表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星が墜ちた夜から  作者: Guru
2章 悪夢との戦い
14/76

第13話 “眠れる羊”

 久々に訪れた悪夢からの翌朝。

 俺は目を覚ますなり、早速スマホを手にした。

 昨夜見た夢をみんなに報告しようと、メッセージグループを開く。すると……


 昨日まで何もなかったはずなのに、すでに1件のメッセージが届いていた。

 それは芽依からのもので、俺はそのメッセージ内容に衝撃を受ける。



『おはよう。朝から暗い話になるんだけど、昨日私、悪夢を見たんだ。それは私と同じくらいの年齢の女性が、ビルから飛び降りる夢……最悪』



 思わず3回も読み直してしまった。


 どういうことだ……これは……

 俺も昨夜、似た夢を見たぞ……


 まさか俺達は、同じ悪夢を見ている!?


 俺は夢の記憶を忘れないうちに、すぐにメッセージを残した。



『おはよう。信じられないかもしれないけど、俺も同じ夢を見た。年齢は分からなかったけど、女性が飛び降りる夢だ』


 どうやら勇次はまだ寝ているみたいだ。

 メッセージを読んだかどうか判断できる、“既読マーク”がない。

 数分後、芽依から再びメッセージが届く。



『うそ? もしかして、私達全員が同じ夢を? 勇次はどうなのかな。勇次が見てれば、もうこれ確定ね……』


 2人なら、たまたま似たような夢を見たなんて偶然があるかもしれない。

 でも、3人なら間違いなく決まりだ。俺は勇次の返信を待った。



──けれど、じっと待っても仕方がないので、学校へ行く準備をしながら待つことにする。

 正直、この時点でソワソワして気が気でないが、大学にも行かなければならない。



 結局、勇次の返信があったのは、それから1時間後の話。

 メッセージが届いた音を聞いた俺は、即座にスマホを手に取って、中を確認した。



『なんだかやべぇことになったな、これは。実は俺も見たんだよ。間違いない、俺達全員が、同じ夢を見てることになるぞ!』



 やはりそうか……これで確定だ。

 前回の飲み会で、俺達3人が会ったことにより、共鳴反応でも起こしたというのか?


 理由は分かりはしないが、まずは情報の照らし合わせをしようということになり、俺達はまた集まることにした。

 今週末、またあの同じ居酒屋で!




・・・



──約束の日の夜。

 大学から帰った俺は、電車に乗って移動していた。


 実はあの後、勇次からの提案で集合場所の変更があったんだ。


 今回は内容が内容なだけに、不吉な言葉が飛び交う。

 前回のガヤガヤと人が多い居酒屋では、話もしにくいことだろう。

 また、前回は俺の家から近すぎた。勇次や芽衣は来るのが大変だ。

 そのため、集まるのはみんなの中間地点の“東京”になった。


 厳密に言えば中間ってわけでもないのだけど、俺の実家は埼玉といっても、東京よりの埼玉。

 電車を何駅か乗っていけば、すぐに東京都内に入る。


 芽衣も大学は都内だし、何かと都合がつきやすい。

 もしかしたら、勇次が一番遠いのかもしれないな。


 今回集まる場所は、某都内にあるバーだ。

 なにやら、勇次の知り合いが経営しているらしく、色々融通が効くのだとか。

 俺はスマホのマップ片手に、そのバーへと1人で向かう。



「ここか。“バー・眠れる羊(スリーピングシープ)”ってのは」


 地図に印されたバーは、外装はすべてが真っ黒で、看板だけは白を基調としていた。

 ピアノの鍵盤を彷彿させるような彩りだ。


 正直、勇次からの紹介がなければ、決して足を踏み入れない店だろう。

 酒自体は好きだが、そもそもバーというものをあまり好まない。


 どうも、あの暗い雰囲気が馴染めないんだよな……

 酒は明るい場所で飲んだ方が、その分、楽しく飲める気がするんだ。


──と、いくつもの言い訳を用意したが、本当の理由は違う。

 そんなカッコいい店に連れていく、女性がいない……


 たったそれだけの理由だ。

 でも、今はそういったことにしていてくれ。



 俺は少し緊張感気味で、バーの扉を開けた。


「いらっしゃいませ」


 バーのマスターと思われる、カウンターの内に立った男性が、静かな口調で俺に挨拶する。

 そして、ゆっくりとした足取りで、こちらへと近づいて来た。


 年齢はさほど俺と変わらない気がする。すらっとした、イケメンマスターだ。



「お1人様ですか?」


「いえ、武藤で予約してるんですけど」


「あぁ、勇次のお友達。それなら奥になります」


 マスターはニコッと笑顔を見せ、そこからは別の男性スタッフに代わり、俺は店の奥へと案内される。


 VIPルームとでも呼べるのだろうか。

 ただでさえ黒の内装に、黒のカーテンで隠された個室へと導かれた。


「こちらでお連れ様がお待ちです。ごゆっくりと」


「あ、はい。ありがとうございます」


 俺は黒のカーテンを開ける。



「──なんだ。2人ともいたのか」


 中を覗くと、そこにはすでに勇次と芽依の姿があった。

 どうやら2人はすでに、先に着いていたようだ。

 これまた黒のソファーにふたりは対面に座り、俺を待ち構えている。


「おっ、やっと来たか誠人。遅ぇぞ!」


 俺はスマホで時刻を確認した。待ち合わせ時刻ぴったりだ。

 

「だから、勇次が早いんだっつーの」


「ほんとよね。私も5分前に着いたけど、すでに勇次はいたのよ」


 よかった。芽衣がまともで。

 俺はふかふかのソファーに腰をかける。


 勇次はメニュー表を俺に手渡し、これから(いくさ)でも始まるのではないかというくらいの、威勢いい声をあげた。 


「まぁ何でもいいや。飲み物決めたら、始めようぜ。俺達の悪夢に打ち勝つ話をよ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