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僕が死んだら、不幸を下さい。  作者: 春夫
『透の物語』
26/41

神無月天峰(かんなづきあまね)

2年生になった。

3年生になった。

4年生になった。


特に変化はない。

強いて言うなら、私と理絵はピアノ教室に入って技術が向上したり、兄の康が剣道場へと行き多くの賞状を手にしたり、親の私達子供を見る目が変わったのが大きな変化だろう。

だがその変化に連れ、敬が疲れた表情になっていった。

理由は・・・父のスパルタ教育だ。


私と康にとって父親のスパルタ教育は正直、どうでも良かった。

康は結果だけは運がいいのかちゃんと残しており、何も言われない。

私だと自由人なため、親が私を縛ることできない。


ご飯を人質にされようとも冷蔵庫から勝手に取るし、寝床を人質にされようとも家に侵入なんて朝飯前。

何をされようとも、もう母には拳で勝てるし、父は仕事で一日中は家にはいない。


ほぼ、私の自由は約束されたようなものだった。


故に父は私達の分の重荷を敬へといったのだ。


敬のために私が出来ることは、声を掛けるだけだった。



そんな風にうちの事情は変わっていった。

学校では多少私がいろんな意味で有名になっただけでそんな変化はなかったというのに。


まぁ、こんなふうに色々ありながらも日々は過ぎていく。

色ある出来事に思い馳せながら私は生きていた。


思いついた物語をメモして残したり、その内使うかもと初心者ながら時間かけて作曲したり、将来困らないために理想の肉体作りをしたりと・・・私は計画通りの日々にしていった。

予想外と言えることが起きなかったのが心残りである。

しかしそんな私の杞憂は3年の夏、吹っ飛んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そうそれは・・・日が照り輝く、暑い暑い夏の日の昼休み・・・。


私は涼しくなるために、『教育の森』という自然と多くの遊具を合体させたグラウンドの中の、木の上で小型音楽録音機で音楽を聞いていた。


目を閉じ、吹く風を肌で感じていたら、したから、声が聞こえた。


「あっつい・・・。」

「死ぬ・・・こんな中鬼ごっこなんて無理。」


下を見ると、木の影を利用して暑さを凌ぐ男子二人がいた。


「アイツ等なんでこんな中動けるんだろうな。」

「元気なんだろ・・・羨ましいや。」


普通に背が高い寝癖でボッサボサの頭をする男の子は座って体力を回復させている。

中背のショートヘアーの男の子は土の上とお構いなしに寝転がった。


「てゆうか、天峰のお兄さん、なんで俺たちに混ざって遊んでんだろうな?」


長身の子が中背の子に話しかける。

なるほど、背が低いほうが天峰って言うのか。 


「知らない。暇なんでしょ。」

「来年は中学生ってのに?」

「あいつはそういう人だよ。自分が楽しいのを1番にして生きる人だから。」

「勉学は二の次と?」

「中学受験するつもりはないらしいからね。

それに関しては博識で手先の器用な長男も同じだな。」

「頭いいのに勿体無い。」


木の隙間から遊具の方へと視線を移す。

そこには長身の男の子がたくさんの同級生たちを纏めていた。


「うちの兄貴共は出来がいいのに、いつもオツムが悪い。

学力では学校で一位狙える頭脳。

手の器用さは利用すれば将来困らなくなる。

いわば才能マンなんたぜ?なのにいつも私利私欲を優先する。」

「凄いよね、真ん中のお兄さんの工作見たけど、まさか設計図もデザインも自分で作ってタンス完成させちゃうとは。」

「しかも家でちゃんと使えるやつだからね。

売ってるやつとほぼ変わらない。

父さんが『これ運ぶの俺かよっ!?』って嫌な顔してたわ。」


へぇ〜、そんなに凄いお兄さんいるんだ。

家とは大違い。


「俺も作ってみたいなぁ〜。」

「ネットで調べたら作り方なんていくらでも乗ってるぜ?

だけど精密に、それこそズレ一つなく、見た目もちゃんとして、強度もそれなりにするのは、センスがいるけどな。」

「俺じゃ無理だわ。」


二人は仲がいいのかな?

