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夏(旧)  作者: 雨世界
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「私、外の世界にすごく興味があるんです」そんなことを雛は言った。

「外の世界?」夏が言う。

「はい。私の知ってる世界の、外側に広がっているという大きな世界のことです」

 夏は遥の部屋で一人、椅子に座ってぼんやりと考えごとをしていた。部屋の中に遥の姿はない。遥はまだ雛の部屋にいる。きっとあのドアの向こう側にあるという研究室でなにかよからぬ企みごとでもしているのだろう、と夏は思った。

 夏は白衣を身にまとい、雛の服を脱がせて全裸にし、雛をベットに横たわらせて、そのベットの横になって、嬉しそうに顔をにやけさせている遥の姿を想像した。そのイメージは夏の中にある木戸遥のイメージとぴったりと重なるものだった。(マッドサイエンティスト的なイメージだ)

「でも、あなたは外には出られない。出たら、七日間で死んでしまう」

「そんなに持ちません。きっと私はドームの外の世界では三分くらいで死んでしまいます」

「三分。……そんなに短いんだ」夏が言う。

「はい。そうですね……。私はドームの外では呼吸ができない、ドームの中でだけ呼吸ができる小さな魚のようなものだと思ってください」眉をひそめて、雛が言う。

「呼吸ができない」

「はい。呼吸ができない」

「じゃあ、あなたにとって、このドームは透明な水で満たされている、大きくて丸い水槽のようなものなのね」夏が言う。

「はい。だいたい、そんな感じです」嬉しそうに雛が言う。

 それは確かに息苦しそうだ。

 雛にとってこの場所は、それっぽいというだけじゃなく、本当の宇宙船の中のようなものなのだろう。外は宇宙空間。だから呼吸ができない。

 夏は雛が例にあげた魚というイメージよりも、どちらかというと雛を宇宙人のようなイメージで捉えていた。なんとなくだけど、そちらのほうがすごくしっくりくるような気がしたのだ。

 夏はちらりと雛を見た。

 雛は、なんですか? とでも言いたそうな顔で夏を見る。

 顔は笑顔。

 出会ってからずっと、雛はなぜか嬉しくてたまらない、と言いたげな顔をしていた。夏はそんな雛を見てどうしてそんなに嬉しそうなんだろう? と疑問に思っていた。

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