第二章 異世界ファブラと入隊試験②
実際に、クエントは大きな街だった。まず、人が多い。すれ違う人の数は滝谷と比べても遜色ない。祭りでもやっているのかと思ったが、ベルナルダが言うにはそうでもないらしい。
「この街はいつだってこんなもんさ。なんてったって城下町だからねえ。」
「城下町?ここに王様がいるってことですか?」
「もちろんそうさ。今の女王さまは中々やり手でね。この街も潤っているのさ。見てごらん、この商店街を。」
確かに経済活動はかなり活発なようだ。一見しただけでたくさんの露店が軒を構えているのがわかる。売っているものは、野菜や魚などの食料が中心であった。客も多く混み合っており、通り抜けるのが面倒になりそうだ。
「この市場は所謂街の台所ってやつでねえ。奥に行けばもっと色々な店があるんだけど、まあ今日はいいだろう。」
露店の群れを抜けると、今度は店舗の立ち並んだ通りに出た。花屋に服屋、その他にもたくさんの店が並んでいる。見たことのないような店もあるが、一体何の店なのだろうか。表には何かの角や骨が並んでいる。
「その店は、冒険家さんの店です。」
「冒険家?」
「ええ。何でも、趣味で世界中を旅して回っているそうです。行き先で手に入れたものを商品として売っているんですよ。珍しいものが見つかることも多いので、コレクターの方がよく訪れるんです。」
「ほほう。」
興味がないわけではないのだが、今は店主が留守のようだ。どうせ金もないんだし、訪れるのは後にしよう。
他にも、鍛冶屋や宿屋など、ゲームではおなじみの店も数多く存在していた。
「本当に、いろいろ売っているんだな。」
「はい。クエントで手に入らないものはない、とまで言われています。」
それはすごい。日本でいう東京のようなものか。
「『猟犬』の本部ももうすぐだよ。そこの角を右に曲がったら、目の前さ。」
そう言われて俺は路地の方へ目を向けた。なるほど、あそこを曲がれば『猟犬』の本部に……。
ん?
路地を一人の少女が歩いていた。『猟犬』の本部があるという角の右から左に向かって。年の頃はおそらく俺と大して変わらない。ゆったりとウェーブした金髪が肩にかかっている。その両手には、大きな袋。その中からパンや野菜が飛び出している。
その少女の後ろから、一人の男が走ってきた。妙な男だった。頭に赤い帽子を被っている。辺りを伺っているらしく、チラチラと目線が動いている。姿勢は低く、忍び足で少女に近づいていた。そしてすれ違う瞬間、男は少女から袋をひったくった。
「きゃあ。」
少女は小さな声で叫び、道に倒れこんだ。
この時、俺はもう走り出していた。逃げていく男に向かって、一直線に。
「ソウゴさん!」
「ヴェロニカはその娘を!」
それだけ言って、俺は男を追いかけた。男は路地の左側へ疾走していた。俺も迷わず角を左に曲がる。男の背中が見える。
相手は大きな袋を抱えている。そう速くは逃げられないはずだ。そう考えていたのだが、どうやら間違いだったらしい。男は相当足が速いらしく、手ぶらの俺と遜色ない速度で走っていた。まっすぐ、走る走る。
男が角を右に曲がる。俺もすぐさま右に曲がる。しかし、男の姿は見えない。道の先は左右に分かれている。どちらを見ても、男は見えなかった。あの野郎、どこに行きやがった。
「お困りのようですな。」
声の方へ視線をやると、一人の男が椅子に座っていた。格好は黒ずくめで、顔の下半分を布で覆っている。男の前には机が置かれ、その上には大きな水晶が鎮座している。これは、地球と同じであれば、占い師だろうか。
「随分慌てているようだ。探し物ならば、占って差し上げようかね?」
「探しているのは間違いないが、占わなくてもいい。ここに赤い帽子の男が走って来ただろう。どっちに行ったか教えてくれ。」