こんなにも気楽に会話出来て、家族の事情も話せるとは。


「健介はゲームばかりだもんな。

5段階評価中、成績オール2にはお前の母さんも苦い顔してたぞ。」

「うるせぇ、オール3のやつに言われたく無いわ。」

「ふっ、これが出がらし弟と呼ばれる男の実力よ。

計算してやってんの。これを視野に入れたら家族の中で俺が一番頭いい!」

「この前『うぉぉっ!俺スッゲっ!俺スッゲっ!オール3じゃんっ!』って驚いてたような気がするけど?」


天峰君はジト目で健介くんを見て・・・


「そこは『そうだ!お前は天才だっ!』って慰めてほしかったなぁ〜。

チミの的確なツッコミのおかげで、俺超恥ずい奴になっちった。」

「元々そうじゃん。」

「うわっ、傷ついた!」

「いやいや、恥ずかしくないやつはランドセルの中に何も入れずに登校しないから。

そして先生に怒られて涙目にならないから。」

「・・・。ふっ、今日は・・・やけに暑いな。」

「ぶはははははっ!顔真っ赤やんっ!」


目を隠し、顔を真っ赤にする天峰君は健介くんに笑われる。

なんとも仲睦まじい会話であろうか。

この子達はいい親友らしい。

聞こえてくる音に不快感を感じないのが、心地よかった。


「よぉ。」

「「うん?」」


私が目を閉じ、聞こえてくる声に心を落ち着かせていると、今までの音色とは真逆の音色が聞こえた。

・・・敵意・・・不快感を感じる声だ。


「天峰。」

「うぉ?」


下を見ると、マッシュルームヘアーの天音くんと同じ背で中性の顔を持つ男の子が立っていた。

その後ろにガタいのいい男の子二人が立っている。

・・・なんかボディーガードみたいだな。


「え〜っと・・・・」

「・・・。」

「中尾君っ!」

「山中だ!同じ道場通ってんのになぜ覚えないっ!」

「天峰、参考までに聞いとくけど同じ学年のやつの名前何人覚えてる?」

「健介と同じ道場の康ってやつだけ・・・かな?」

「「マジかよ・・・。」」

「人の名前ほど覚えにくいものはないと思うよ、俺は。」


超分かるわ、その気持ち。

私も5人ぐらいしか覚えてないんだよね。

てか、天峰君、康と同じ剣道の道場通ってんのか。

これには驚きだ。


「で、山中君が何のようでござりますか?」

「聞き方苛つくなぁ。・・・。別に、人が予約してた場所に勝手に座っておいてなんだその態度って言おうと思っただけだ。」

「予約・・・?・・・今頃来て予約と言われても・・・。」 


気づけばあと十分で昼休みは終わる時間だった。


「・・それにここは居酒屋とかじゃないんだから予約なんて出来るわけ・・・

・・・あぁ!当てつけかっ!」


天峰君・・・心当たりがあるようだね。

あと正直に言い過ぎだよ?

目の前に山中くんが目に見えて苛ついてる。


「・・天峰・・・何したの?」

「なんだよ健介。俺が自発的に危害加えるほど暇の持て余した男に見える?」

「寝るのが趣味って聞いたけど・・・。」

「おぉ、俺結構暇な奴だ。・・・でも、なにかした覚えはない。

・・・道場の練習試合で瞬殺したことぐらいしか。」

「・・・。」


思いっきりそれじゃないですかね? 


「なんだよその目は・・・。

言っとくけど俺悪くないぞ。

ちゃんとその後、負けてあげたんだからな。

しかもその後、親父に『根性叩き直しちゃる。』とか言われて先生全員にしばき回される羽目になったんだぞ?」

「天峰さんよ・・・君が同い年と試合した時にわざと負けられたらムカつかない?」

「全然。大事な試合で手抜きするやつが悪いだろ?

油断誘うって言う強さとか余裕があったって、結局勝たなかったらその全部は意味がない。

て言うか、元々強い奴は手抜きなんてしない。」


めっちゃど正論っ!

天峰君は自尊心ないんだなっ!

