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3話 秘密基地




コンビニで買い込んだお酒のビニール袋を持って神社へと階段を登る。


「さすがに、飲んだ後に登るのはなかったかな…。」


後悔するが鳥居はもう目の前だ。


「やっと着いたぁ。」


大きく溜息を吐き桜の木を見上げる。

緩やかな登り坂と急な階段はかなり辛かったが、満月が桜を照らし人工的なライティングとは違った幻想的な雰囲気を纏っていて、満足感が漂う。


やはり、来てよかった。


境内を歩き、お参りをする。

一人飲むのは失礼だろうと、差し入れを買って来ていた。


「龍神様、ご一緒にお酒でも如何でしょうか?」


そう言うと、コンビニの袋から小さめの日本酒を取り出して紙コップに注ぐ。もちろん2つ。


「綺麗な桜に!」


30歳にもなって何を恥ずかしいことをしているのかと自分でも呆れるが、少し心が安まるのを感じる。

それは、父親とお酒を酌み交わしたことがなかったからーーー



頬を涙が伝っていることに気づいた。



「俺さぁ、18で此処を出てから親父が死ぬまで帰って来なかったからさ。一緒に酒を飲んでやることもできなかった。この街を出ること反対してたからさ……意地張ってたんだよな。」


誰にも言えなかった胸の内を、月が照らす静かなこの場所で吐露した。身勝手なだけなのだろう。

でも、打ち明けられるのは龍神様しかいなかった。

親友でも、仏陀の前でもなく、此処しかなかったのだ。


涙を袖で拭い、それ以上は何も言わず桜を眺めて酒を飲む。


酒の瓶が空き、ハイボールの缶を2本飲み終えた。

1時間以上経っただろうか。

ふと、この場所で父親に酷く叱られたことを思い出した。



ーーーまだ、あるのかな?



ふらふらと立ち上がり、お社の裏手に歩みを進める。

そこには、記憶と同じ小さな洞窟があった。

スマートフォンで灯をとり少し屈んで中に入る。



子供の頃、勝手に入ってはよく叱られた秘密基地だ。



奥まで進むと小さな祠がある。

大人になった今、かなり狭く感じるが入れないわけではない。


祠に手を合わせ、正面に座る。


「懐かしいなぁ。」


周りを見渡し、隠していた宝箱を探す。

宝箱といっても、クッキーが入っていた金属の入れ物だが…


「さすがに捨てられてるよな…。」


念のため祠の後ろも探してみることにした。



「あった!!!」



ーーーーゴン!



見つけた嬉しさと驚きで身体を仰け反ってしまい頭をぶつけてしまった。


「いってぇ〜!」


ぶつけた箇所を触り血が出ていないか確かめる。

どうやら大丈夫そうだ。


その時、壁面に書かれた文字に気づいた。

大人になった今だからこそ見ることのできるその位置に、何かが書かれていた。




ーーーーーーーーーーーーー


   次元ノ扉開ク刻

   龍神ノ導キニ依

 古ノ伝承ノ地へト誘ワレン


  汝其レヲ望ムカ否カ


ーーーーーーーーーーーーー







お読みいただきありがとうございます。

コロナで不要不急の外出はできませんが、多少なりとも誰かの楽しみとして役に立っていたらいいなと思っております。

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