運命の鬼ごっこ
どうも、小学4年生。
好きなものは豚の角煮と小籠包。
嫌いなものはアボカドとネタが甘海老の寿司。
特技は逃げる事とサボること。
神無月天峰です。
本当に突然ですが、皆さんは知らない人に話しかけられたらどうしますか?
現代社会では女性に男性が話しかけると不審者や変態とされるような厳しい偏見があります。
まぁ、確かに、ハゲてデブで汗だくな人から話しかけられたら女性からしたら恐怖ものだろう。
イケメンでも、麻薬やらヤクザやら暴力やら誘拐やら、そんなものがはびこる世界なのだから怖いと思っても仕方はないのです。
しかし・・・その逆ならどうでしょう。
話しかけてくる人は学校1とも言われ、子供なのに大人びた美人の女の子。
話しかけられる人はぱっとしない、出来損ないと言われ、陰キャオタクと呼ばれる男。
・・・な、真逆だろ?
あー、世のモテない男子諸君の言いたいことはわかる。
話しかけられるだけでも嬉しく思え。だろ?
けどね、俺から言わせてもらえば、「望んでもいないときに・・・対策も取ってないのに話しかけて来ないでっ!」って言いたいんですわ。
こんな状況の妄想とかしてたならまだ困らなかったよ。
毎朝、学校に新しい青春に出会うことを夢見る乙女な俺だけどさっ!
寝不足で頭も働かない今に来なくていいじゃんっ!
『おはよう。』って今まで会話もろくにしてないのになんでいきなりって、絶対みんな思うよっ!
目の前の美人に釣り合うほどの美形でもないし、陽キャ共のコミュニケーション能力なんて俺にはない。
そんな俺だからさ・・・
「あー、お名前をご確認してもよろしいですか?」
こんな失礼なことを平然と、目の前の同い年の女の子に聞けるんだよ。
皆んなだったら・・・どうするよ?
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「どうした・・・?」
昼休み、教育の森のトンネルの遊具の中で身を丸くしていた。
そしたら無言でついてきてくれた親友の江本健介が事情を聞いてくれた。
「いやね・・・面白いほど・・・今の俺にモテ期が来てるんだ。」
「それなら彼女ほしいとか呟いてたぐらいなんだから、嬉しいことでしょ。
なのになんでそこまで嫌そうな顔してるんだよ?」
俺はため息をつく。
元々、俺がこんな所で隠れなきゃいけなくなったのか。
それは今日の朝に遡る。
朝、目がしょぼしょぼする中、学校への道へと歩いていた。
そして、下駄箱の所で奴にあってしまった。
奴の名は本堂翆。
この学校で知名度の高い女の子だ。
成績はなんと全テストをいつも百点取ってるつまらなさから、狙って70点ピッタシに出来るほど優秀。
美貌もさることながら身体能力も多くの人たちからライバル視されている点からしてもいいというのがわかる。
先生からも暑い信頼があるため・・・付け込める点がない女の子なのだ。
だが・・・彼女は決定的に同い年の女の子たちとは違った。
誰にも好かれるようなんてしてないし、誰かに害しようとも、目立とうとも、人気者にもなろうとしない。
楽しみたい事はとことん楽し見ながら生きてるのだ。
学校での行事に参加している彼女を見れば誰もがそう思うぐらいに、彼女は人生を謳歌していた。
逆に俺はというと名前も覚えなかった彼女に少なからず羨ましいとは思っていた。
面倒くさそうなのによくやるなと、知り合いの実力ある大人達に向けてきた感情を、彼女にも同じように向けていた。
そのせいか平凡の俺には縁のない人物とも思っていた。
なのに今日・・・話しかけてくる。
最高の笑顔を向けて俺に関わってくる。
しかもそれは教室についてもずっと続いていた。
休み時間になれば終わるまですっと近くに来た。
4時間目の終わり、もう面倒くさいと、俺は本音が口から出る。
それに驚いたのか、翆さんは目を真ん丸にしたあと、またニヤッと今度は小悪魔のような笑みを浮かべ・・・
「嫌と言われても私は君が私に心許すまでずっと付きまとうよ?」
俺の日々の安寧の終了を告げてきた。
「な、なんでだよっ!?俺何もしてないじゃんっ!?」
「何もしてないとか私には関係ないよ。私の興味にあたったのが悪い。」
「り、理不尽すぎるっ!」
「あ、言っとくけど実力行使もいいけど君では私に勝てないから無駄だから。」
「むっ・・・。」
俺も少なからず男。
負けず嫌いなところはある。
「試しに・・・腕相撲してみる?」
だがこの誘いに乗ったのが駄目だった。
この勝負に誘い出し俺のちり紙にも等しいプライドを燃やすことこそ、翆さんの狙いだったのだ。
俺は挑発に乗り相手となる。
心の中では「体力勝負では俺は多分負ける・・・だから一瞬・・・始まった瞬間に決めるしかない。」とか思って挑んだんだが・・・
梨絵さんという女性の合図で始まった腕相撲。
合図と同時に全エネルギーをかける。
心の何処かで、ここで負けたら人生が終わると思った俺は最後まで油断しないでいたはずだ。
だが・・・
「はい、私の勝ち。」
だが俺以上の反射速度、瞬間に出せるパワー、どれもが俺は負けていた。
力を入れようとした瞬間・・・俺の腕は右に曲がって、体は右手に合わせて床へと倒れたのだ。
