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僕が死んだら、不幸を下さい。  作者: 春夫
『透の物語』
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結成

私達は藤沼家のある部屋へと入った。

畳の特有の匂いが鼻いっぱいに広がる。


「よいしょっと・・・。」


裕作君が押入れの襖を取る。

私もそれに手伝う。


私以外のメンバーは何してんだとキョトンとしているのは、放っておこう。


私と裕作君は手伝い押入れの木の板の仕切りを取る。


「・・・押入れって秘密基地っぽく自分で改造したことあったなぁ〜。」


私達が作業してたら、天峰君が思いふけるような声を出した。


「・・・はっ、子供ね。」


梨絵の彼への辛辣さは変わらない。


「え?いいじゃん。子供っぽくても。

落ち着ける場所って必要だと思うよ?な、愁?」

「え?僕??」


天峰くんは同じ男の子である愁君に同意を求める。

愁君は数秒考えると・・・。


「・・・押入れに入るときは身を隠すときか、冬の寒さを紛らわす時の僕に聞く?」


自分の過去を混ぜて返した。


「だからさ、こういうときはマジの事実で返すんじゃなくて、小ボケも混じらせて嘘でいいから同意するんだよ。

じゃないと本当に俺が空気読まない最低クソ野郎になっちゃうから。

・・・あ、小林さんやめて。

その蔑む目を本当にやめて。」


居たたまれなさそうに視線をそらす天峰君。

彼は本当に、誰とも分け隔てなく接せるね。


「す、翆さんなら分かるよね?ね?」


逃げ道として私に同意を求めてくる。

ん〜、秘密基地か・・・。


「私は屋根裏に作ったなぁ〜。

ダンボール買って、床に敷いて、夜空を書いた絵を天井いっぱいに貼って、ながめもしたなぁ〜。

あ、余ったダンボール重ねて椅子とか机も作ったっけ?」

「クオリティーが全然違った。」

「天峰君はどう改造したの?」

「改造っていうか、家にランプあったから天井に吊るして、小型扇風機を置いて涼しくして、漫画を並べただけだな。」

「「・・・普通〜。」」

「はい、そこのロマンもわからない二人はお黙りください。」


まぁ、梨絵や愁は良くも悪くも疚しいことしたことは無いからね。

悪事大好きな私や捻くれてる天峰君の気持ちはわからないか。


「ほらほら、お前ら雑談はもういいだろ。」

「そうね、皆、注目っ!」パンパンっ


手を叩くと三人は何も言わなくなり私に集中する。

うん、この従順さは楽でいいね。


「さて、再度説明するけど、私が今回ここに連れてきたのは私達で組むバンドの練習場を紹介するため。

もう一つ言えばここが私達の新たな拠点になると教えるため。」

「俺からしたるいい迷惑だがな。」


祐作君が表情を変えずに言う。

嫌味ではあるが本気では嫌がっていないのがわかる。


「どうせ、敷地有り余ってるんだからいいでしょ?