彼の正直さに腹を抱える。


「・・・屈辱とか感じないの?」

「感じるよ。大人と相手してたらいつもね。

でも結果は変わらない。

弱肉強食。負けるやつは負けるし勝つやつは勝つ。

だから俺が勝ったのも事実だし負けたのも俺が弱いから。

逆に山中くんの勝ち負けも事実。

それに気付けないやつは最後まで負け組さ。」

「・・・言いたいことはそれだけか?」


山中くんが顔を真っ赤にして、天峰くんの胸ぐらを掴んだ。

天峰君は見るからに嫌そうな顔をする。


「え〜、喧嘩する気なのかよ・・・。」


山中くんの後ろの取り巻き達がニヤニヤと笑みを浮かべた。


「・・・俺、やだよ。俺は恨みはないし、問題起こすと親父が爆笑して会話のネタにするからやりたくないんだけど。」

「うるせぇなぁ!俺にはお前を殴りたい理由があるんだよ!」

「自業自得じゃん。俺何一つ悪くないじゃんっ!」

「本気で言ってんのかっ!」


天峰くん、君は悪くはないけど、現状は君が生んだ結果にるものなんだよ。

避けたいなら逃げるしかないね。

私は心の中で声援を送った。


「・・・おいっ!江本を抑えとけっ!」

「痛っ!」


いつの間にか健介君は逃げ出そうとしていたようだ。

それを山中くんは気づき、取り押さえさせた。

・・・抑え方がいけない。

あれでは健介くん怪我するな。

私があららと思っていると・・・




「おい。」




とても低い声が聞こえた。


「健介を離せ、な?

関係ないだろ?それに健介は帰っても別にチクるような奴じゃない。」

「お?なんだ?お友達が傷ついたから怒ったのか?」

「いいから健介を離せよ・・・。」


天峰くんの声のトーンがどんどん下がっていく。


「あー、分かったっ!これから剣道の試合で全部お前に負けてやる。

それも均衡した試合のように見せてだ。

どうだ?いい条件だろ。」

「お前ふざけてんのか?そんな態度だからこんな目になってんだぞ?」

「いや、これは逆恨みだし、お前らの愚かさが・・・いや、なんでもないわ。」

「痛い目に遭わないと気がすまないのか?」


山中くんの拳が、天峰くんの顔面へと入った。

おぉ、今の子どもたちは思い切りがいいね。

私は殴られた天峰くんを観察した。

予想では怒りすぐやり返す・・・そう思っていた。

けど・・・天峰くんは・・・


「・・・はぁ〜、気が済んだ?なら教室戻ろうぜ。」


平然と、笑っていた。

作り笑いなのはわかる。

こめかみに力が入っていることから怒ってるのもわかる。

驚いた・・・まさかやり返さないとは。


「ちっ、何なんだよお前っ!」

「痛ってぇ。」


枝が少し硬いマリモのような草木に天峰くんは蹴られ倒れる。


「調子乗ってんじゃ・・・ねぇぞ・・・っ!?」


山中くんは倒れたのをいいことに、上から踏みつけようと足を下ろす。

しかし・・・


「最後だ・・・。

いい加減にしろ・・・立ち去れ。」


天峰くんはその足を横からガシッと掴んだ。

そしてかっこいい台詞を吐いた。

男の子だなぁ〜、と思ってしまう。


「はぁ、邪魔。」


天峰くんはため息を付き、足を払った。

そして教室に戻ろうと前に出ようとする。

しかし・・・


「ふざけんなっ!」


また殴られそうになる。


「このやろっ!?」


流石は剣道経験者。

間合いのとり方、瞬間的判断が群を抜いている。。

天峰くんは向かってくる右手を、右手でつかみ、遠心力で柔道技のように後ろの草木へと投げた。

脛に向かって蹴るというのが効いたな。

草木に倒れ込んだ彼は立てずにいた。

つまり先程の光景の人物の立ち位置が真逆になったのだ。


「・・・。」


天音くんは無言で山中くんの体を蹴りつける。

無言で、山中くんの嗚咽など聞こえてないかのように何度も足を落とす。

山中君がやられているのに気がついたのか、後ろの取り巻き達が天峰くんを取り押さえようとした。

ガタイとしては相手のほうがデカイが・・・


「邪魔すんな。」


躊躇なく鳩尾へと拳を入れた。

痛い!あれだと呼吸が急に止まり、苦しさで動けないはずだ!

