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僕が死んだら、不幸を下さい。  作者: 春夫
『透の物語』
22/41

翆の目的

部屋の中でキーボードの打つ音が鳴り響く


「成功・・・したな。」


私はこの世に生を持ち始めて、初めて人の心が変化する瞬間を見た。


しかも一気に二人も。

私は感動した。


そう、それは丸で映画を見ているような感動だ。


主人公に立ち塞がる巨大な敵。

主人公に影響され、変わるライバル。

主人公が新たな仲間という力を手に入れる。

そして覚悟が決まったとわかるその表情、台詞。


理不尽な敵?超えるから視聴者は興奮するんだ。

臭い台詞?恥であっていい、それは物語を引き立たせる。

友人ではなく仲間?どんな括りでもいい。

孤独であった主人公は味方ができるだけで強くなる。


嫉妬、憤怒、驚愕、恐怖、羞恥、幸福、多くの感情からくる表情がそれらを証明する。

証明し、それらの感情は登場人物を逞しくさせている。

単純だが、視聴者はその姿に羨ましいっ!格好いいっ!目が離せないっ!そう思うから興奮するんだ。


だから私は今、目の前の物語に心踊らされている。


その上、歓喜する私に追い打ちをかけるように、この物語に美しい光景の真逆の嫌悪する、嫌な大人の姿によりBGMが奏でられた。

この世に絶望があれば希望があるように、その逆もまた然り。

この世は正常が歪みを、歪みが正常を引き立たせるんだ。


この物語もそうだ。

痛み、苦しみが望みを生み出した。

その望みに祐作が引き寄せられた。

そしてその望みを叶える強い覚悟が誕生した。

未来を思うから二人は過去の嫌悪した。

その嫌悪が覚悟を固め、二人の心を強くする。


分かるだろうか?


嫌な事が二人の心情を、行動を、美しくさせているのだ。


「あぁ、凄いよ・・・まだこの物語は続いてしまう。」


私はもう魅了されているのだろう。

だって仕方ないじゃない。

今でさえ、透の物語は祐作がいるだけで、これだけ美しく、面白く、格好よく、無様であり、恥ずかしく、それでいて感動できる作品となっている。

それなのに私が見てきたものは序章でしかないだ。


私の感は大音量で言っている。


この物語は終止符を打つには早すぎる。

まだ本編も始まっていない、と。


確かに、と、私は思った。

だってまだ物語に重要なヒロインが出ていないのだから。


ん?私?・・・私は違う。


私は物語の中にいる、力の役割をになっているのだ。

いわば師と同じ。


だから私はヒロインにはなれない。


故にまだ透の物語は終わらない。

いつ本編に入るのか。

それは分からない・・・が、私は待つ。待つしかない。

だって現実は映画のようであれど映画ではないのだから。

時間はカットもスキップも起きてはくれないのだから。

だから、今は待つしかない。


でもいいじゃないか。

一秒一秒でも時間は進んでいる。

そうあるだけで終わりが来ることが決定されている。

なら遅かれ早かれこの感動に新たな感動は重なるんだ。

この興奮にまたエネルギーが注入されるんだ。


生憎、私の記憶はどんなに時が経てど消えはしない。

それを活かせば、忘れて感動を、興奮を、無くすことはない。

だからこの映画に対する興味は消えはしない。

それに終わりまで気長に待つのも物語の一部だ。

その一部があるから物語も成り立つ。


なら待とう。

楽しみにして待とう。


ダンっ!


私はエンターキーを勢いよく押した。


「『透の物語』の始まり・・・始まり。」


私はパソコンを閉じた。


一端透の物語終了

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