とある作家のクズ語り1
新しい編集者が来た。
それは締め切りを月末に控え、深夜まで執筆活動に時間を費やした朝のことだった。
「どうも、結婚退職した井口に代わり担当編集になった小関です」
「……どうも」
グレーのスウェットによれよれのシャツを引っかぶった私の返事は、その短い言葉だけだった。
だって徹夜までとは言わないが、けっこう遅い時間まで書いていたのだ。
未だに自分の小説世界からの帰還が叶っていない状況で、訪れた人間に低血圧の脳では対処しきれなかった。
玄関先で扉に手を当てた状態でしばし見詰め合う。
人間と目を合わせたのはいつぐらいぶりだろうか。井口が結婚の報告をしに来て以来だから二週間ぶり? いや、二週間と三日くらいだっけ?
とにかく、それくらい久しく人間を見ていなかったような気がする。
あー、久々すぎて目を逸らすタイミングがわからん。おい、あんた。先に逸らしてくれないか? 逸らせよ。
目の前に立つ男は一見して、「あぁ、こいつ仕事できるんだろうなぁ」という見た目だった。
かっちりとしたグレー(私が着ているのよりよっぽど綺麗で上等な布地)のスーツに品のよいネクタイを締めている。
なんか銀行とか、お堅い会社とかにいそうなサラリーマン風だな……。
引きこもりの小説書きには眩しすぎる。ひれ伏して「生きていてごめんなさい」と頭を地面に擦り付けたくなる感じだ。
ってか、なんでこんなのがうちに来るんだ。
私が書いているのは純文学などの高尚なものなどではない。
せいぜい読み捨ててもらえればラッキー、流行れば大ラッキー(それも宝くじに当たるくらいの確立)のライトノベルだ。それも女性向け。
新しい担当として寄越してくるのは、こんな仕事できますって男じゃなくて、バイトに片足突っ込んでいるような新人であるべきだ。
陰気でどうしようもないクズ人間を踏み台にして、人生の新たなステージへと昇っていくような。
こんな人生の酸い甘いはだいたい経験してきました、というやり手そうな男ではけしてない。
前の担当編集の井口は女だった。
リア充満喫しまくって、とうとう結婚までした人生の勝者だ。
眩しい。眩しすぎるよ。こんなゴミ虫の担当をしてくれていたなんて信じられないくらいに女子力の強い、いい人だった。
よくご飯作ってくれたっけ。掃除も。
「やだぁ、もう先生ったら、この部屋って女子の部屋じゃないですよ」
そう言って資料で埋まる私をよく発掘してくれたものだ。本当に女神様だった。思い出して涙が出そうになる。
ぼさぼさの髪をかくと埃が舞った。こんな人生真っ当に生きていそうな人間の前で、私のこの有様――やばい、死ねる。
「死にたくなるんで、扉を閉めてもいいですか?」
言いながら扉を閉めようとすると、綺麗な革靴を挟んで止められた。ひいっ。それいくらくらいするものなのっ。私でも弁償できる!?
「何を冗談ぶちかましてんですか」
新しい担当編集は、そう言って強引に押し入ってきた。帰れ。帰ってくれ。頼むから!
