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僕が死んだら、不幸を下さい。  作者: 春夫
『透の物語』
38/41

祐作の家

「ほら二人とも、ついたよ。」


俺と小林さんが馬鹿な言い合いをしていると、翆さんが突然立ち止った。


「ここが私達の新たな拠点・・・ですっ!」


ムフっ!とテンション高く言い放ち、左手で横の木造建築の一軒家を示した。


「あぁ、そういう事ですか・・・。」


俺と小林さんは何処ここ?と疑問に思い、その家を見た愁は納得という感じでつぶやいた。


「なに?愁知ってんの?」

「あー、まぁ、僕の知り合いの家っていうか・・・。」

「?」


変な濁し方をする愁。


「愁に友人っていたっけ?」

「いやまぁ、いないけど・・・ここの人はなんていうか観察し、観察されて、利用し、利用される関係の人・・・かな?」

「何その闇深そうな関係・・・。」


俺が引いていると・・・


ピンポーン♪


翆さんが躊躇なく家のインターホンを押した。


「は〜い・・・!」


家の中から男の声が聞こえ・・・ガラガラガラと横開きの扉が開く。

そして見えたのは・・・


「・・・あぁ、お前らか。」


約163センチほどの身長も持つ仏頂面の男の子が出てきた。

明らかに年上で多分中学生ぐらいだろう。


「よっす、言ってた通り来たよ。」

「・・・これから騒がしくなりそうだな。」

「おいおい、私の顔見て言うのは失礼ってもんでしょwww」

「笑いながら言ってる時点で思い当たる節ありありだろうが。」


・・・翆さん、そんなフレンドリーに会話されると俺だけ場違い感が凄いです。

何かほか二人はその場でぽつんと立って平然としてるし。

普通知らない人が前にいたら緊張しない?


「・・・と、久しぶりだな、愁。元気にやってるか?」

「えぇ、お久しぶりですね。ちょうど半年ですか。

僕は相変わらず・・・元気には過ごせてますよ。」


苦笑いをして返す愁。

目の前の男の子はそれに、優しく微笑み返す。


「そうか・・・。辛かったらいつでも来ていいからな。」

「ありがとう・・・やっぱり恵まれてますね。」


・・・いや、なんだよこの意味有りげな会話。

俺が場違いじゃん。

多分内容は愁の家庭のことだろうけどさ、重いよ。

挨拶でこんな和むけど意味深な会話しないでよ。


「・・・まぁ、翆がいるならお前もいるよな。」

「ついでって感じがして悲しくなっちゃうよ、祐作くん。」


あれ?小林さんも面識あり?


「それにしても半年で雰囲気だいぶ変わったね。

優しくなった感じがするよ?」

「まぁ、俺も色々あったからな。

もう子供であろうとするのは止めたんだ。」


あのさ、人の前で人生語らないでいただけます?

この旗から見たらちょっとかっこいい会話聞いてると背中が寒く感じるんだよ。


「・・・と、知らない顔がひとりいるな。」

「そっか、初対面だっけ?」

「あぁ、俺は知らないやつだ。また新しい玩具か?」


男の子は俺を見て表情も変えずに言い放った。

おい、玩具呼びやめろ。

確かに翆さんからしたら玩具同然であろうけど、俺にも人権はあるから。


「ん〜ん、玩具ではないかな。言うなれば・・・何が一番合うかな?」

「主人と奴隷。」

「そんな感じだね。」

「認めやがったっ!?すんなりと認めやがったっ!?」


俺が言ったことをそのまま肯定された。

恥ずかしがりやでなければ、本来この人は恋人と躊躇なく言っていただろう。

立場は奴隷となったが恥をかくよりマシかな?