「それはわかりませんなあ。私は逆方向を見ておりましたから。」
役に立たない男だ。時間を無駄にしてしまったじゃないか。
「まあまあそんなお怒りにならずに。」
そう言うと男は水晶の上に手をやると、撫で回すように動かした。水晶はまるで煙が入っているかのように、中で何かが渦巻いていた。
「あなたはとても面白そうな人だ。この一回はサービスですぞ。」
占いを信じるほど地に堕ちてはいない。
「そんな暇は—」
「ない、そう仰りたいのでしょう。わかります。わかりますとも。こんな占い師の戯言を信じるほど地に堕ちてはいないと、そうお考えなのでしょう。しかしですぞ、ここで私に占われることも、あなたの運命のようだと、私には思えるのですよ。」
気づけば、男の左手が俺の腕を掴んでいた。それは思ったよりもずっと強い力だった。
「さあ、もうすぐです。あなたが探しているものは—。」
水晶の内側の渦巻きが、少しずつ形を変えていく。それは人の形、または街の風景、そういったものが、水晶の中に浮かんできた。
「あなたが探しているのは、この赤い帽子の男ですな。」
「当てたからって褒めたりしないぞ。それはさっき言ったからな。」
占い師の頬が緩む。何を寛いでいるのだ。
水晶の中の男は、赤い屋根の建物の下を歩いている。
「この男の行き先ですが、パラグアス通りに行ってみるといいでしょう。そこで必ず出会えます。」
「パラグアス通り?それはここからどうやって行けばいいんだ?」
「そこの路地を左に曲がった後、直ぐに右に曲がってまっすぐ進めば、そのうち見えてくるでしょう。」
占い師はようやく俺の腕を離した。かなり強い力で握られていたため、腕にうっすら跡が残ってしまっている。俺は占い師を睨みつけたが、占い師の方は気楽そうに笑っている。
「ほっほっほ。私にはわかります。あなたのことは今後も何度か占うことになるでしょう。」
「そうかい。」
今は俺とこの占い師との因縁なんてどうでも良い。それよりも、赤い帽子の男だ。占い師の話ははっきり言って胡散臭い。本当にパラグアス通りに行けばいいのか、疑わしい。しかし、こちら側に手がかりは何もない。だったら、パラグアス通りに行ってみてもいいだろう。何もせずすごすご退散するよりは遥かにマシだ。
俺はまた走り始めた。占い師に言われた通り、奥の路地を左に曲がり、直ぐに目の前に現れた丁字路を右に曲がった。曲がる瞬間歩いていた猫を踏みつけそうになったが、辛うじて躱すことができた。猫はギャンギャンと騒いでいる。蹴られないだけマシと思え。俺はまっすぐに駆け始めた。
占い師はこのまままっすぐ行けば良いと言っていた。どれくらいの距離かはわからないが、走って行けるのならば、そんなに大した距離ではないだろう。俺はさらに足を速めた。いつしか道は狭くなり、裏通りと言っていいものになっていた。周りの建物もみすぼらしくなって来ている。栄えている城下町と言っても、全ての住人が潤っていると言うわけではないらしい。
あの男が盗んだのは食料の入った袋だった。決して金目のものが詰まっていたわけではない。それでも盗んだと言うことは、男はまともに食べることすらできないような立場なのかもしれない。一見すると同情の余地があるように見える。
しかし、だからと言って人のものを盗んでいいかと聞かれれば、答えはもちろんノーだ。許されるわけがない。その時点で犯人は罪人でしかなく、もはや言い訳はできないのだ。自分の身の上が不幸である、それがなんだって言うのだ。他人を巻き込むな。自分の人生には自分で向き合え。俺は多少のことであっても、犯罪者を許すことはできない。情状酌量?そんなもの、知ったことではない。
あれ、おかしいな。俺はどうしてこんな過激な思想をしているのだろうか。そんな人間だっただろうか?
