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27 聖龍剣闘祭について




 食事を終えた後、琉斗はレラの案内で王都の中心部を巡った。


 雑貨店や衣料品店、各種役所など、冒険者として暮らしていくために知っておくべき店や施設を一通り案内してもらった後、二人は王都のやや北寄りにある喫茶店へと足を運んでいた。

 レラが言うには、その店のパンケーキがおすすめなのだそうだ。



 店に入り、紅茶とパンケーキを注文すると、二人は窓側の席で取り留めもない話を始める。


 レラは現在十九歳、今年で二十になるのだそうだ。今年の冬で十七になる琉斗より三つ上ということになる。思っていた通り、ちょうど女子大生くらいの年齢だ。


 予想通りというべきか、こちらの世界では婚期が早いらしく、二十にもなって未婚の女性というのは通常は白い目で見られてしまうのだそうだ。

 もっとも、レラのように一流の冒険者として活躍しているような女性の場合はまた話が違ってくるとのことだったが。




 紅茶に口をつけながらしばらく話していると、注文していたパンケーキがやってくる。


 意外にもふっくらと焼き上がっているそれにフォークを通していると、話は聖龍剣闘祭へと移った。


「で、結局聖龍剣闘祭ってのはどんな大会なんだ?」


「はい、昨日もお話しました通り、本戦からの出場者に予選通過者を加えた三十六名による勝ち抜き式の闘技大会です」


「剣闘祭と言うからには、剣で戦わなきゃいけないのか?」


「いいえ、扱う武器に制限はありません。槍でも弓でも、素手でも出場可能です。第一、剣しか使えないのであれば、槍使いの私は試合に出場することができません」


「そう言えばそうだったな」


 苦笑するレラに、琉斗もつられて笑う。


「それどころか、ルール上は魔術師が出場しても問題ありません。現に、今大会にはセレナさんも出場すると聞いていますし」


「昨日のお姉さんか」


「リュートも魔術師で冒険者登録しているのですよね? どうして剣士で登録しなかったのですか?」


「それはその……自分の力を試してみたくて、かな?」


 返答に迷いつつも、当たり障りのなさそうなことを言ってみる。実際、別に嘘をついているわけではない。


「それよりも、剣闘祭について教えてくれよ」


「そうでしたね。どこからお話しましょうか」


「そうだなあ……。参加者には予選組と本戦組がいるんだよな?」


「そうですね。本戦からの出場者は十六名。前回大会のベスト8までが自動的に出場権を獲得し、大会主催者等による推薦枠が最大四枠まで設定されています。残りの四枠に推薦枠の空きと前回ベスト8の辞退者の分を加えた枠には、前回ベスト16のうち出場を希望する方が抽選で選ばれる仕組みです。それでも空きがある場合は、予選の枠がその分増えることになります」


「へえ。レラは前回大会には出たのか?」


「はい、出てましたよ。負けちゃいましたけどね」


「十七歳の時だよな。どこまでいったんだ?」


「残念ながら、決勝でこの国の騎士団長に負けてしまいました」


「準優勝かよ!」


 思わず琉斗が身を乗り出す。二年前の時点でそれほどの力を持っていたのか。

 まして、今はこの国で唯一の一級冒険者なのだ。おそらくは優勝候補の筆頭なのだろう。


「それじゃ、推薦ってのは何なんだ?」


「例えば他国のギルドが自分のところの冒険者を主催に推薦したり、逆に主催者側が目玉になりそうな人に声をかけたりと、いろいろありますね。前回優勝の騎士団長も推薦だったんですよ」


 そう言って、レラが楽しそうに目を輝かせる。


「今年の剣闘祭はきっと楽しいですよ、リュート。騎士団長も出場しますし、噂によれば、西のガリシュ王国で一級冒険者として名高いナスルも推薦されているらしいです。できれば全員私と当たってくれればいいんですけどね」


「そうだね、そうすれば俺も楽ができるし」


「駄目ですよリュート、せっかくの剣闘祭なんですから、ちゃんと楽しまないと」


 そう言われても、別に武人というわけでもない琉斗は、レラほどにはまだ見ぬ強敵に心を躍らせるという気分になれなかった。いや、自分が龍皇の力という圧倒的な力を手に入れてしまったからなのかもしれない。


「それに、リュートは予選会から出場しなくてはいけませんから。楽なんてできませんよ」


「そうそう、その予選会っていうのはどんなものなんだ?」


「リュート、昨日職員から大会の説明を受けてましたよね?」


「ごめん、あんまりちゃんと聞いてなくて」


「まったく、もう」


 レラが可愛らしく頬を膨らませる。子供っぽいその表情に、思わず琉斗はどきりとする。


「予選会は結構過酷なんですよ。おおむね八人から十人ほどの人たちで一斉に戦うんですから」


「一斉に?」


「はい、一斉にです。そこで勝ち残った人が、予選を通過して本戦へと駒を進めます」


「なるほどね」


 いわゆるバトルロイヤル方式というやつか。それにしても、十人での生き残り戦とはまた凄いルールだ。


「でも、そんなルールだとよからぬことを考える奴もいるんだろうな」


「よからぬこと?」


「ああ。例えば、金にものを言わせて何人も仲間を雇って、同グループ内に仲間がいたら協力してライバルを倒す、とかさ。二十人も雇えば一人か二人は同じグループになりそうだろ?」


 琉斗の言葉を、レラは驚いたような顔でじっと聞いている。


 そして、静かにつぶやいた。


「リュート……意外と考えることがせこいんですね」


「せこいって言うな!」


 レラがくすくすと笑う。


「ごめんなさい、私には想像もつかなかったもので。でも、そんなことのためにお金を使ったりするものでしょうか?」


「結構大きな大会みたいだし、きっと優勝賞金も多いんだろ? だったら、そんなことを考える奴だって出てくるさ」


「でも、そんなことをして予選を突破したとしても、本戦を勝ち抜いていけるとは到底思えないのですが……」


「もしそんな奴らがいたとしたら、今のレラの言葉を聞かせてやりたいところだな」


 琉斗が笑う。目の前の女性はどこまでも真っ直ぐで、その一言一言に自分の心が洗われていくような気がした。


「じゃあ、俺はまずその予選を勝ち抜かなければいけないわけだ」


「その通りです。もちろん、その後は私と当たるまで本戦を勝ち抜いてくれないと駄目ですよ?」


「やれるところまでやってみるよ」


 ややいい加減な調子で、琉斗が返事をする。



 もちろん、心の中では必ず彼女と戦うまで勝ち抜こうと固く誓っているのだった。






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