予想通り取り巻きの一人はその場で倒れる。


一人敵が減る。

これでだいぶ戦いは楽になったはず。

しかしよく見ると殴る瞬間、倒れた取り巻きの足が天峰君の横腹へと入っていた。


子供の筋肉では守力れない場所。

ダメージは入ったはずだ。

しかし・・・


「・・・ラスト・・・。」


天峰君は倒れなかった。

痛む腹を抑え、蹲る子の頭を蹴り上げた。

そして動かなくなったのを見て、もう一人の方へと視線を向ける。

息遣いは激しくしているし、足も震えているが、彼はその場できちんと立ち、最後の敵を睨む。


もう一人の取り巻きがその姿を見てたじろぐ。

一瞬の停止・・・それがいけなかった。


天峰くんの拳が今度は、顎へと横からと入る。

脳が揺れたのだろう。

取り巻き君は倒れた。


「・・・ゴホッ!ゴホッゴホゴホゴホッ!」


2秒ぐらい喧嘩の余韻に浸った天峰君はその場で腹を抑え咳き込んだ。

やはりダメージはあったようだ。


「・・・ありがとう。・・・俺が弱いばかりに・・・迷惑かけた・・・。」


蹲る天峰君の背中を擦ろうと近寄る健介君。

君は最後まで傍観に努めたね。


「そ、それは・・・お、俺だよ・・・。

・・・すぅ〜〜〜はぁ〜〜〜〜・・・すぅ〜〜〜はぁ〜〜〜〜。

・・・ふぅ、よし。

ま、健介はそのままでいてくれな。

オメェが強くなってしまったら・・・俺が必要なくなっちゃうし。」


呼吸を整え、最初の優しそうな表情に戻る天峰君。


「・・・っ!?

・・・へっ、ゲームぐらいいつでも一緒にやってあげるよ。

取り敢えず顔洗って戻ろうぜ?」

「え?何?泥でもついてる?」

「そんなとこだよ・・・あ、コイツラどうする?」


天峰君に肩を貸す健介君。

立ち去ろうとする前に、倒れている三人を見ていった。


「・・・死んで・・・ないよね?」

「おいっ、物騒なこと言うなよ、殺してないわ。

それに俺に人殺せるほどの筋力はない。」

「ほっとく?」

「・・・あ〜っ!もうっ!先生に言って処理して貰うしかないのかよっ!

くそっ!また親父に馬鹿にされるっ!」

「ハハ・・・これに関しては仕方ないわな。」


笑いながら教室へと戻る二人。

二人の姿が見えなくなる。


「・・・。」


その場はうめき声だけで埋まる。


「・・・へぇ〜・・・面白そうな子たちじゃん。」


私はスタッと地面に降りる。

そして倒れている三人を見て・・・


「嫉妬で勝手に妬み返り討ち。

・・・この二人に関してはただの弱虫だな。」


そう吐き捨てる。

伸びている三人には聞こえてはいないだろうが。


「・・・しかし・・・天峰君か。」


私は久しぶり興味を持つ子を見つけた。

あの、三人を倒した後・・・泣いていた。

涙を分かりやすいほど流していた。

しかも本人はそれに気付いてない。

健介くんが息を呑んで、そのまま平然とするということはそれは天峰君にとって普通の事なのだろう。


「これは・・・新しい玩具の誕生かな?」



私はその場で不敵に笑ってみせた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「や〜すく〜ん♪ちょっといいかな〜?」

「え、何?気持ち悪い。」


その日、帰宅後・・・康の部屋へと訪れた。


「随分とご挨拶だね、普通ならお仕置き十分コースだけど気分いいから許してあげる。」

「何様だよ、てめぇは。」


いつもなら寝技十個ほど試していたところだ。

良かったね、私が機嫌よくて。


「で、何用だ?」

「えっとねぇ〜、君の通ってる剣道場のことなんだけどさ。」

「何?」

「天峰君って知ってる?」

「天峰?神奈月天峰の事か?」

「あ、本名そうなの?」

「お前同じクラスだろうが、なんで知らないんだよ。」

「いやぁ、今日同じクラスってことに気づいてさぁ〜。」


今日の午後授業が自習になったので、天峰君が同じクラスだってのに気づいた。

やはり名前を覚えないところでは天峰君と私は似ているところがあるだろう。


「・・・はぁ〜、取り敢えず天峰のことを知りたいんだな?

