表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星が墜ちた夜から  作者: Guru
1章 悪夢の始まり
11/76

第10話 “もう1人”

「そうそう! 俺達以外、誰も信じてくれねぇんだよな!」


 少し強めに、勇次は居酒屋のテーブルを叩いた。

 芽依が勇次をなだめる。


「ちょっと……興奮するのも分かるけど、静かにしなさいよ」


「わりぃわりぃ! でも……この話をすると同時に──“あいつ”も思い出しちまうな」


 あれだけ手を叩きながら大笑いしていた勇次が、一瞬にして静かになった。

 手にしていたジョッキを完全にテーブルに起いて、寂しそうな顔をしている。


 俺には勇次の気持ちがよく分かった。

 なぜなら俺も勇次と同じように、寂しさを覚えていたからだ。


 先程からずっと話題にあがっていた、あの大きな流れ星の話……

 あの時いたのは、ここにいる3人だけではない。


 実は──もう1人いたのだ。



 “阿久津 (さとし)


 彼は四人の中でも、みんなのまとめ役。リーダー的な存在だった。

 俺らは何をするにも4人いつも一緒。それくらい仲がよかった。


 やんちゃな勇次。お節介な芽依。幼稚さが残る俺。

 そんな3人からしたら、彼は随分と大人びていた。


 同級生でありながら、なぜか兄貴であるかのような……

 とりあえず迷ったら、智についていけば間違いない。それくらいの信頼があった。


──しかし、彼は…………



 去年、亡くなった。



「智が亡くなって、もうすぐ1年か……未だに信じられないわ……」


 アルコールが体に出やすい体質なのか、顔を赤く染めていた芽依も、どこか先程より紅潮がおさまって見える。


「事故だったよな……こんな事になるなら、もっと会っとけばよかったよ」



 別れは突然訪れた。


 智の家庭は勉強熱心で、俺達とは違う私立の中学校に通っていた。

 それでも俺と勇次は仲良く、たまに遊んだりしていたが、高校入学の際に親の都合か何かで埼玉を離れた。

 それを境に、ほとんど智とは会わなくなってしまったのだ。

 

 でも、まさかもう2度と会えなくなるなんて……

 確かに勇次の言う通りだ。

 だったら、俺ももっと智と会っておきたかった。

 今更嘆いたところで遅い話だが……



 実のところ、こうして俺達3人が今集まっているのも、智のおかげというのもある。


 智の葬式の際に、俺らは数年ぶりの再会を果たしたのだ。

 久しぶりに皆の顔を見て、同窓会みたいになってしまうとは……なんとも皮肉なものだろう。

 


「何だか、しんみりしちまったな。別の話に変えようか。ほら、誠人も酒注文しろよ。グラス空いてるぞ!」


「あぁ、タイミング失っちゃってさ……何頼むか考えとくよ」


 俺がメニュー表を開き、ドリンクのページを眺めていると、芽依が話題を変えるために、新たな話を切り出す。


「じゃあさ、ちょっと聞いて欲しい話があるんだけど。いいかしら?」


「おっ! もしかして恋愛相談か?」


 暗いムードを和やかにしようとしたのか、勇次が茶化した。


「何言ってんのよ。そんな話なら、あなた達にしないわよ」


「失礼な! って、それもそうか」


 何納得してんだよ。まぁ、俺達彼女いないし、事実か……


 俺が心の中でそんなツッコミを入れていると、芽依はほんの少し、渋い表情を見せていた。


「けど、これもちょっと暗い話ちゃ、暗い話なのよね……」


「いいよ。とにかく言ってみろって!」


「そう? なら、話すけど……私、この数ヶ月くらい、頻繁に“悪夢”を見るのよ」


「──えっ?」


 思わず俺の手は止まった。

 俺はすぐさま聞き返そうとするが、それよりも先に、いち早く勇次が問いかける。


「その悪夢ってのは、具体的にどういう内容なんだ?」


「内容は様々なんだけど、悩んでるのは、そこじゃないのよ。何だかその悪夢……正夢になっていくのよ……」



 マジか……これ……

 同じじゃないか!! 芽依も俺と同じで、予知夢を見てる!?



『それ、俺もなんだ!』


 そう、声を掛けようとした矢先──

 勇次がテーブルを両手の(てのひら)で強く叩き、すっと立ち上がった。


「俺と同じじゃねぇか!! それ!! どうなってんだ!?」


「──えぇっ!? まさか勇次、おまえも!?」


 予想だにしない展開に、俺は大声をあげる。

 勇次はきょとんとし、うまく状況を飲み込めていない様子だ。


「おまえ()って、どういう意味だよ……」


「だから、俺も同じなんだよ!! 俺もここ最近、毎日のように悪夢を──予知夢を見るんだ!!」


 唯一冷静さを保っていた芽依が、現状を割り出す。


「もしかして……ここにいる3人、全員が悪夢……いえ、予知夢を──見てるってこと!?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