狭い道を走り抜けた先で、俺は開けた通りにたどり着いた。丁度俺の目の前に寂れた看板が立っている。
「パラグアス通り」
ようやく目的地か。あの占い師はここで赤い帽子の男に会えると言っていた。どこだ?どこにいる?
辺りを見渡してみるが、男の姿はない。いや、そもそも人の姿がほとんど無い。通りの脇に力なく座っている若者が数人いるだけだ。俺はそのうちの一人に声をかけてみた。
「おい、聞きたいことがあるんだが。」
その男は面倒そうに顔を上げた。その目は濁っており、生気を感じさせなかった。
「ここに赤い帽子の男は来なかったか?」
「赤い、帽子?」
「そうだ。大きな荷物を抱えている。」
「……見ていないな。」
男は俺から目を逸らすと、ぶっきらぼうにそう言い放った。俺を拒絶している、そう感じさせる態度であった。嘘を吐いているようではない。
仕方なく俺は、しばらく通りを歩いてみた。目に入った人間に片っ端から声をかけてみたが、答えはどれも同じであった。誰一人として赤い帽子の男を見ていないのである。やはりあの占い師の言っていたことは戯言だったか—。
その時、俺の向かいにある交叉路から、一人の男が現れた。赤い帽子に大きな荷物。間違いない、あの男だ。
男も俺に気づいたようだ。ぴたりと立ち止まると、百八十度回転して再び駆け出した。
「待て!」
当然俺も駆け出した。男の後ろ姿を追いかける。さっきと比べて男のスピードがやや落ちていることに俺は気づいた。もしかしてあいつ、ずっと走りっぱなしだったのではないか?
あの男は向かいの交叉路から現れた。つまり、俺と追いかけっこを始めた場所から最短でやって来たと言うわけではない。最短ルートは俺が走って来た道だからだ。ということは、あいつはパラグアス通りにくる前に別のところを通ったということになる。おそらく、その間もずっと走っていたのだろう。息がきれるのも当然と言うものだ。
男の背中が近くなる。あと一歩で届きそうだ。男もそれを悟ったのだろう、なんとか俺を振り切ろうと、横道に逸れようとした。しかし、その判断が間違いだった。曲がろうとすれば、当然スピードは落ちる。俺にとっては千載一遇のチャンス。右に曲がろうとした男の横っ面に、こちらの右手を叩き込む。頬を捉えた感触がした。男は体勢を崩し、横道の壁に体を打ち付けた。袋が宙を舞った。そして、まるでそれを望んだかのように、袋は俺の胸の中に収まった。
「何をしやがる!」
男はこちらを向くと、大声で吠えたてた。
「てめえいきなり人をぶん殴りやがって。警ら隊に突き出すぞ。」
「—何だと?」
男の目は怒りに染まっていた。
「ああ痛え。骨が折れたかもしれねえ。どうしてくれんだ!」
「黙れ盗人が。」
「黙るわけねえだろこのボケナスがあ。てめえ誰に手を出してるかわかってんのか。俺は『赤いトサカ(クレスタ・ロッホ)』の一員—。」
俺はゆっくりとしゃがみこむと、男の口を右手で塞いだ。そしてそのまま少しずつ締め上げる。男はジタバタと暴れ始めたが、知ったことではない。こいつも自分のやったことを棚に上げて人を避難する人間なのだ。そんな奴の話を聞く必要なんて、ない。
「貴様、何をやっている!」
突然怒鳴られたかと思うと、俺の腕を誰かが掴んだ。大木のような、鍛え上げられた腕だった。その腕が、俺の腕をねじり上げる。俺から解放された男は、這々の体で逃げだした。
「おい、逃げるな!」
俺もすぐに追いかけようとしたのだが、それは叶わなかった。俺を掴んだ腕が離してくれなかったからだ。
赤い帽子の男は、そのまま裏路地に消えていった。
「くそっ!」
ここで俺は初めて左に振り返った。そこにいたのは、腕の太さに負けない巨大な男であった。
