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僕が死んだら、不幸を下さい。  作者: 春夫
『透の物語』
14/41

その日の家にて・・・

〜家〜夜にて・・・


「おい、翆・・・なんで昼休み来なかったんだよ!」


風呂に入る準備をしていると兄の康がズカズカと入ってきた。

ノックしろと言ってるのに聞かんやつだな。


「あー、忘れてた。こっちにも用事があってね。

今なら聞けるから手短に頼むよ?

風呂入りたいから。」


私は椅子にドスっと座る。

康はベットに腰を掛け・・・


「お前、喧嘩したんだって?」


ど直球に聞いてきた。


「喧嘩って・・・違うよ。

私がしたのは鎮圧。

実質、彼らには殴ってないし。」


嘘は言ってません。・・・多分。

ま、傍から見せれば完全に喧嘩だろうけど。


「で、どうだったんだ?

上級生達は強かったのか!?」


康は身を乗り出して私に尋ねる。

なんでこいつはこんなにテンション上がってんの?

・・・あ!男の子だからか。

晴之も記憶では子供の頃は戦闘とか戦う事には興味を示しやすい性格だった。


「うん、強かったよ。

私は兄貴たちより強いから大丈夫だったけど、兄貴たちだと確実に負けてたね。」


私はからかうように言う。


「へっ、俺よりも何年も上を生きてんだ。

強くなかったら逆に駄目だろ。」


こいつは本当、こういう時マジレスして来るよね。

間違ってないから達が悪い。


「それなら私に勝てない敬兄は駄目な男の子になるんじゃない?」

「そうでしょ?」


弟なのに兄に対して尊敬の意思は少しでも存在しないのかい?

これだと敬兄可哀想やん。


「・・・あ、でもそうか。

康が力比べで敬兄に勝ててないのはそういう事なのか。」

「・・・。」


黙る康。

私の知る限り、二人が喧嘩して勝ったことがあるのは敬だけ。


「そ、そうだぜ?それは、兄貴が俺よりも長く生きてるからで・・・」

「なら一生勝てないね。」

「・・・。」


康はその言葉にしかめっ面をして・・・


「で、でも!あ、あと数年もすればお、俺は翆なら・・・っ!」


私に指を指してきた。

まぁ、別に弱いと言われようと比べられようと、それぐらいなんとも思わない。

それが人間なのだと理解しているからだ。

逆に嬉しいくらいだ。

だって私はとことん人をからかうことが大好きなのだから。

だって相手が私を比べる時、それは相手の弱いところを知れることになるのだから。

私はすっと、一歩で康の隣へ行き、脚をかけて地面に倒れさした。


「私より・・・まさか強くなるとか言おうとしたのかな?

それはそれは、今私の視界に映る姿を見ても同じことが言えるといいね。」


壁ドンならぬ、床ドンをする私。

なんだろう、色々知ってるからこそなのか、好奇心ゆえなのか、もうこういう行動があまり恥ずかしくなくなってきた。

ほら、だって予想通り目の前の康は顔を真っ赤にしている。

多分これは恥ずかしがっているのだろう。


「ま、康は私と同い年なんだから今後鍛えていけばいいでしょ。

・・・もし私に勝つ事ができたら、私が何でも言う事聞いてあげよう。」


私は耳元まで顔を持っていき・・・


「いつでも来ていいよ。」


康は口をパクパクし始めた。

私はそれの可愛さと、その狙い通りの表情に満足する。


「ふふっ、じゃ、私は風呂入ってくる〜。」


楽しかったと満足した私はひらひらと手を振り、部屋を出ようとする。

扉を開けると・・・


「やぁ、翆ちゃん。こんばんは。

突然だけど妹の君が喧嘩をしてくれたおかげで、こっちは迷惑してるんだけど・・・なにか言い訳はあるかな?」


兄の敬が仁王立ちしていた。

大抵、敬が私のことをちゃん付けする時は、私に対して怒りがあるときだ。

それの証明として・・・


「敬兄・・・目が怖い。」


目が私以外捉えてない。

見るからに怒っている。

やべぇ、こんなとこに被害が来るとは思っていなかった。


「あのね、翆。

翠が噂になって、今日何度翆のことを聞かれたと思う?

朝から放課後まで質問攻めなんだ。」

「ハッハッハ、みんな退屈してるんだねぇ〜。

いいじゃん、準ぼっちから、アイドルの妹を持つゆえに、紹介してと言われることがある系の兄に、ランクアップしたよ。

この気に友達と恋人を作ったら?」


ま、ここで言うなら妹は不良で、兄は私に敵対する馬鹿の挑戦状を受け取る中間役だろうけど。


「やかましい!まずもってこんな妹がいるのに恋人なんてできるか!

てか、翆はアイドルって言う器じゃない!」

「失敬なっ!私ならアイドルなんて朝飯前じゃ!」


妹の顔面偏差値とコミュ力の高さは信じてくれてもいいんじゃないの?

私ほどの美人で天才にもなればアイドルなんて楽勝だよ?


「「いや、翆はそんな面倒くさいことしないでしょ?」」


流石兄弟、よくわかってじゃないの。

でもそんな面と向かって言われると私も傷つくよ?

二人の真っ直ぐな瞳がうざい。


「・・・あーあ、母さんにベットの下の薄い本チクろっかなぁ〜。」

「なっ!?」

「あん?」


敬は驚いた顔をして、何も知らない康は薄い本?と疑問符を浮かべている。


「す、翆!お、お前!なんで知って・・・!?」

「ハッハッハ!私に隠し事なぞ、通じぬと知れ!」


何故だろう、本当な兄弟は思い通りに面白い反応をしてくれる。

ほら、焦り過ぎで「なんで知ってんのぉ〜〜!?」と、私の肩を揺すり始めた。

ハッハッハ、本当に楽しい。

でもそろそろ風呂に入りたいからからかうの辞めるか。


「まぁまぁ、冗談だから怒らないで。

本当においてあるわけじゃないでしょ?」

「なぁなぁ、薄い本って「そうだよ!そんなものはない!そんなものを僕は持ってない!」・・・なんなの?薄い本って?」


康君の純情はまだ壊されていけないね。

駄目っておこう。


「敬兄、確か前に敬兄が窓ガラス割ったことの罪を私が!背負ってあげたよね?

・・・それで迷惑かけたこと・・・許してくれないかなぁ〜?」


猫なで声を出してみる。

敬はうぐっと息詰まる。

本当、恩を売っておいて良かった。

まだまだ貸しは存在するから、これからもどんどん迷惑をかけていこう。


「じゃ、今度こそ私は風呂に入って来るねぇ〜。

・・・おさらば!」


私は逃げるように部屋から立ち去った。






〜〜康の心境〜〜


「・・・あれ?なんで俺、妹にドキドキしてんだ?

・・・・おかしくない?おかしない?」



〜〜敬の心境〜〜


「・・・駄目だ、本当に翆は悪知恵が働きすぎる。

・・・次は僕の思い通りにさせてやるからな!

覚悟しておくんだぞ!翆!」


康は自分の翆に対する思いに疑問を持ち、敬は企みを持ち始めた。

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