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ショーン・コラージと二人の少女§プロローグ

 リーン郊外は、市街地の賑わいを感じさせないほど静かで、住人の行儀も良く、信仰心も厚かった。煉瓦造りのモダンな建物が並ぶその住居区を抜けた小高い山の上に、一帯の領主の屋敷がある。

古城を改築したとされているその屋敷は、巨大で、日が暮れると物々しく、ともすれば怪談話の舞台となることさえあった。



 少年であるジム・リックバートンは、中流家庭の風体で、今夜もまたその屋敷に不法侵入を試みようとしていた。

 初犯だった頃の彼は、ただ好奇心に駆られた若すぎる冒険者に過ぎなかったが、今はそうではない。



 彼には明確な目的があった。



 塀にできた穴を抜け、何度も通った秘密の地下通路――家主すら知らない、古い牢獄に繋がる通路だ――を通り、

 廊下を忍び足で渡る。

 そして彼は壁をさかのぼり、屋敷の最上部の部屋に煙突から潜りこんだ。



 火の気のない暖炉から様子を伺い、安全を確認すると部屋の主に声をかけた。



「やあ、シャーレ。元気だったかい?」

「ええ、ジム。……待ち遠しかったわ」


 部屋では、ジムの登場を心待ちにしている少女が居た。

 リーン領主の娘、

 シャーレ=ラネシア・リーンだ。


 ブロンドの髪は月明かりに透けて煌めき、水晶のような瞳が愛らしい。薄いブルーのネグリジェの裾を直すと、彼女はベットから出ようとした。



 ジムは童話に出てくる姫君のようなシャーレに見とれていたが、それを隠すように問いかけた。


「今日はずいぶん素直に入れた。

 人払いしたのかい?」

「ええ。

 メイド長のジャニスに言ってやったの。

 『友達ができたの。

  毎晩ここにやって来るわ。

  ネズミのお友達よ。

  それとも、私はネズミと

  仲良くなる権利も無いのかしら?』

 ……ってね。

 そうしたらね、可笑しいの。

 ジャニスったら、青い顔をして夜はまったく近づかなくなったわ」

「ネズミか。違いないね」

 ジムは進入の際に煤けた顔を拭い、

 笑った。


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