「なんなんだお前は!逃げられたじゃないか!」
「黙れ、我々警ら隊が暴力行為を見逃すと思っているのか!」
その男の服装は、丘の上で見た男たちと同じものだった。鎧兜を身にまとい、左手には槍を携えている。しかし、丘の上で見た男たちに比べて、こいつは明らかにデカイ。
「警ら隊?だったらあの男の方を捕まえろよ。あいつ泥棒だぞ!」
「言い訳するな!」
警ら隊の男は一喝すると、俺を睨め付けた。
「見ない顔だな。まさか、貴様か?」
「何が。」
「とぼけるな!最近貧民街の者が殺される事件が続出している。貴様が犯人か!」
なぜそうなる。こいつの頭はどうかしているのか?百歩譲って俺を暴行犯と思い込むのはわかる。現場を見たのだから。しかし、突然殺人犯に仕立て上げるのは意味不明だ。
「おら、こっちに来い。隊舎で締め上げてやる!」
男は俺を無理やり立ち上がらせると、勢いよく引っ張って進み始めた。
「離せ!証拠もなしに人を犯人にするな!」
男は俺の話には耳を貸さず、俺はそのまま引っ張られていった。
男の進む道は、俺が来た道と全く同じだった。パラグアス通りを抜け、細い道に入り、まっすぐ進んでゆく。途中であの占い師のいた道も通ったのだが、すでに奴はいなかった。
「どこまで行くんだ。」
「警ら隊の隊舎に決まっているだろう!」
「だから、それがどこかと聞いているんだ。」
「そんなことも知らないのか?貴様、やはり余所者だな?」
だったらなんだって言うんだ!
「まあいい。どうせもうすぐ着くのだからな!」
男の握る力がさらに強くなる。こいつは本当になんなんだ!何が腹立つって、一々声が大きいことだ。耳元で大声を出すんじゃない!
遂に俺は、最初の路地に戻って来た。ここの角を右に行けば、『猟犬』の本部だと言っていたな。
「ソウゴさん!」
そこにはヴェロニカが待っていた。ヴェロニカだけでない、あの金髪の少女も一緒だった。二人は、俺の元に駆け寄ってくる。
「ソウゴさん、これは一体?」
「なんだ、お前たちは!」
相変わらず大きな声で、警ら隊の男が威嚇する。しかしヴェロニカは凛とした態度を崩さず、男の方へと向きなおる。
「あなたこそ、何をやっているのですか。ソウゴさんに何を。」
「お前たちもこいつの仲間か!共犯だったんだな?」
「共犯?」
こいつ、関係のないやつまで巻き込むつもりか!
「おい、この女は『猟犬』の一人だぞ。」
「『猟犬』だと?何を馬鹿な—。」
状況を理解したのか、ヴェロニカが手帳を取り出し、男に見せつけた。
「本当です。これがその証です。」
「……。」
男はしばらく黙って見ていた。俺を掴む手が少し緩くなる。
「なんと、本当に。」
男は姿勢を改めると、ヴェロニカに向き合った。
「これは失礼いたした。ヴェロニカ殿。」
「いえ、それは良いのですが。なぜソウゴさんを捕らえているのですか?」
「それは、簡単なことです。この男はパラグアス通りで暴力行為を働いておりました。パラグアス通りと言えば、最近住人の不審死が頻発している場所、怪しいものを捕らえるのは当然でしょう。」
「そうですか、お仕事お疲れさまです。ですが、彼は怪しい者ではありません。それは私が保証します。」
「そう言われましても。」
「少なくともソウゴさんはその不審死とは全く関係がありません。なぜなら、彼は今日初めてクエントを訪れたのですから。それも、私と一緒に。」
ヴェロニカの語気が若干強くなる。それもあってか、男は少し怯んだ様子を見せた。
「そ、そうですか。しかし、この男が暴力を振るっていたのは間違いなく!」
「あ、あの!」
それまでオロオロしていた金髪の少女が、突然大きな声をあげた。