それにここに来るたびに家事に私達も参加するし。」

「ま、そういうことでお前らには時間に余裕があるならここの家事を手伝ってもらうことになってる。

異論は認めん。」

「わかりました。」

「うぃっす。」

「それぐらいはちゃんとするから安心して。」


三人の聞き分けの良さは利点だね。

こっちが変な苦労することもない。


「色々ルールはあるけど後でか見渡すから確認しといて。

ここでなにか質問はある?」

「はい!」

「はい、天峰くん。」

「ここが新たな拠点なら、好きなときに来ていいんすかね?」

「・・・。」


私は祐作君に視線を送る。

ここの所有権を持つのは藤沼家の親族だ。

故に使うにあたって私に決定する力はない。

裕作君はう〜んと悩んで・・・


「まぁ、いいんじゃないか。」


普通に許可を出した。


「どうせうちには親はいないし、保護者となる人は海外だし。

好きなときに来ていいぞ。」

「なるほど、了解です。」

「なんで突然そんな質問したの?」


天峰君は納得したかの世な表情をしたので訪ねてみる。


「だって、翠さんの性格からバンドを組むってことは、これから厳しい練習が・・・毎日までは行かなくても始まるってことでしょう?」

「まぁね、4人の息を合わせるようにして、演奏力を抜擢させないと楽しくないからね。」

「なら、練習がない日でもここ来て練習しないといけないでしょうに。

時間が開けば実力に差がつくのは目に見えてるじゃん。」


なんと先を読んだか。

さすがは天峰くんだ。

私の時間短縮激ハードなギター訓練を終えただけはある。


「流石は天峰くん。分かってるね。

そう、これは私からのアドバイスだけど・・・貴方達、やるなら・・・本気でしなさい。」


私は声音を低くする。

自分の本気を伝えるならすこしの威嚇は加えないといけない。


「私達は仲間だ。

これから一人一人が全力になり、協力して最高の作品を何個も作り上げる。

だから私は・・・誰一人の妥協を許さない。」


私は声を大にして三人に私の本気を伝える。


「仲間が頑張ってるのに頑張ろうとしないやつはこのチームにいらない。

そんなやつは私達に、いや・・・私へと侮辱とみなして倍返しにやり返して、即座に私は追い出すからそのつもりで。」


三人の表情は揺るがない。

知っているのだ。

私の言ったことは普通のことで当たり前のことだと。


「でも実力差ってのはあるよね。

仲間一人が上手すぎてそいつに頼り切ってしまい、気づかないうちに自分の本気がでなくなっていた、なんてのは普通のこと。

そればかりは私も責めない。

だってそれは誰かに言われれば、気づいてしまえさえすれば治せることだからね。」


無意識の行動は私も攻めようがない。

私が許せないのは・・・自覚があるのにそれに身を投じてしまうことだ。


「私は・・・努力する子が大好き。

結果も出す子はもっと好き。

けど・・・そんな子が周りの努力をしなくなった人間に邪魔をされ、諦めることを覚えて立ち上がらなくなったのを・・・見たことがある。」


私は私の中にある晴之の記憶を元に、三人に感情を語る。


「その人は新たにきっかけができるまでずっと無意味に命を削っていた。

私はそれが不条理だとおかしいだろと怒りを覚えた。」


頑張ってる人が報われるのは、地球上では珍しいことだ。

そう、珍しく、一番難しいことだ。


「でも同時に、それは本人の実力不足で、耐えきる心を持っていなかった本人のせいでもあると思った。」

 

