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僕が死んだら、不幸を下さい。  作者: 春夫
『透の物語』
37/41

移動中・・・

「で、なんであんなこと言ったんですかね?」


放課後、翆さんは俺たちをあるところに連れて行くつもりらしく、俺達は彼女の後を追った。

その移動中、俺は彼女に小林さんとの勝負について尋ねた。


「そりゃあ面白いからっ!」


俺は何度のこの笑顔を引っ張ってやりたいと思ったことか。


「あのねぇ、わかってます?これで俺が負けたら多分俺はもう貴女とは会えなくなるんですよ?」


一つ何でも言うことを聞く。

俺を嫌ってる小林さんのことだ。

俺が翆さんと会うこと話すことをの一切を遮断してくるだろう。

そうなれば約束は守る翆さんのことだ。

翆さんはもう俺に会わないし、俺は翆さんと話すことができなくなる。


それは流石に・・・寂しい。


「・・・大丈夫大丈夫。勝てばいいだけの話だから。」

「どこにそんな自信があるんですか。」


そう思う俺と反対に翆さんは心配なんてしてなさそうだ。

これは俺と会えなくなるのは別になんとも感じないからなのか、それとも俺を信じていてくれてるからなのか・・・


ぜひ後者だと願いたい。


「言っときますけど俺は勝負事は勝てたことは少ないですよ。

翆さん相手を抜きとしても、俺は賭けるものが、責任の取らなければならない勝負で勝てたことは一回もありません。」


テストでも、スポーツでも、俺はどうでもいい試合以外勝ったことがない。


「それは知ってる。

君がどれだけ勝負を挑まれ、それに負け、どれくらい失ってきたかってのは見た。」


例えば水泳だと、ある知り合いが掃除を賭けに俺と競争した。

実力としては同じであったが、俺の最後の勝ってやろうと言う焦りのせいで脚を攣ってしまい負けた。

給食の残り物じゃんけんでもおなじ、決めた手なのに、深読みしすぎて変えて負ける。


こんなくだらない事だけど、それは事実なのだ。


たがら俺は大体どうなるか予想できる。 

多分俺は・・・負ける。


「でもね、私は見たいの、そう負け続ける君が勝つために一歩を踏み出す姿を。」


なんとも格好良く言っているがこれを訳すと・・・


「ただ、俺が苦しむ姿が見たいだけでしょうに。」


ドSなだけである。


「さっすが、私が認めた男だねぇ〜。」 


感心したのかそんな上から目線で言われる。

ムカッと来るのはもう日常化した。


「期待してるよ、その予想を覆すことをさ。」


簡単に言ってくれる。

この人はことの重大さに気づいてない。

負けてしまえば、おそらく俺の数ヶ月間を無に返すことになる。

休みという夏休みの全て休まずに、実際に血を流し、血反吐を吐き、頭痛に悩まされ、熱を出しながら手に入れた技術が無駄になってしまう。


だって・・・小林さんとの勝負で負けるってのは・・・


俺の手に入れたものを、元々あった目的のために行使する事を禁止することを意味しているのだから。

翆さんの為に動く事が・・・もうできなくなってしまう。


(・・・はぁ、なんて人だよ。)


翆さんと出会ってからの数カ月を思い出す。

そこで気づく。

俺は翆さんにいつの間にか、彼女がいないと駄目な体にされていた。

手に入れた技術は彼女のためのものである為、自分のために使おうなんて考えれない。


「・・・負けても文句言わないでくださいねっ!」


俺は嫌だ。

この人と離れたくはない。

翆さんのために生きたい。

だから小林さんとの勝負を負けられない。


でも俺は臆病だ。

今まで散々負けてきた人生。

妥協し、諦め、追求してこなかった俺は勝つと分かっている勝負でもとても怖い。

だからこの言葉は俺の逃げだ。

全部失っても大丈夫なように本人である翆さんのせいにしようとしている。


最低だ。・・・でもこんな性格なのを彼女は知ってる。

知ってて受け入れてくれている。


臆病で弱虫な俺を受け入れている。


ほら、今もこんなに・・・


「私と離れるのは嫌で嫌で仕方ないのは君でしょうに。

・・・でもいいよ。

私は文句を言わない。君を嫌いにならない。

会えなくなるかもしれないけど君を想い続けよう。」


耳をくすぐり体を温め、心を落ち着かせてくれる言葉で俺を包んでくれる。


「でも私は期待する。

貴方が最善の方法で最高の結果を叩き出してみなさいな。」


最高の笑顔を俺に向けながら言ってきた。

あぁ、やっぱり本当に・・・この人には敵わない。


「・・・これで勝ったら俺の言う事聞いてもらいますから。」

「お〜、怒ってるぅ〜♪でもいいよ。

これは私の落ち度でもあるからね。

天峰君が勝ったのなら私が一つ・・・何でも言うことを聞いてあげる。

何でも・・・ね。

でも、負けたら・・・逆だから。」


俺の耳元まで顔を近づけ、俺の体を震わせる。

その声は悪魔が囁くように甘く俺を誘惑し、天使が囁くように苦く俺を律した。


ほら・・・やっぱり敵わない。


何も言えなくなった自分を自覚し、またもそう思ってしまった。

でもここで勝てばそれも覆る。

震える口を抑え、熱くなった頬を隠すため、彼女から視線を外す。


少しでも見返すために言い返す。


「・・・このドSサディスティックめ。」

「わかってるじゃ〜〜ん♪」うりうりうり〜


翆さんはニヤニヤと笑いながら久々に俺に抱きついてきた。


「ちょっと!翆ちゃんに触れないでっ!」

「お二人ともここが外ってことわかってます?」


その様子を見ていた後ろの二人が詰め寄ってきた。


小林さんは翆さんを剥ぎ取り、愁は呆れた目を向けてきた。


「ちょっとっ!抱きつかれたのはオレっ!

睨むのはおかしいだろっ!」

「煩いっ!お前がいなかったら全部それで済むのっ!

さっさとくたばれっ!」


この人毎度毎度俺へのあたり強くない?

女性は男が苦手って聞くからかそのせいか?


「なんで俺そんなに嫌われてんだよっ!?」

「そんなのも分からないのねっ!

これだからこの男はっ!」


あ、違うわ。


「あっ!分かった!お前男嫌いじゃなくて俺が嫌いなんだなっ!」

「当たり前じゃないのっ!さっさと溺れなさいっ!」

「くたばれの次は溺死かッ!心の広い俺じゃなかったら嫌われるぞっ!」


ほんと俺の優しさは深海並だよ。

この人といい、翆さんといい、この人達を許せる俺は多分世界一優しいね。


「お前以外に言わないわよっ!」


訂正、この人に関しては理不尽すぎて許すどうこうの問題ではなくなった。


「「ウググググッっ・・・!」」


睨み合う俺達は言うなれば犬と猿だ。


「「もうこいつ(この人)どうにかして(しろよ)っ!!翆ちゃん(さん)っ!!」」

「ハハハハハ〜、面白いからもっとやれ〜。」


頼みの綱も意味はないらしい。


「「ギニャアアアアァァァァァァァァっ!!」」


掴み合おうとすると・・・


「ハァ〜・・・。」

「「ギャフンっ!?」」

「3人とも恥ずかしいの大人しくしてください。」


愁に止められた。

どうやって止められたかは割愛しよう。


「「はい・・・。」」


こういつも礼儀正しい人が怒るのはギャップの差が激しくて怖いよね。


俺達が睨み合うたびに、愁の眼は光るようになった。

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