「挨拶だけでわざわざこんなところまで来るわきゃないでしょ。進捗状況とか知ってないと困るでしょ。主に俺が。ぎりぎりになって締め切りに間に合わないとか言われても辞表は書きませんよ?」
えらく上から目線だな。いいですけど。
ずかずかとまるで自分の家のように入ってくる彼に、今度書く小説のヒーローは俺様にしよう、と湧き上がる創作意欲が止められなかった。
「はい、これお土産です」
渡されたお土産は近場の駅で売っている、よくある黒豆入りの塩大福だった。甘い中の塩味に、柔らかくも確かに感じる黒豆の食感が最高だった。
※ ※ ※
私は引きこもりの小説書きだ。
異世界ファンタジーから学園青春ものまで幅広く書いている。
出てくるのは基本的に少女。読み手は十代後半から二十代前半向け。
眩しくてきらきらするものをこれでもかと詰め込んで、登場するキャラに恋愛させてついでに成長させる物語を書いている。
現実の私は引きこもりだ。軽度の、だけど。
親とは離れて暮らしている。これで実家暮らしだったなら、確実に重度の引きこもりになっていたであろう。
軽度で済んでいるのは、ひとえに外出しなければ死んでしまうからだ。リアルな方面で。
ネットを活用すれば一歩も外に出ることなく生きていけるとは思うが、人間と対峙することが無理ゲーすぎて宅配便のお兄さんでも恐怖してしまう状況だ。
無言で買い物するほうがずっと楽だ。玄関のチャイムが鳴ると胸が高鳴る。不整脈的な意味で。
リア充を見ると「爆発しろ」とは願わないが、「自分死にたい」と呟くくらいには病んでいる。自覚症状ありの立派な病者だ。
今のところ直す手立てはないし、直すつもりもない。
「ねぇ、ちょっと。どうして男が来るの!? しかもあんな真っ当で正しい道しか歩いてきていないようなのがっ」
ただ今、新しい担当を放っぽり出して前担当と電話中。担当者間のしがらみなど私の知ったことではない。
新婚真っ只中の井口が電話口で笑う。艶やかだな、おい。結婚生活を満喫しまくりってか。今度の小説でモチーフにしてあっはんうっふんさせるぞ。
「あははっ。本当に先生はきらきらしたのが苦手ですよね。彼を推したの私なんですから、あんまり責めないでくださいよぅ」
「どうしてっ」
「だって、きらきらしたもの見ると先生って創作意欲が湧くでしょう?」
「ぐふっ」
「せいぜい目の保養にして創作に励んでください」
「無理っ。目の保養になんかならない。むしろ目が潰れる。いぐち~、頼むから戻ってきてよぅ」
自分はこれから愛しのダーリンと買い物があるからと電話を切ろうとする井口を泣きで引き止める。
情けないことは承知だ。井口相手になら鼻水垂らして泣ける。
「いぐち~っ」
しゃがみ込んでこそこそと電話をする後ろでふっと気配がしたと思ったら、受話器を取り上げられた。 この部屋には私と新しく来た担当の男しかいないので、受話器を取り上げたのは当然ながらそいつしかいない。
私は突如近くに来た人間に恐れをなして、ゴキブリのように素早く這って壁際まで逃げた。ひいっ。
私のパーソナルスペースは恐ろしく広範囲なんだ。うっかり近づくと爆死するぞ、私が。
「担当編集の前で密談ですか? 言っときますけど、あんたの担当は俺ですよ。秘密はなしでお願いします」
うわ、出た。俺様発言。視線すら痛い。人生の底辺で生きているような私には到底逆らえそうにない圧力だ。
彼は私から取り上げた受話器を耳に当てて口を開いた。
「井口さん、あなたももうこの先生の担当からは外れたんですから、いちいち相手にしないでください。仕事はちゃんと俺が引き継ぎます。安心して新婚生活を送ってください」
電話が私の許可なくカチャンと切られる。その瞬間、受話器の向こうで井口が大爆笑しているのが聞こえた。私にとっては笑いごとじゃないんだよ!
絶望感に私はがくりとうな垂れた。
負けた。担当に負けた。
書き手が担当に負ける構図は世の中にごまんとあるだろう。勝てるのは売れっ子作家だけだ。そして私は発行部数もそこそこの作家。当然勝てるわけがなかった。
「さぁ、お仕事の時間ですよ」
彼の微笑みが、私には悪魔の微笑みに見えた。
※ ※ ※
パソコンを立ち上げてカタカタと文字を打ち込んでいく。
すでにプロットとしては出来上がっていた部分なので機械的な作業だ。
今回の物語は異世界に紛れ込んでしまった主人公がその世界の人々と触れ合って、少しだけ彼らを変えていく物語だ。
今書いている部分は設定上の世界の説明部位。私の中では完成されたものなので書きやすい。指先は軽やかにキーをタッチしていった。
これから主人公が現地人と出会って、その言動のおかしさで彼らの興味を惹いていく……。
冒険はこれからだ、というところで指を止めた。――何でこいつはこれだけ興味を引かれて好かれていくんだろう……。馬鹿だから? 真面目だから? 素直だから? 彼らにはない自由を持っているから?