けど私は報われた人間の人生を知っている。

いろんなことを学び、ときに人と傷つけ合い、ときに人のためになり、笑いあい、愛し合い、臆病になろうとも、勇気を持って、挫けず、前に進んでいった生き方を知っている。


そんな知識が私にはある。


『力のある人間にはその力を人々のために使う義務がある。』


誰かがそんなことを行っていたような気がする。


身勝手な意見だ。


でももし・・・それが本当なら・・・私はこの子達に幸せを伝えなければならないらしい。


いいよ、上等だ。


半端な幸せじゃ満足しないせいで余裕のないけどやってやろうじゃないか。

・・・幸せにしてやる。

三人の心を強くし、社会で安全に生きていき、人に愛され、愛せる人間へと育ててやる。


「そんなことを知ってる私だからさ・・・君たちに命令する。

三人共、自分の実力を一つでいいから上げ続けなさい。」


私は3人を順番に指挿していく。


「梨絵ならピアノ。愁君ならドラム。天峰君ならギター。」


三人の目は真剣なものになっていく。

わかっているのだ。

これは冗談ではなく本気なのだと。


「私はもう使うだけならギターもピアノも完璧にした。

もちろんそこまでしろとは私も言わない。

1つでいい。誰にも負けないと得意な事を手に入れてくれればそれだけで君たちに存在意義は出来る。

社会へと武器へともなり、安心を覚えられて、したいことができる様になる。

それだけで・・・君たちの心は誰よりも強靭になる。」


多分今の彼らにはわからないだろう。

こんな大人が言うような人生観、伝わりはしないだろう。


でも本当のことなんだ。


晴之が武術を、恋人を、かけがえのない人たちを手に入れたから、挫けそうなときでも前に進めたように・・・。


曖昧でいい。


自分にはこれがある。


その一つで彼らの心に余裕はできるのだ。


「ここにいるなら、いたいならその存在意義を成長させ、守り続けなさい。

守り続けられず・・・メンバーとして足を引っ張るだけの存在なら・・・メンバーから・・・除外する。」

「「「・・・。」」」


真剣な彼らの瞳は変化しない。

私の言葉を真っ直ぐ受け止めてくれたということだろう。

私はニヤッと笑い・・・


「返事は?」

「「はいっ!」」


愁くんの以外の二人私についてくることを覚悟した。


「・・・やっぱり・・・僕では・・・迷惑が・・・」


愁君・・・。


彼は置かれていた環境のせいで基本的に消極的だ。

ある程度の生きれるすべを手に入れること以外に関しては、基本見向きしない。

しかし、彼も子供。

楽しいことはやっぱり好きなのだ。


誰かと協力したいと思うし、誰かと雑談して笑い合いたいとも思うし、勝負事で馬鹿と言われるほど熱くもなりたい。


その殆どを彼の過去が、彼の足枷となるものが邪魔をする。

彼は混ざりたいのに・・・その邪魔せいで、自分の欲のせいで・・・壊れてしまう・・・そう思っている。


その程度で壊れるチームなら、仲間なら・・・私達はただの阿呆だったとなるだけなのに。


結局のところ、彼は自分の願いが無残に消え散る事に・・・恐怖している。


「舐めるなよ?・・・この私を。」


そんなことを予想できない私だと思うか?


私は押入れないまで足を運ばせ、小さな窪みに手をかける。

そして思いっきり引く。


木材の扉は開く。


私は数段の階段を降り、先にある部屋に三人を入れる。

暗くて見えない部屋。

三人は何ここと疑問符を浮かべたところ・・・


パチッ


私はポチッと証明スイッチを押した。


「「「・・・うわぁ〜!」」」


部屋は照らされる。

そこに映るのは・・・


「新品のアコースティックギターだっ!エレキもあるっ!」

「グランドピアノっ!キーボードもある〜!」

「す、凄いっ!・・・ドラムも全部揃ってるっ!?」


新品でキラキラに光る楽器たちだった。

三人はテンション高く、それらに触れ、使えるのか確かめてる。


「それはもう君たちのだ。

そしてここは互いの技術を高める練習場だ。

ここなら音が漏れ、他人に迷惑がかかるなんてことはない。

好きなだけ触っていいっ!」


お互いを嫌っている天峰君と梨絵でさえ笑い合っていた。

ふむ、天峰君こ音楽大好きになる洗脳は完璧に完了したかな?


「・・・ん?寒気が・・・。」

「さ、3人とも驚いてくれたかな?」


天峰君のセリフを無視し、三人に尋ねる。


「うんっ!本当に驚いた!」


梨絵は私には抱きついてくる。


「・・・これいくらしたんだ?どれも新品だろ?

よくもまあ、これだけの資金とこんな場所を見つけたね?」

「この場所を見つけたのは本当偶然だったよ。

祐作君に音楽をしたいってこと伝えてなかったらここは見つからなかったね。

資金についてはな・い・しょ♪」

「うわ、手出していいのか不安になってきた。」


素直に喜んでくれない天峰くんだけど表情は楽しそうだった。

そんな笑顔見れただけでも儲けものだろう。


横目で愁くんを見た。

どこかぎこちない、けどソワソワしている雰囲気を持っている。

彼にはドラムで演奏する知識はあれど、技術はまだない。

使ってみたくてソワソワしているのかな?


「よし・・・。」


私はドラムの前の席に座る。

2つのスティックを持つ。


梨絵と愁は何するのと疑問符を浮かべて、天峰君はお人好しめと苦笑していた。


私は3人に向かって、私の本気を伝えるためにスティックを振るう。


梨絵は凄いと思ったのか、嬉しそうで楽しそうな笑顔を。

天峰君は呆れたような顔をしていてムカつくが、今は手を出せないので許してやろう。

愁君はどんな顔してるかな?

見るのは最後にしよう。


今は・・・この演奏を楽しもう!


