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目を覚ますと、そこに遥の姿はなかった。
ベットの中にも、部屋の中にも遥はいない。
夏はぼんやりする頭を押さえながらベットから起き上がると、遥を探す旅に出た。
寝室の前の通路には遥はいない。
遥の私室にも、遥の姿はなかった。
やがて夏はキッチンの中に移動する。
するとそこでようやく夏は遥の姿を見つけた。
「おはよう、夏」
夏に気がついた遥は、優しい声でそう言った。
「うん。おはよう、遥」
そう返事はしたが、実際のところ、もう夏には今が本当に朝なのかどうかわからなかった。
体の疲れがきちんと取れていることや、お腹がすごく空いていたことから考えると、随分と長い間、夏は眠っていたはずだ。もしかしたら今はもう昼なのかもしれないし、夜なのかもしれない。
でも、遥が夏におはようと言ってくれるのだから、この際、そんな些細なことはどうでもいいのだ。
夏は遥の斜め後ろに移動して、料理をする遥にちょっかいを出すことにした。
遥は子供のように甘えてくる夏を軽くあしらいながら手際よく料理を完成させた。二人はそれを遥の私室で一緒に食べることになった。
夏が料理を運んで、その間に遥がコーヒーを淹れた。
夏のラジオにカセットテープを入れて音楽を流して、二人は笑顔で、ご飯を食べた。
それはとても幸せな時間だった。