キャラはだいたい決まってるんだけどなぁ。主人公は多少お馬鹿な正義感溢れる女の子だ。出会いの最初、何て言わせよう……。
私はキーを打ちながら物語を決めていくタイプだ。
ある程度のプロットは決めてあっても、キャラの言葉ひとつで話を変えることをよくやらかしてしまう。これでちょくちょく井口を困らせたものだ。
いぐち~。カム・バック~。
電話を恨めしい目で見る。
新しい担当の手によって、電話はガムテープでぐるぐる巻きにされていた。
「必要な連絡は俺のほうに入るようになっていますから、お気になさらず」
気にするわっ。引きこもりでもなぁ、自分から引きこもるのと誰かに引きこもらされるのとでは訳が違うんだよ。理解しろ。強制的な引きこもりは監禁って言うんだぞ。
小関はカチャカチャと音を鳴らしながら食器を洗っていた。
ここ数日で溜まりに溜まった食器たちだ。よくもまあこれだけ溜めましたね、と目が言っていた。お前は私のお母さんか。
仕方ないだろ。ここんとこずっとパソコンに向き合ってたんだから。他のことにかまけている時間がなかったんだ。
他者の存在に、止まった指は動きを見せない。あー、やばい。止まった。
こうなると数時間は書けなくなる。……仕方ない、気晴らしに行ってくるか。
すっくと立ち上がる私に小関が「どうしたんですか」と問いかけてくる。
「ちょっとリア充成分の補充に行ってきます」
襖で仕切られた寝室に入る。
さすがに小関は追ってこなかった。こういった場合、女の部屋にいる男に分はないらしい。よし、今度からは寝室に逃げ込むことにしよう。
ベッドに部屋着を脱ぎ捨て、ジーパンにTシャツの上からパーカーを羽織った。
出ていくと、小関がうろんな目でこちらを見てきた。
きっと小説の進展具合を心配しているのだろう。
ところで、私が着替えている間に食器洗いを済ませて掃除機までかけてたんかい。
編集やめても家政夫として生きていけるんじゃないか? 需要はありそうな気がする。そのうちネタとしてそんなキャラを出してみてもいいかもしれないと思った。
「進展は三割。締め切りには間に合わせます」
これでもプロだし。引きこもりを舐めてはいけない。勢いさえつけば数日缶詰になれば書き終える。勢いさえつけば、だけど。
「小関……さんはもう帰ってくれていいですよ。他にもしなきゃいけない仕事あるでしょ。鍵は合鍵がそこの引き出しに入っていますから、閉めたらポストに入れといてください」
財布をパーカーのポケットに突っ込んで狭い玄関を出る。
俯きがちに歩いていると背後で鍵のかかる音がして、誰かがスタスタとこちらに歩いてきた。
誰か、って小関しかいないけど。行くなら一緒にってか。仲良しこよしは大嫌いなんだ。一人で勝手に帰れ。
だが、アパートの階段を下りても小関は私についてきた――。
私が向かったのは近所にあるわりと大きな公園だ。
噴水の傍に座って周囲を見渡すと母親が小さな子供を遊ばせていたり、老人が連れ立って散歩をしたりしているのが見えた。
鳩が餌を探して首を振る。風が木の葉を揺らし、太陽が真上まで昇っていた。
こういうの、どう表現するんだろう……。
今後の参考になるよう、様々な言葉を思い浮かべる。目に見えるものだけじゃなく、音や匂いにまで鋭敏に神経を働かせる。
暖かいとか、眩しいとか、ほかほかしてるとか、日常とか平和とか――?