私の音楽は想いを描き上げるもの。

指の一つ一つの動き。

音の調和。

一つの楽器の出す音の大きさも。

全ての行動に意味を乗せる。


「あ、そうか・・・。」


演奏している最中、あることに気づいた。


私は今演奏できていることに。


私の作曲はうまくいかなかった。

理由が不明だった。

何度やっても何度直しても、聞いていて気分の良くなるものにならなかった。


そう・・・ただなんの思いも入れず、作ることにこだわった歌はどれもクソと同等になるのだ。


「・・・単純・・・すぎるよ。」


わかった気がする。

私に出来ること。

私がしたいこと。


ならもう・・・進むだけ。


「え?」


思いっきり叩こうとすると耳に音が入る。

私が描いてはいない音。

横を見れば、天峰君がアコースティックギターを持ち、彼も気のままに演奏している。


「合わせるだけなら、あなたの為なら俺は出来るよ。

今まで散々・・・仕込まれて来たんだからさ。」


ほら・・・彼は平然とこんなことをしてくるから気が抜けない。

本当に私の心を動かしてくれる。


予想外の彼の言葉に優しい微笑みに、ドキッとした。


そしたら・・・今度は力強い音が耳に入ってきた。


梨絵だ。

梨絵が負けないと言わないばかりに合わせてきた。


その力強さに天峰くんの音が圧倒される。 

天峰くんも負けじと強くした。


そしたらついには二人の音が主軸になってしまう。


仲がいいことで羨ましい。

が、私を置いて行くなど、許せないな。


私も音を強くした。


「楽しい。」


無意識に口から出たぐらいに私は心から思った。


即興演奏。

多分お互いを知っている私達だからこれほど上手く行っているのだろう。


私は思うがままに手を動かした。

今の気分を、今の気持ちを音に乗せる。


気づけば私達の額に汗が垂れ流れていた。 

不快じゃない。

というより二人も気づいてないほど演奏に集中している。


そして最後にはその汗は、床にポタリ、ポタリと落ちていた。


合計、約3分。 


私達は一つの音楽を即興でなんの打ち合わせもなく、演奏した。


目の前の祐作君と愁が拍手する。


「こ、これは・・・扇風機かクーラー欲しい。」


天峰くんかギターを置き、暑いのか、手をパタパタさせている。


「そうだね。扇風機は置くことにしようか。」

「お、お風呂入りたい。」


梨絵も同意するほどだったのなら必須だね。


私は苦笑しながら愁君に顔を向ける。


「さて愁君。さっきの演奏聞いてどうだった?

やりたくないって思えた?

したいって、やってみたいって思わなかった?」


彼はの羨ましそうな顔を見れば答えなんて丸わかりだ。


「確か迷惑がかかるだっけ?・・・私が認めたこの子達が、そんな程度で絶望するほど弱いと思うか?」

「まぁ、現実にいじめられてる俺は痛くも痒くもないよね。

物理的強度も精神的強度も人一倍あるしな。。」

「わ、私は分からないなぁ〜。」


梨絵だけは不安だが、まぁ、私がいるから問題はない。


「何を恐れる必要がある?障害?怖いからやらない?逆だよ。障害なんてのはあったほうが丁度いいんだ。

そっちのほうが乗り越える目標もできて楽しい。」

「まぁ、翆さんに勝負で勝てたときは嬉しいよね。

そのために計画建てるのは楽しみの一つでもある。」

「後でお仕置きね。」

「私はそこまで才能ないから、同じにしないでねっ!」

「梨絵、今度お勉強会しようね。」


二人には再教育が必要だな。

天峰くんには私の威厳を。

梨絵には私の持つ知恵を。


そんなことを決めながら、私は愁君に手を差し伸べる。


「それにね、やめたいって思うならいつでもやめればいい。

止めはしない。

くるもの拒まず、さるもの追わず。

これが私の心情。

私はそれに従うだけ。

だからさ・・・。」


私は彼を人差し指で指す。


「自分の心に正直に言いなさい。

私達とともに・・・夢・・・描かないか?」


彼の中にどんな思いがあるかはわからない。

一部は知ることはできても、全部わかるなんて思わない。

でもそんなの正直関係ない。

何をしたいか、何をするか、どうなりたいか、どうしたいか。

それしか私達には必要ないのだ。


愁君は私の顔を見て、深呼吸をした。


彼も覚悟を決めるらしい。


彼は頭を下げてこういった。


「俺も入れてくれっ!」


敬語ではない、心からの叫び。

私はニヤッと笑い彼にこう言った。 


「もちろんっ!ようこそっ!私達『ミチカゲ』へ!」


私は彼の手を、引っ張った。

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