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なんとなく私に似ている。
夏はそう思って雛を見る。
「銃を向けてごめんなさい」夏は言う。
「もう絶対にそんなことはしないわ」夏は言う。
部屋の中に変化はない。
雛はここにはいない。
もしくはいるのだけど夏には見えない。
どちらが正解だろうか?
それは夏にはわからない。
でも雛がこの世界から消えてしまったとは思えない。私の世界からいなくなってしまっただけなのだ。
だから、あの子は今もここにいる。
だって、あの子は生きているのだから。
夏は思う。
なにがいけないんだろう?
どうして雛は消えてしまったんだろう?
夏は椅子から立ち上がり、その場で太ももまでスカートをめくって、そこに装着していた簡易型のホルスターの中から銀色の銃を抜き取った。
薄い上質な布で作られたワンピースだったから、もしかしたら遥にはこの銃がスカート越しに見えていたのかもしれない。
でも、そんなのもう、どうでもいい。
どうせ最初っからばれているんだろうし、別にいい。
夏は雛によく見えるように銃口を上に向けてかちっという音をさせ、手慣れた手つきで弾倉を横にスライドさせた。すると重力によって銀色の弾丸が床の上に落っこちた。
小さな音がして、それから弾丸がころころと床の上に転がった。
雛に変化はない。
夏は弾倉を戻し、それをホルスターの中にしまった。
弾丸を拾い、手のひらを広げでそれを雛に見せてから、ホルスターについている小さなポケットの中に弾丸をしまい込んだ。
「この拳銃、銀色で、綺麗で、小さくて可愛くって、とても気に入っていたんだけど、あとでどこかに捨てることにするね」夏は言う。
「ありがとう」
夏は雛を見る。
「雛ちゃんのおかげだね」
夏は笑う。
涙はちゃんと我慢できた。