「その人は、私の代わりに泥棒を捕まえようとしてくれたんです。その袋、私のなんです。」
「なんですと!」
男は俺の方を振り向いた。信じられないと顔に書いてある。
「だから言っただろう。あの赤い帽子の男は泥棒だって。」
「う、ううむ。」
男は唸りながら考え込んでしまった。
「おいおっさん。いい加減解放してくれないか?」
「おっさんではない。私の名前はアーロン・ヨンパルトだ。」
そう言いながら、ようやく男は俺から手を離した。
「今度泥棒を見つけた時は、自分で追わず警ら隊を呼びなさい。危険だからな。それと—。」
アーロンは言いにくそうに黙ってしまったが、すぐにまた口を開いた。
「すまなかった。私の早とちりだったようだ。」
本当だよ。
「いや、こちらこそ少しやりすぎたところもありました。」
多少むしゃくしゃするが、謝罪している相手にこれ以上攻め込む必要もないだろう。それに、こちらが必要以上に手を出してしまったのも事実である。泥棒を逃したことはともかくとして、俺に対して注意すること自体は間違っていないだろう。俺はアーロンの謝罪を受け入れることにした。
「では、私はこれで。」
そう言って、アーロンは去って行った。相当大きいはずの背中が、少しだけ小さく見えた。
俺は両手を上に挙げ、背中をぐっと伸ばした。無理やり連れてこられたせいで姿勢がおかしなことになってしまっていた。今のうちに伸ばしておかないと、変な痛みに襲われかねない。
「あの!」
金髪の少女がまた大きな声をあげた。
「ありがとうございました。荷物を取り返してくれて。」
「ああ、そうだった。その荷物、取られているものはないか確認してくれ。」
パッと見、大したものは入ってないように見えるが、それでも確認は必要だろう。
「は、はい。」
少女は袋を地面に置くと、中身を確認し始めた。パンや野菜、さらにその下には小さな箱が二つ。しばらくして、彼女は大きく息を吐き出した。
「よかった。全部あります。」
「そうか、それは何よりだ。」
「……実は、両親へのプレゼントを買ったところだったんです。だから、返ってきて本当に良かった。」
少女は目を潤ませながら、こちらを見上げた。
「ありがとうございます。本当に、なんてお礼をしたらよいか。」
「あー、いいんだ。そういうのは。俺が勝手に追いかけただけだし。」
「ですが。」
ダメだ。感謝とかお礼とか、そういう類のものは背筋が痒くなる。
「いいんだって。」
だが、俺が断ればば断るほど、少女のテンションはなぜか上がっていった。
「そういうわけにもいきません。助けてもらっただけでなく、迷惑までかけてしまいましたし、何もしないなんてできません。なにか、お礼をしなければ。」
「いや、本当にそういうのはいいんだって。」
俺は思わずヴェロニカの方へ目を向けた。頼む、助けてくれ。
しかしヴェロニカは優しげに微笑むばかりだった。その笑顔は聖女の如し。
少女は止まらない。
「えっと、なにかして欲しいこととかありますか?欲しいものとかありませんか?」
何かを言って、急場をしのがなければ。
「あー、わかった。じゃあ、こうしよう。とりあえず今日のところはこれで終わりにして、また今度お礼をしてもらうっていうのはどうだろうか。その間にお礼の内容を考えてくれればいいよ。」
「また今度、ですか?わかりました。じゃあ、名前と住所を教えてください。」
彼女の食い気味な態度に、俺は押されるばかりだった。
「あ、ああ。名前ね。鬼塚宗吾だ。住所は、えーと、とりあえず『猟犬』の本部にいると思う。」
「オニヅカソウゴさん?」
「ああ、そうだ。覚えにくかったらすまんな。」
「大丈夫です。もう覚えました。オニヅカソウゴさん!」
「フルネームは勘弁してくれえ。」