いや、それでも現代で奴隷はおかしいだろ。


「・・・珍しいな。お前だれかを側に置くなんて。」

「私も人間だよ?息というか波長というか、そばにいて安心する人なら、首輪つけて、手綱握っとくよ。」

「ペットかよっ!俺は犬と同類だったよっ!こんちくしょうっ!」


今度縄でも持ってきたのなら瞬時に逃げてやろう。

講義しようと口を開こうとするが・・・


「騒いだらお仕置きだから。」

「・・・。」


ま、出来ないんだよね。

わかってたけど。


「・・・飼いならされてるなぁ〜。」

「・・・認めようっ!俺は・・・この人より・・・弱いっ!」


悔し涙を流すのは必然だった。

ってこのままこの人に紹介任せたらどんどん俺の印象が悪くなっていくに違いない。


「・・・はぁ〜、どうも。俺は神無月天峰って言います。

翆さんの奴隷でもペットでもないので間違えないでください。」


翆さんが余計なことを言う前に自己紹介する。


「・・・おう、俺は藤沼祐作だ。

翆とはいるのは大変だろうが頑張れよ。」


あれ?この人は天国から迎えに来てくれた天使であろうか。

初めて慰められた気がするし、この言葉を俺は待ってた。


俺が感激してると・・・


「ん、祐〜?お客さんはだれ〜?」


男の子の子の後ろから170センチの長髪の女性が来た。

セーラー服というのだろうか。

高校生が着る服を着ている。


「あ、椿さん。一昨日ぶりです。」

「お〜、翆ちゃんっ!よく来たねぇ〜!」


翆さんが挨拶したら、女性は笑顔になり、翆ちゃんに抱きついた。


「・・・ぷはっ!く、苦しいです!」

「え〜、もうちょっと抱きつかせてよ〜。

折角、妹分が来たんだからさぁ〜。」

「大丈夫ですよ、どうせこれからほとんど毎日はここに来るんですから。」

「・・・ん〜、ま、そっか。」


翆さんはグイッと女性を引き剥がす。

とても残念そうだが、納得した感じで抱きつくのを止めた。

翆さんの来訪に喜んだ女性は、次に俺たちを見た。


「・・・。」

「「「・・・。」」」

「・・・この子達がメンバーなの?」

「まぁ、そうですね。

でも本人たちの意思を尊重するのでメンバーが変わったり減ったりするかもですが。」

「へぇ〜。」


女性の目は俺たちを順番に捉えていく。

野獣が獲物を観察するような目だ。

・・・俺の苦手な視線でもある。


「・・・。」すっ・・・

「いや、私を盾にすんなよ。」


俺は逃れるために翆さんの背中へと身を潜めた。

翆さんからツッコミが来るが俺はやめない。


「翆さんなら天変地異が起こっても生き残れるタフさは兼ね備えてるでしょ?

ならいいじゃないですか?」

「流石にそれは私でも死ぬからね。

私の肉体は鉄と同じではないから。」

「でも俺より強いからいいじゃないですか。

それにどうせこれから俺はアナタのせいで滅茶苦茶苦労するんですから許してくださいよ。」


情けなかろうが知ったこっちゃない。

嫌なものは感じたくないし、もう翆さんに対して恥なんて目の前で訓練の厳しさに耐えきれず吐いた時から感じてなんざいない。


「・・・なんかあいつら似てるな。」

「やっぱりそう思いますか。

僕もです。頭の良さとか身体能力は似てないのに、姑息さと言うか開き直る所は似てますよね。」


祐作さんと愁がとても失礼なことを言ってくるが、ここで怒るのは三流のすることだ。

丁寧に説教してやる。


「おい、お前ら聞こえてるからな。

失礼ってこと自覚しろ。

後、愁、日頃鍛えてるやつに寝るのが趣味の男が身体能力で勝てるわけ無いだろ。

常識を考えろ常識を。」

「・・・恥になることを堂々と言うところなんて激似だな。」

「ちょっと、それは私にも侮辱になるからね。分かってる?」


祐作さんは今度は翆さんの方へと向き・・・


「侮辱も何も事実だろ?

じゃあ、逆に聞くが、お前今まで何度言うこと聞かないやつを力で服従させた?」

「50人くらいかな?家の兄にはゲームで勝負して有り金巻き上げたし・・・」


ん?前に康が涙目で稽古来たときあったな?

・・・そのせいか。


さらっと怖いことを言う翆さんに恐怖を抱く。


「何回も負けてるのに懲りずに競争持ちかけてくる子にはコンビニでの唐揚げを奢り続けてもらったし・・・。」


梨絵(・・・一ヶ月前の坂口さんが召使いみたいに翆ちゃんの後ろについていたのはそのせいなんだ。)


「丁度愁には練習試合で天峰くんに負けたから、逆立ち腕立てを20回ほどさせたなぁ〜。」


俺・愁(3時間も炎天下の中走り込み続けた後にやり合うほどの体力なんて残ってるわけないだろ!(でしょっ!))


あれもお互いフラフラした動きで偶然手がコツンと当たっただけだからね?

俺も攻撃しようとかおもってなかったからね?


「天峰君には・・・」

「放課後の時間殆ど貴女といるからね?

一緒に居なかったらアイアンクロー決めてくるし・・・。

勉強とか、体術とか、絵とか、音楽の訓練も強制だし・・・。

ていうかそれら全部、血反吐を吐かされたし・・・。

まだギターのせいで破けた手の皮治ってないからなっ!」


あれ?よく考えたら俺だけ桁違いに酷くね?


「・・・どこが恥なのよっ!」


清々しいほど真顔で反省の色なしなのがわかる。

しばき回したい。


「「「自分と他人の実力差分かってんだから、手加減してやれよ!

大人げないわっ!

後、奴隷扱いもやめろっ!人間らしい心持て!」」」


男陣の息が揃ったのは言うまでもない。


「いいじゃない、このために力つけたんだから。

弱いほうが悪いんですぅ〜、私は悪くありません〜だ。」


プイっと、顔を背ける翆さん。


「・・・二人とも、俺ってこんなに酷いですか?」


俺は切実にこの人と似ていると言われた悲しさを表情で彼らにぶつけた。


「「ごめん。比べる相手がおかしかった。」」


わかってくれたならいいんです。

素直に誤ってくれるだけこの人たちは優しい人だ。

本当に・・・。


「ふ〜ん、君は翆ちゃんと仲がいいんだねぇ〜。」

「ひっ!?」


急に椿さんの顔が近くなった。

覗き込むようなまん丸とした目がちょっと怖い。

どこか嫌な威圧感を感じる。


「こら、姉ちゃん、コイツラをいじめんな。」

「人聞きの悪いこと言わないで。

私はただ、気になったから見てただけよ。」

「その目が怖いのは天峰の表情見てたらわかるだろ?

ほら、家ん中戻れ。」

「中学生になったからふてぶてしくなったわね。

姉としては弟の成長を喜ぶべきなのかしら・・・。」


ブツブツ言いながらも従う椿さん。

不満ありまくりなところを見ると、これからも色々と関わってくる気だろう。

・・・あの目に耐性つけないとな。


「・・・さて、翆、お前らが来たのはあの事でいいんだよな?」

「うん、連れて行ってくれる?」

「当然だ。」


祐作さんが家の中に入っていく。

翠さんがついていくから、俺達も後を追う。

玄関で翠さんが俺たちの方を向いた。


「・・・きっと驚くよ、楽しみにしてなね。」


いい笑顔でそう言った。

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