男性店員さんが対応してくれた。

 

「2名です」


「かしこまりました。席にご案内しますね」


 ばったり入り口で勇次と出くわすものなら、俺達を追い返し兼ねない。まずはよかった。

 何事もなく、居酒屋内に潜入する。

 

 俺は歩きながら店内を軽く見渡した。

 間違いない。夢の中と同じ景色だ。

 平日の火曜の夜だというのに、随分と店内は繁盛し、賑わっているように思える。


 席に案内され、椅子に腰かけた俺達は、早速呼び鈴を押す。


「とりあえず、何か適当に頼むか」


 メニュー表を見ながら待っていると、間もなくして女性スタッフが注文を取りに来てくれた。


「ご注文ですか?」


 やって来たのは、ショートカットの可愛らしい女の店員さん……この子だ!!


 この子が勇次の彼女となるはずの相手。

 恐らく勇次が一目惚れしたという、女の子だろう。


 俺は芽依にアイコンタクトを送った。

 芽依はまじまじと女の子を見る。

 そんなに見なくても……見定めているのだろうか。


 飲み物とつまみを数品頼み、女の子が去ったところで、俺らは感想を言い合う。


「確かに可愛らしい子だったな。勇次が一目惚れしたのも分かる気がする」


「そうね、あの子が勇次の彼女ね……意外だわ」


「いや、そうと決まったわけじゃないから!」


 ここに来て俺は必死の抵抗だ。

 実際にこの目で見たことにより、余計悔しさが増してしまっている。

 

「まだそんなこと言ってるの誠人? もういい加減負けを認めなさいよ」


「嫌だね。まだ分からないからな。俺の逆転勝利があるかもしれないだろ! それに人の事言うけど、芽依こそどうなのさ!?」


「私は…………」


 芽依は言葉に詰まった。

 そういえば芽依の恋愛事情を、面と向かって聞いたことがなかった。

 はっきし言って、芽依は美人だ。彼氏がいたって不思議ではない。


 しかし、ここ最近……あの悪夢の一件以来、俺らと会ってばかり。

 考えてみれば、何週も連続で俺らと週末を共に過ごしている。


 散々黙った芽依は、ぼそりと呟いた。


「……いたのよ。彼氏。私にも」


「──えっ?」


「でも別れちゃった。この悪夢の話をしたら、それ以降疎遠になっちゃってね……私のことが気味悪く見えたのかも……」



 これはやってしまった……

 何となくで聞いただけなのに、芽依を傷つけてしまった……

 思い出させてはいけない心の扉を、俺はこじ開けてしまったのだ。


 俺は悪夢を恨んだ。


 何なんだこいつは……芽依から大切ものを奪っていきやがって……


 許さないぞ、俺は。

 でも──今は悪夢より、何よりも自分の事が許せなかった。


 芽依が寂しそうな、辛い顔をしている……

 悪気はなかったとは言え、そんな顔にさせたのは何を隠そう、俺なのだから。


 何て声をかけてあげればいいのか、俺には分からなかった。だから、とりあえず素直に頭を下げた。


「その……ごめん」


「いいのよ。いつかは話すことだったし」


 嫌な空気が流れる。気まずい雰囲気が漂い続ける。


 だが、やはりここで“ヤツ”は現れた。

 俺にとってヤツは救世主──いや、まさに神そのものと言えるだろう。



「お待たせしました! お客様──って、えぇーーっ!! おまえら!! 何でここに!?」


──勇次だ。

 勇次が料理を運びに、俺達の席へとやってきたのだ。


 驚く勇次の姿を見た芽依は笑っていた。

 さすが勇次。本当に助かった。おまえはいつでも最高のタイミングで現れてくれる。


「驚いたでしょ? 勇次の働く姿を見たくてね。こっそり遊びに来ちゃった!」


「誠人の仕業だな? やけにしつこく俺のシフトを聞いてきてたのはこのせいか!」


「わりぃな。事前に言ったら断られると思ってよ」


「当たり前だろ! 恥ずかしいったらありゃしねぇよ!」


 すっかり店員であることを勇次は忘れ、大声をあげている。

 その弱味に付け込み、芽依は強気に出た。


「おやおや。今日は私達、お客様ですよ? お客様にそんな態度でいいのかなー?」


「くそっ! だから嫌だったんだよ!」


 捨て台詞を吐いて、勇次は踵を返す。厨房へと消えていった。



「あぁーおもしろかった。あの勇次の慌てっぷり!」


「だな! 最高だった。ドッキリ大成功だ」


 良かった。いつもの元気な芽依の姿だ。

 マジで今度飯奢るからな勇次。恩に着る。




・・・




 それから1時間半が過ぎた。

 視察と言いつつ、俺と芽依は普通に飯を食っている状況だ。これといってすることもない。


 お客さんもだいぶ少なくなってきている。

 ご飯時も過ぎ、ピークは去ったのだろう。


 少し暇になって余裕ができたのか、勇次は仕事中にも関わらず、俺達のテーブルへとやってきた。


「どうだ? 楽しんでるか? 2人だけの飲み会はよ」


「──勇次。大丈夫なのか? 仕事中に」


「まぁな。今は人も少なくなったし、平気だよ」


「なぁに? もしかして、嫉妬してるの私達に!?」


 芽依が勇次を茶化す。顔も赤く、少し酔っているのかもしれない。


「そりゃそうだろ。俺抜きで楽しみやがってよ。俺も仲間に入れろよ!」


 意外にも素直に認めた勇次に、芽依は驚いた様子だった。

 向こうは俺達と違ってシラフだ。テンションが違うのも当然のことかもしれない。


 そして、まさかのこの場面で、芽依は口を滑らす。

 それは勇次には『言わない』って約束だったのに……やはり酔っていたのだろう。芽依は判断を誤った。


「いいじゃない! それくらい別に! 勇次にはこれから彼女ができるんだから! 楽しいこといっぱい待ってるでしょ!」


「彼女……? 何の話だ?」


「め、芽依!!」


 勇次が俺の方を見る。

 その反応速度は、間違いなく光の速さを越えていた。


「どういうことだ!? 説明しろ! 誠人!!」


 やっべ~……どうしよう。これ……

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