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二人は無言のまま、ご飯を食べた。
無言のまま食器を片付けて、無言のまま、歯磨きをして、そして無言のまま寝室に移動して、無言のまま、ベットの上に横になった。
パジャマに着替えもしていない。だから二人の着ている服は、真っ白なワンピースのままだった。
それからすぐに夏は静かな寝息を立てて眠ってしまった。
きっと疲れていたのだろう。
夏が寝てしまって、遥は一人ぼっちになった。
一人ぼっちになった遥は薄暗闇の中で、じっと寝室の天井を見つめて、いろんな考えごとをした。
考えることは遥の得意分野だった。
たいていのことは、考えれば結論が出た。
でも今日はだいぶ調子が悪いみたいだ。
たくさんのことを考えても、一つも答えが出なかった。
すべての解答にばってんのついた解答用紙を思い浮かべで、木戸遥は苦笑した。それは現実の世界ではありえない光景だった。
でも、すごく新鮮なイメージでもあった。
そこで遥は考えることをやめた。
遥は顔を横に動かして、遥の隣で静かに眠っている夏を見た。
夏は遥に顔を背けるようにして眠っていた。
夏は遥を見ていない。
それは、とても珍しいことだった。
そのことが少し癪に障ったので、遥は夏と同じようにベットの反対側に体を向けた。
二人はベット上でお互いに背中を向け合うようにして丸くなった。
夏は初めから。
遥は夏を真似るようにして、ベットの上で丸くなった。
お互いの背中はくっついてはいない。
ほんの少しだけど、離れていた。
同じベットで眠っているのに、どうしてだろう?
眠りの中に落ちる直前、いつもの癖で、遥はそんなことをまた、考えてしまった。
私はあんまり素直じゃないな。
そんなことを遥は思った。