あぁ、胸が痛い。ほのぼのすぎて死にそう。やわらかな空気の中で自分の周囲だけが澱んだ空気を放っているみたいだ。
思いながらも自分以外の色づく光景を目に焼きつけていく。
もっと他にも、と視線を巡らせて、私は異物を発見してそれを凝視した。
まだいたのか、小関ぃ。
小関は数メートルの間隔を開けて、樹に背中を預けて立っていた。
姿勢がいいな。でも異物感がハンパない。ザ・無職な見かけの私とはまた違った意味で奴は浮いていた。
子連れの母親が若干彼を避け気味に歩いていく。だろうなぁ。だって、サラリーマンの暇つぶしと違って、ザ・無職な女を頑見してるんだもんなぁ。怪しいよなぁ。
警察に通報される前にと小関に近づいて十歩前くらいで足を止める。
アパートは狭かったから距離を取りづらかったけれど、外はいいな。距離をいくらでも開けられる。
「何でついてくるんですか」
「担当編集、だから?」
首を横に傾げつつ聞いてくるな。可愛くない。
「何かあったら困るでしょ。期日までに仕上げてくんないと、俺が怒られるんで」
その取って付けたような言い訳はなんだ。
作家が物語を書き上げるまで担当は目を離してはならないという社則はない。
プロットの作成は井口ともう話を詰め終っている。あとはせいぜい進捗状況の確認と締め切りを守れと電話で催促するくらいだ。
他にも色々やることはあるだろ。会社にも・ど・れ。
「あんたと仲良しこよしをやるつもりなんてないですよ。俺も一人にばかりかまけている時間はないですからね。他にもいくつか股がけで担当抱えてますから。でも信頼を築くことは必要でしょ。普通の人なら挨拶だけで済ませるところですけど、あんたにそれは通用しないでしょ」
あんた引きこもりの人間嫌いだって聞いてるし、と小関は加えてきた。
ぐうの音も出ないよ。
誰かと馴れ合うことが嫌いで、人と話すことが嫌いな私とそれなりの交流を取りたいのなら時間をかけなくてはならない。そのためなら一日どころか数日はいるだろう。しかも付きっ切りで。そう小関は論じた。
とんだ珍獣だな、私は。しかもその解析、当たっているよ。
「作家からの信頼が得られなくて担当降ろされたって話はざらにありますからね。あんた、俺に担当降ろさせるつもりですか?」
いえ、めっそうもない。私そんなにえらくないし。私から担当が降りるときは、相手が私に見切りを付けたときだと思うよ。
「これも縁です。諦めてください。俺は担当としてあんたの信頼を得られるなら何だってしますよ。適当な相槌打って出来上がった適当な作品を世の中に出すなんて、あんたの書くものをクソほど愛している読者への冒涜ですからね」
つまり真面目に仕事しやがれコノヤロー、と。
この仕事が書かなきゃ始まらないことはわかっている。だが天啓が降りてこなきゃ書けないんだよ。
「わかりました。じゃあ、もう少し付き合ってください。他にも行きたいとこあるんで」
「遊びじゃないですよね」
「もちろん、取材ですよ。執筆のための」
私は数歩の距離を小関に開けさせて公園を出た。
※ ※ ※
駅前は平日でも賑やかだが、休日に当たる今日は特に人で溢れ返っていた。
待ち合わせのカップル、友達と談笑する女子高校生、電話をしながら先を急ぐ茶髪の大学生風のお兄さん、その他諸々。
そんな人々を、私は適当に空いているベンチに座って見つめる。
私の目に、通り過ぎる人々はみんな今を生きるリア充に映る。
取り残される自分を感じながら、胸を締め付ける痛みに耐えてそれらを取りこぼさないように見つめ続けた。
――何が楽しくて笑ってんの? 誰かと一緒にいるってそんなに楽しい? 常に人と繋がってるってどんな気持ち?