道場での様子でいいなら言えるが・・・。」

「うん、それでいいよ。」

「あー、まず剣の腕だけど・・・親が先生もしている上、幼稚園からしてるからか流石に強いな。

本人は弱いと言ってるが。」


それは今日の本人の喧嘩を見ればだいたい分かる。

そこそこ強い部類に入るだろう。


「へぇ〜、どんなふうに強いの?」

「俺個人の感想なんだが・・・筋力は普通なんだよ。

体力も別段あるってわけじゃない。

けど・・・技術がある。」

「技術?」

「そう、天峰の父親曰く、天峰は道場にいる8段の70歳超える先生の面を習得している。」


康は竹刀を持ち、私の前で中段の構えをした。

面はとは簡単に言うと竹刀を縦に振り、相手の頭へと当てる技であったはず・・・。


「稽古は毎日、下の子や先輩達と雑談しながら面白可笑しくやってるんだけど・・・2年生のときに丸々1年間先生のアドバイスを経て練習したんだとさ。

そのお陰で、今のところ天峰に勝てるのは高学年の人たちだけだな。」

「へぇ〜、結構褒めるじゃん。」

「まぁな、アドバイスされるだけで得られるような技じゃないしな。

そんな面を使えるのは凄いよ。

飛び込んで丁度剣先にあてられる間合いの図り方、予備動作の短縮、そして手先をタイミングよく曲げて最小の動きを生み出す。

今の俺じゃできない芸当だ。」


康が他人をこうも褒めるとは珍しい。

それほど天峰の技術はすごいのだろう。


「・・・でも今ではってことはその内超えられる技術なの?」

「いや、技術では超えられないよ・・・けど筋力的な問題ですぐ超えられると思うだけかな。

言ったろ、天峰に関しては筋力は平凡なんだって。

先生ほど体が覚えてるわけではないから、身長に大きな差があったり、元々の出せる速度で負けたりする。」

「へぇ〜、そう思うと勿体無いって感じがするね。」

「まぁな、素直にアドバイスを受け取って、間違いを直せるところは尊敬できるわ。」


私は竹刀を手に取る。

ずっしりと重さが手に来た。

・・・なるほど、この武器を使いこなすってのはなれが必要ってのが重さでわかる。

私は密かに天峰君に感激した。


「ねぇ、他にはないの?」

「え〜、他〜?・・・あ、天峰は俺達と同じ三人兄弟だな。

あっちは双子じゃないけど。

後、道場に兄と天峰が揃うと10回に7回は喧嘩してるな。」

「喧嘩?」

「おう、これが結構激しいものでな、兄の方は身長高いし力も強いから俺たちでは結果がわかりきってた喧嘩なんだよ。

けどな、天峰はな、全身使うだよ。

蜘蛛みたいに床に倒れても手足使って這いつくばってさ、よく噛み付く。」


な、なんだろう・・・獣だな、話を聞く限り。


「爪で引っ掻いたり、飛び蹴りしたり、頭突きもするし、兎に角、手が使えなかった足で。

足が使えなかったら口で、口がだめなら頭で。

それを涙流しながらするから狂気じみてるんだよな。」

「その喧嘩の原因は?」

「100%兄のちょっかいによるもの。

関節技を理不尽にかけられたり、防具つけてるときにわざと脛を竹刀で叩かれたとき、弁当を奪われたり。

もう多すぎて皆それを微笑ましく見てるね。」


・・・聞けば聞くほど面白そうな人間だな、天峰君は。

普通のように感じるけど、自分に非がない喧嘩で泣いてしまうほど他人思いの性格。

面倒くさがりです楽しく生きようとしている人生。

自分の興味持つことには、とことん追求する理系の精神。



私は康のベッドの上で笑った。

だって初めて、強い弱い以外で興味を持ってしまったのだから。

どこか縁と言うか・・・何かあるように思える。

まぁ、これが勘違いでも構わない。

だってこれから・・・
















彼は私のものになるのだから。

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