その時察した。
・・・この人に実力では勝てない。
積んできた質と量が違う。
だが恐怖はなかった。
もともと自分より強い奴も俺は知ってからか・・・特に怖いとは感じなかった。
でも不安は何故か凄かった。
この人に負けたままでいたらやばい人生歩む・・・そんな予想が頭の中を駆け回ったのだ。
「はい~♪翆ちゃんの勝ち〜。」
「・・・。」
「お?負けたのに悔しそうじゃないね?」
「・・・悔しいですけど・・・なんかそれ以上に危険が迫っているようで嘆けないんです。」
「お〜!」
翆さんは感心したように拍手する。
この行動は俺の予想があたっている証拠だろう。
何か他の勝てる勝負を挑まないと・・・そう思ったら・・・
「その予想はあたってるよ。」
翆さんが面白そうに俺に近づいてきた。
「君は私に負けると・・・もう私には逆らえなくなる。」
世間で言う『顎クイっ』をされてしまった。
こんなときめかない状況でされるとは思わなかった。
「いわば私のものになっちゃうのよ。」
・・キュンっ///!!・・・ッテ出来たらどれほど良かったことか。
きれいな顔が近づいてきて、甘い吐息が耳に掛かる。
俺は不意を付かれ、湧き出てくる不安と、翆さんの内側から出てくる得体のしれない恐怖により何も反論できなくなった。
後になって・・・俺の心は鷲掴みにされていたことを理解することになるのは、このときの俺は思いもしなかった。
「でも流石に腕相撲じゃ実力差があって公平じゃないよね。」
吐息も顔も離れる。
いろんな意味でドキドキしていた心臓は息を吹き返す。
「だから提案。・・・制限時間は君が家に帰るまで。
私に捕まらなかったら私は君の友達と戻ってあげよう。
この勝負・・・受ける?」
俺は真顔で聞き返した。
「拒否権は?」
「ナッシング!」
彼女は無邪気のように笑ってみせた。
・・・ってのがことの経緯。」
「どこのラブコメ主人公?
あんな美人な人のものになれるんだから嬉しいものでしょう?」
健介はふ〜んと興味なさそうにつぶやく。
「お前が俺だったら・・・従うか?」
「嫌だね、俺は子供に縛られたくない。」
「俺たちも子供だが同感。」
俺は周辺を警戒するしかない。
とりあえずは捕まらないように精一杯逃げよう。
「でも天峰よ、家に帰るまでって不利じゃないか?
昼休みのあとも授業あるんだからすぐに捕まるくない?」
「あー、そこは大丈夫。学校ではこの時間以外捕まえないんだって。
それに翆さんは先回りして捕まえるつもりらしいから、学校出てすぐ終わらせる気はないんだってさ。」
「なんか・・・自信の凄い人だな。」
「だろ?ま、向こうは俺の家知らないから、俺からしたらこの時間逃げ切ればもう恐れることは何もないっ!
はっはっはっ!この勝負っ!あと20分で生き残れば俺の勝ちだ。
勝ち残って絶対馬鹿にしてやるぜっ!」
油断していた。
「だ〜れを馬鹿にするって?」
「・・・へ?ぎゃああああぁァァァァァッ!」
腰が突かれる感覚がしたので後ろを向いてみると、いたのは翆さんだった。
気配が感じられなかった実力に怯え、俺は思わず大爆走して逃げ去ってしまった。
その臆病な性格のおかげか、見つかれば逃げるを繰り返していたら昼休みは終わっていた。
☆
「で、追いかけないの?」
「追いかけるよ、でも放課後に捕まえてもらうから今はゆるくでいいの」
(もらう?・・・捕まえるじゃなくて?)
「ま、いいか。・・・で、貴女は天峰のどこに惹かれたので?」
「んぉ?親友だから理由が気になるの?」
「いや、今となっては天峰の周りに変人が集まるのは普通のことだね。
貴女が狙うことに関しては特に心配なんてしてない。」
「・・・それからすると君も変人だよ?」
「おぉ、俺はゲームオタクだから変人の部類に入るだろうね。
でも、天峰とは親も知り合い同士だから生まれたときからの親友なんだ。
だから俺も変人の部類にはなるが、他の奴らとは例外。」
「へぇ〜、彼の周りには私みたいなのが沢山いるんだ?」
「いや、変人と言っても性格がの方が多いから貴女みたいなのは珍しいかな。
でも明確な理由を持って近寄られるのは、天峰にとっては初めてのことだから、理由が気になってさ。」
「なるほど、でも私がちゃんとした理由があるなんて良く分かったね?」
「まぁ、貴女は頭が良いからね。
それに初めてみたんだ。天峰の怯えてるような顔。」
「・・・私そんな怖いことしてるかなぁ〜?」
「・・・仲良くない人に四六時中追いかけられるのは怖いと思うよ。」
「ハッハッハ、彼の場合はそうでもしないと私の事覚えてくれなさそうだから仕方がないのさ。」
「・・・親友として否定できないのが辛いな。
あ?もしかしてそれが理由?」
「いんや、私の物にするのが主な理由。
それはもし失敗したときの保証。」
「・・・よくこんな勝負で従えさせられる自信があるね?」
「んふ〜ふっふっ♪彼の本性はMだろうからね。」
「あ、性癖的問題なんだ。」
「ま、それもあるけど・・・どちらかと言うと・・・」
彼女は立ち上がる。
「私は欲深いから欲しいものは何が何でも手に入れる性格なんだ。」
それを聞いた彼は、親友に『あとは頑張りなね。』とエールを送るのであった。




