表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マナリウム ~私、狼だけど神様を目指しても良いでしょうか?~  作者: 内村一樹
第2章 狼と女王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/306

第19話 暗転

「ほら、さっさと歩かないか」


 ミノーラが親様おやさまと姿を消した後、カリオスは自然な流れで両手を拘束こうそくされ、何やら下の方へと向かって歩かされていた。


 彼を連行しているのは、あのトリーヌである。


「どうした、何か言いたい事でもあるのか? ……おっと、それは皮肉になるのだったな。そんなに私をにらむな。ついつい睨み返してしまう」


 隣を歩くトリーヌに対して一瞥いちべつを投げかけていると、軽蔑けいべつしたような鋭い視線を投げ返された。


 それとも、生まれつき目つきが悪いのかもしれない。


『これがいわゆる鳥目とりめってやつか? そうか。違うなぁ。まだ外は明るいしなぁ。これからどうするかなぁ。逃げ出そうにも、そもそも、コロニーから降りることすら出来ないぞ?』


 そんなことを考えながら、彼は足を進める。


 しばらく歩いていると、コロニーの最下層と思われる場所へと辿り着いた。


 らせん状に降りている太い枝を辿たどって行くと、先端につたを編み込んで作られた台座があった。


 その台座が何を意味するのか、考えたくないのだが、容易に想像がふくらんでいく。


『おい、ちょっと待て、飛び降りろってか!? いやいや、さっき丁重に扱うって言ってたぞ? まぁ、両手を拘束されてる時点でそれは期待しちゃいなかったが』


 最後の抵抗の意味を込めて、トリーヌへと目を向ける。


 しかし、彼は一瞥たりともこちらへと向けてはくれない。


「さあ、そこに立つんだ」


 言われるがままに、台座の上へと昇るカリオス。


 その台座は丁寧ていねいにも手すりが設置されており、装飾なのだろうか、何やら羽のある像と人型ひとがたで小さな像が手すりの上に並んでいる。


 その手すりしに、下をのぞき込んでみる。


 まだコロニーの内部であるため、下につたで出来た壁が見える。


 しかし、その壁が人間一人を支えることが出来るほど強く編まれている保証はどこにもない。


 そもそも、人間一人を支えることが出来たとしても、衝撃で命を落としてしまう程の高度がある。


 口元の金具の中でため息をつきながら、トリーヌを振り返り、最後の命乞いのちごいを試みる。


 しかし、そんな彼に放たれた声は、予想外の物だった。


「お前は、何を見た」


『は?』


 思ってもいない言葉に一瞬いっしゅんほうけるが、先ほど見た親様と影の精のことを連想する。


 途端、彼のは背後から甲高い声が響いた。


「ヘイ! そこの奇抜きばつな兄ちゃん! ちっとばかしこっちを向いちゃくれんかね! そして、今見てたもんをもう一遍いっぺんだけ見せちゃくれんかね。わるいなぁ、頼み事ばっかでよぉ。後で礼はしっかりきっちりしてやっからよぉ」


 やたらと早口で、なまりの強い口調ではあったが、不思議と聞き取れないことは無かった。


 その声に呼ばれるまま、台座の手すりに目をやる。


 先程見た手すりと何ら変わりはないのだが、その手すりの上に何やら小さな人間が腰かけている。


『なんだ? 小人?』


「おいらは小人じゃねぇ! 兄ちゃん、なんでそんなに反応薄いんだよぉ! こそこそ隠れてたこっちが恥ずかしいじゃねぇかよぉ!」


 突然現れた小人と言う存在に対して、カリオスはあまり驚きを抱かなかった。それよりも彼を驚かせたのは、その小人が当然のように会話を続けている点である。


「それで、彼はどうだろうか?」


 あっけにとられていたカリオスの背後から、トリーヌが声を掛ける。


「問題は無さそうだぜぇ! 今なら誰も見ちゃいねぇ、サクッとやっちまいなぁ!」


「そうか」


 唐突に嫌な予感を覚えた彼は、とっさにトリーヌの方を振り返ろうと身をよじりかけた時……。


『ぬあっ!!』


 肩に強い衝撃を受けたかと思うと、視界が一回転し、気が付けば自由落下を始めていた。


 上も下も分からぬまま、全身に風を受けて体が回転する。もみくちゃになりながらもたまに見えるコロニーの壁が徐々に近づいていることから察するに、台座から投げ落とされたようだ。


『くそおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーー!』


 声として発することが出来ずとも、彼は絶叫していた。


 そんな彼だったが、耳元で発せられた小さな声をシッカリと聞き取った。


「兄ちゃん。悪いが一遍死んでくれ」


 ここ最近、死ぬことを強要されすぎている気がする。これで何度目だろうか。


 そう考えながら、彼の意識は暗転あんてんしていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