これが私の取材だ。
目に入る人々の日常を妄想逞しく見つめて小説に昇華する。この状態の私の脳内を覗かれたら通報ものだ。そうなる自信がある。痛すぎる自分に心臓がやばい。消し炭になって消えてしまいたい。
小関はただじっと座り続ける私の横に立って店で買ってきたコーヒーをすすっていた。私の分はなかった。奢ると言われても、どう反応するのが人として正しいのか分からないので安心した。
「小関さんはさ、店でコーヒーを買える人なんですよね」
は? 何言ってんですか、と小関が目で訴えてくる。
信頼関係を築くんだろ。会話だよ。一応さっきの言葉は胸に刺さったんだ。私なりの譲歩だよ。私の担当を外れる気はないんだろ。黙って聞いてろ。
「私は無理なんですよ。人と目を合わせるのが怖くて、店でコーヒーを買うこともできない」
やってできないことはないけど。でもきっと声は震えておかしなことになる。軽度でも引きこもりは所詮引きこもりなのだ。
あ、今そこのカップル、腕組んで彼女が彼氏の耳元に何か囁いてた。あぁ、リア充眩しすぎ。ベンチと一体化して消えてなくなりたい。
「昔から楽しい輪、ってのが苦手なんです。見てる分には楽しいんですけど、そんな空間に自分がいると思うと反吐を吐きたくなる」
いつの頃からか、みんなで楽しくやりましょうという空間が苦手になっていた。
身の置き場がなくなって、家に帰って布団にくるまりたくなるのだ。
幸せな空間を思うと、詰まった息を吐き出すことが困難になる。重たい水の中で息をしているような感覚になるのだ。
止まった時間で息をする私の目の前で、他の時間は進んでいく。
風船を持った子供がこっちに走ってきて私の目の前で何もないのに転んだ。わぁわぁと泣き声をあげる子供に、私は困って小関を見上げる。
「助けてあげてください、あれ」
「えぇ、俺子供って苦手なんですけど」
言いつつも小関が私にコーヒーのカップを預けて、子供を起こしに行く。
駆けつけた母親が「すみません、ありがとうございます」と笑顔で小関にお礼を述べた。
母親に抱きつく子供を見て、私の胸にじんわりとした水が沸き起こる。
今すぐ足を踏み出して自分のアパートに駆け込みたくなる。
それを我慢して、私は目の前で広げられる情景を目に焼き付け続けた。
ありふれた優しい世界に脳をフル稼働させてメモを取る。小説のどこかで使おうと思った。
子供がバイバイと手を振って歩いていく。小関もそれにバイバイと手を振って笑みを見せる。こういうことが普通に出来る人を羨ましく思った。私には無理だ。こんなゴミ虫に笑顔を向けられても子供が困るだけだろう。
「……何て顔してるんですか」
振り向いた小関が私を見て口元に手を置く。
はて? と思って顔に手をやる。口が勝手に笑っていたようだ。
普段表情筋を動かさないからおかしな顔になっていたのかもしれない。
小関よ、変なら変と言ってくれ。小説ではこねくりまわすけど、日常において会話の裏を読む能力は私には備わっていないんだ。
通り過ぎていく人々の景色に小関はとても馴染んでいる。私はそれをとても遠い景色のように感じていた。やっぱり、この世界で私だけが異色なんだ――。
「疲れたんで今日はもう帰ります。塩大福ありがとうございました。美味しかったです」
小関から預かっていたコーヒーのカップをベンチに置いて立ち上がる。
お疲れ様と言えば小関もその意味はわかったようで、それ以上私のあとを追ってくることはなかった。
その日は少しだけ物語を勧めて早めに就寝した。
昨日まで知らなかった男の存在感が私を酷く疲れさせていた。




