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しばらくして遥は黙ったまま入り口のセキュリティーを解除した。入り口のドアが開いたことがモニタに映っている夏が笑顔になったことで確認できた。
「ようやく開いた。まったくもう。こうして親友がはるばる訪ねてきたんだからさ、玄関のドアくらい、もっとさっさと開けなさいよね」
夏は上機嫌な様子でモニタの外へと消えていく。
それから遥は目をつぶり、体をできる限り丸くして、じっとなにかを考えている。とても深く、素早く思考し、いろんな計画を頭の中で高速に組み上げていく。
長い時間が経って、……。
「夏は馬鹿だな」遥が言う。
「誰が馬鹿だって?」そんな懐かしい声が聞こえる。
遥はくるりと椅子ごと回転する。
すると開きっぱなしになっていた部屋の入り口から久しぶりに見る夏がじっと自分のことを見つめている光景が見えた。その光景を見て遥は小さくため息をついた。
遥のため息を聞いて夏はむっとする。そのことが言葉を交わさなくても遥にはすぐに夏の気配だけで理解できた。
夏は無言のままゆっくりと歩いて遥の前に移動する。
遥は夏を見る。
強がっているけど、内心、ひどく緊張しているのがすぐにわかった。




