ショーン・コラージと二人の少女§エピローグ
「しかし、クローバーはどうしてあの時君に変わってしまったのだろう。
もう少し話がしたかったのにな」
下山をしながら、
ジムはシャーレに問いかけた。
「あら、ジム。わからないのかしら?」
「君は知っているんだね。
教えてくれないか」
「いいえ、それはできないわ。
彼女に失礼ですもの」
ご機嫌な様子のシャーレは、まるで、
ダンスのステップを踏む調子で
先へ行ってしまった。
ジムはうぅんと唸り、首を傾げた。
そこにショーンが割ってはいる。
「野暮とは思うが、
今ひとつ至らない君に、
僕の男性としての推理を披露しよう」
「浮いた話の一つもない、
ショーン・コラージがかい?
参考ぐらいになればいいけどね」
「認知の足らない君よりマシだろう。
いいかい聞きたまえ。
彼女はね、それは愛らしいことに、君に泣き顔を見られたくは無かったのさ」
それを聞いて、ジムはせせら笑った。
「まさか。
泣くような事はなにもないじゃないか」
するとショーンは意外そうな顔で、ジムにこう返した。
「先ほどはああまで言える男と感心したが、ひょっとすると、君は自分の言葉の責任についてどこかまだわかっていないらしいね」
「恐ろしい事を言わないでくれショーン。ちゃんと理解しているつもりだ。
わからないと言えば、思い出したぞ。
君はカフェで何かを言いそびれていた。
一体何を言おうとしていたんだい?」
「ああ、そのことか。
結果から見て、君たちには
どっちでもいい推理だったよ。
これは僕の胸に閉まっておくとする」
「君まで隠し事かい?
勘弁してほしいな」
「さてね。まあせいぜい悩みたまえ」
そうおどけると、ショーンもまた訝るジムを置いて先に進んだ。
「果たして、シャーレが呪われてクローバーが生まれたのか、クローバーが呪われてシャーレが生まれたのか」
二人の少女と一人の少年の狭間で、
ショーンは空に向かって呟く。
「君達三人がそんなことに悩む日なんて来ないことを切に願うよ。こればかりは、僕も神とやらに祈らざるを得ないな」